終活を異世界で~モフモフする為に旅立ったのに世界を救う事になりそうです

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
5 / 14

第五話

しおりを挟む
 わぁ、人がいっぱい。
 森を出て程なくして人間達の街に着いた。道中モンスターに出会わず無事についてよかったよ。

 「なんか、平和そうだね」
 「そうね。でも武装している人もいるから危険はあるのだろうけどね」

 ツティーちゃんの言う通り、剣や弓を持っている人達もいっぱいいる。それこそ鎧を装備した人も。重そうだな。あれで戦闘ができるなんて尊敬しちゃう。

 「で、これからどうするつもり?」
 「うーん。そうだな。ここまで偶然にもモンスターに遭遇しなかったけど、これからの事を考えると装備を整えた方がいいかなっては思っているけど……」
 「森を出てからモンスターに出会わなかったのは、近くの森にモンスターがいないからだと思うわ。つまりクロバー様の恩恵を人間達も受けているって事ね」
 「え? そうなの?」
 「森に潜んでいるモンスターに襲われないから森の近くに街があるのよ」
 「ふーん」

 そういうものなのか。そういえばここから見えるお城みたいなのはなんだろう。
 僕らが出てきた森を背に、右側にお城みたいのが見える。かなり近い。

 「ねえ、あのお城の様なものは何だと思う」
 「どう見てもお城でしょう。ところで今着ている服って、ただの服なの? 他の人とはちょっと違うみたいだけど」

 そこなんだよねぇ。この服に防御力があるのかがわからない。もし見た目に反して凄い能力があったらと思うとこのままの方がいいような。どうしよう。……あ、そうだ。

 「防御効果が高い外套を買おう!」
 「で、その服はただの服なわけ?」
 「どうなのだろう。わからないから調べる方法を手に入れたら調べる」
 「なるほどね。では、そうしましょう。ところで人間の文字を読めるのかしら?」
 「……あ、読めるみたい」

 横を見たらちょうど看板があり、食事所みどりって書いてあった。そういえば、妖精ってご飯が必要なのだろうか。昨日、エルフ達と一緒に飲んだり食べたりしていたけど……。

 「妖精って、僕達と同じ物を食べて生きているの?」
 「唐突ね。はっきり言って必要なモノではないわ。でも味はわかるの。私達は、森などこの世界の生命力……アニマというモノを吸収して生きているわ。エルフもそれを力の源にして魔法を使うの」
 「アニマね。見えないけど森にはそれが溢れているって事だね」
 「えぇ。そしてモンスターもそれを糧にしていると聞いているわ。だから人間も襲うそうよ」
 「うん? どういう意味?」
 「クロバー様の話によると、この世界のあらゆる命あるものにアニマが存在しているとか。まあ見えないけど、私達は感じる事はできるわね」
 「へえ。そうなのか」
 「って、話が逸れたわね。では買い物に行きましょう」
 「あ、そうだった。そういう話をしていたね」
 「もう」

 僕らは、笑いあう。
 歩きながら外套を売っていそうな店を探す。
 Sランク御用達の店「勇者の友」という、いかにも高そうなお店を発見。きっと凄い装備を売っているに違いない。ただ貰ったお金で足りるかなって所が気になるが。

 「ここにするの? ここ雰囲気が高級ですと言っているけど大丈夫?」
 「まずは、聞いてみる。僕、この世界の事何も知らないし。最初は色々聞いて回らないとね」
 「ば、場所とか選んだ方がいいような。まあでも、何事も経験よね」
 「そうそう。経験」
 「言っている意味わかってないのだから。まあいいわ。入ってみましょう」

 僕は扉を開け中に入った。何というか、中で買い物をしている人のオーラが違う。凄く強そう。ちょっと僕、浮いているかも。

 「いらっしゃいませ。お尋ねしますが、Sランクなのでしょうか」

 うん? Sランク? あ……そういえばSランク御用達って書いてあったっけ。

 「えーと。Sランクじゃないと買い物ができないとか?」
 「いえ。できますが、Sランクの方に合わせた物を取り揃えておりますので、お値段が高めです」

 よかった。買えるんだ。

 「あの、このお金で買える外套ありますか」
 「うん?」

 僕は、こそっと店員にお金が入った袋を渡す。

 「開けても宜しいでしょうか」
 「はい」
 「………」

 なんか見入っている。もしかして、驚くほど少ないお金だった?

 「ごほん。失礼致しました。こちらにございます」

 歩き出した店員の後に僕はついて行く。なんとか買えるようだ。

 「こちらにある外套を買えるだけのお金がありますのでじっくりお選びいただければと、ではこちらはお返しいたします。また、グローブや靴などもそちらにあります。合わせていかがでしょうか。何かありましたらお声をおかけください」

 お金が入った袋を僕に返し、深々と頭を下げ少し離れた場所へと店員は移動していく。

 「靴なども買えるだけあったみたいだね」
 「……そうね。あからさまに態度が変わったものね」
 「え? そう?」

 とにかく買えそうで安心した。
 外套というと、何となく暗いイメージがあったけど、白系から可愛い色のピンクやちょっと派手なのではと思うオレンジ色、定番であろう黒系まで彩りが豊富だ。
 また形も様々で、シンプルにフードだけついたものから、カッコいい模様や可愛い模様などがついたもの、胸辺りまで二重になっていているものや、マントみたいなものまである。
 丈の長さもまちまちだ。これだけ色々あると迷うなぁ。

 「一応言っておくけど、見た目も大事だけど目的は防御の高さだからね」
 「そ、そうだね。まずそれで絞ろうか……」

 ツティーちゃんも僕の考えが読めるのを忘れていたよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...