【完結】煙にまかれた記憶

すみ 小桜(sumitan)

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怖くて触れられない

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 バスで通っている憲一けんいちは、バスを降りて約五分。辺りを見渡す。ここは住宅街だ。それなりの大きな家が立ち並ぶ。角の青い屋根の家が憲一の家だった。

 今日はいないな。――憲一は、刑事がいない事に安堵し、足早に家に向かう。

 「ただいま」

 ドアを開け、いるだろう母親にそう声を掛けた。一歩玄関に入り、憲一の歩みは止まる。見かけない男性物の靴が二足、そこにあった。

 もしかして、中にいるのか? ――いないと思っていた刑事は、家に上がり込んでいる。そう憲一は思ったのである。

 居間のドアを開けると、予想通りいつもの刑事がいた。年配で眼鏡を掛けた山本。もう一人は、若手の平野という二人組だ。

 「おかえりなさい。どうだった?」

 「……別に」

 母親が聞くも愛想無く答え、開けたドアをそのまま閉めた。そして、二階にある自分の部屋に向かう為、階段を駆け上がる。

 「憲一! ご挨拶ぐらいしなさい!」

 ドアを開けて叫ぶ母親の声が聞こえたが無視し、自分の部屋のドアを閉めた。

 旅行に行く前日と部屋はほとんど変わっていなかった。机にパソコンがあるものの、それにも触れていない。

 たった一日記憶がないだけで、こんなに恐ろしいと思わなかった。火事の記事を読む事さえ出来なかったのである。

 両親は、弁護士だった。憲一の為と言って裏で手を回したのか、記事には自分の名前は載っていないと言っていた。学校にも校長のみ火事の事を知っているという、徹底ぶりだ。

 犯人が見つかるまでは、絶対に重要参考人だという事は誰にも言うなと、父親に口止めされていた。

 俺が犯人だったらどうするんだよ――そんな不安を抱え憲一は過ごしていた。

 早く記憶を思い出してこの不安から解放されたい。でももし、自分が犯人だったら? 共犯者だったら? そう思うと思い出すのもまた怖かった。
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