23 / 34
細谷の記憶~彼の時間(トキ)を止めた腕時計
しおりを挟む
宿泊先に行くと、手違いがあって部屋がなかった!
両親は、家族旅行で一緒に泊まれるのが今日しかないと告げると、使っていない部屋を掃除してそこに通された。
「本当に申し訳ありません。こちらをお使い下さい。食事の方が予約時の物とは違ってしまうのですが、お許しいただけるでしょうか?」
「いや、こんな立派な所に泊まれるなんて! 食事は、人数分出るなら構わないよ」
父親が仲居にそう言うと、深々と頭を下げて部屋を出て行った。
部屋は、予約時よりゴージャスだった。
話を聞けば、明日で宿は閉めるらしく、建設業者が四階を使っている事から四階は使わない事になっていたらしい。
「さて、俺達はコーヒーでも飲みに行くか」
父親そう言うと、お詫びとして置いて行った無料券を手に持った。玄関に入ってすぐあるラウンジにそうい場所があるのだ。
細谷と恵は、後で行くと部屋に残った。
二人は、最後にと同じ服装をしていた。そして、細谷が髪を切った為に初めて見た人は、どちらか区別がつかない程二人はそっくりだった。
「久しぶりだな。こういう風に同じ格好なのは……」
「うん。色々ありがとう」
「何だよ改まって……って、何それ?」
「お礼とお祝い」
「俺、何も用意してないけど?」
「うん。僕の気持ち」
照れながら渡すと、恵はありがとうと受け取った。
「開けていいか?」
細谷は頷く。
テーブルに置いて、箱を開けると腕時計がが入っている。
「お前、これ……」
「ランクは最低だけど、限定品」
「よくお金あったな」
二人は、お小遣いは貰っていなかった。なので、自分達がここに泊まれるなんて思ってもいなかったのだ。
「つけて……」
ドーン!
ジジジジ……!
恵みが腕時計を手にした時、何か凄い音と火災報知器がけたたましく鳴り響いた!
「え? 何今の音……」
「爆発?!」
細谷が言うと恵も驚いて言った。二人は顔を見合わせると扉に急いだ。
そっと開けると、凄い煙が部屋に舞い込む!
「なんだこれ!」
驚いて恵が言うと、一旦ドアを閉めた。
「えっと、エレベータは……」
「バカか! こういう時は非常階段だろう? 確か反対側に……」
二人は頷くと、大きく息を吸い込みドアを開けた。
通路は、煙が充満していて何も見えない。二人は、這うようにして向こう端に行き、壁伝いに移動する。
防火戸に行きつき、二人は安堵する。
「あ、君達、よかった!」
宿の人だろう。二人を助け出しに来てくれた。
「さあ、こっち」
「ありがとうございます」
「あ! 腕時計!」
恵は叫んだ。
手に持った瞬間にベルが鳴り出した為、箱の中に入れたのを思い出したのだ。
「取りに行ってくる!」
「え?! あんなのいいよ! 危ないって! げっほげっほ」
細谷は、煙を吸い込みむせる。
「ちょっと、君!」
驚く事に、本当に恵は取りに戻る。
そんな! 命あっての事なのに!
「恵! 戻って来て! げっほげっほ」
細谷は、思いっきり叫んだ!
助けに行かないと!
「君まで何をする気だ!」
「げっほ……。だって……げっほ」
「大丈夫か? おい、しっかりしろ!」
発作が始まり苦しくなった細谷は、男性に支えられながら一階に降りた。
「愛! 大丈夫?」
「薬! そっか、部屋か!」
父親がそう言うと、細谷は崩れ落ちる様に倒れ込んだ。
「今、消防車と救急車が到着しますから……」
「あの! この子と同じ格好の息子がもう一人いるのですが……」
母親が言うと、細谷と一緒に来た男性はすまなそうな顔つきになった。
「す、すみません。止める暇もなく部屋に何かを取りに戻ったようで……」
「俺が行って来る」
「何を言ってますか! 無理ですよ! 火災現場は四階のようなのです! 煙が凄くて、お願いですから消防車が来るまで……」
細谷は、男性が叫んでいる言葉を最後に気が遠くなり意識を失った――。
両親は、家族旅行で一緒に泊まれるのが今日しかないと告げると、使っていない部屋を掃除してそこに通された。
「本当に申し訳ありません。こちらをお使い下さい。食事の方が予約時の物とは違ってしまうのですが、お許しいただけるでしょうか?」
「いや、こんな立派な所に泊まれるなんて! 食事は、人数分出るなら構わないよ」
父親が仲居にそう言うと、深々と頭を下げて部屋を出て行った。
部屋は、予約時よりゴージャスだった。
話を聞けば、明日で宿は閉めるらしく、建設業者が四階を使っている事から四階は使わない事になっていたらしい。
「さて、俺達はコーヒーでも飲みに行くか」
父親そう言うと、お詫びとして置いて行った無料券を手に持った。玄関に入ってすぐあるラウンジにそうい場所があるのだ。
細谷と恵は、後で行くと部屋に残った。
二人は、最後にと同じ服装をしていた。そして、細谷が髪を切った為に初めて見た人は、どちらか区別がつかない程二人はそっくりだった。
「久しぶりだな。こういう風に同じ格好なのは……」
「うん。色々ありがとう」
「何だよ改まって……って、何それ?」
「お礼とお祝い」
「俺、何も用意してないけど?」
「うん。僕の気持ち」
照れながら渡すと、恵はありがとうと受け取った。
「開けていいか?」
細谷は頷く。
テーブルに置いて、箱を開けると腕時計がが入っている。
「お前、これ……」
「ランクは最低だけど、限定品」
「よくお金あったな」
二人は、お小遣いは貰っていなかった。なので、自分達がここに泊まれるなんて思ってもいなかったのだ。
「つけて……」
ドーン!
ジジジジ……!
恵みが腕時計を手にした時、何か凄い音と火災報知器がけたたましく鳴り響いた!
「え? 何今の音……」
「爆発?!」
細谷が言うと恵も驚いて言った。二人は顔を見合わせると扉に急いだ。
そっと開けると、凄い煙が部屋に舞い込む!
「なんだこれ!」
驚いて恵が言うと、一旦ドアを閉めた。
「えっと、エレベータは……」
「バカか! こういう時は非常階段だろう? 確か反対側に……」
二人は頷くと、大きく息を吸い込みドアを開けた。
通路は、煙が充満していて何も見えない。二人は、這うようにして向こう端に行き、壁伝いに移動する。
防火戸に行きつき、二人は安堵する。
「あ、君達、よかった!」
宿の人だろう。二人を助け出しに来てくれた。
「さあ、こっち」
「ありがとうございます」
「あ! 腕時計!」
恵は叫んだ。
手に持った瞬間にベルが鳴り出した為、箱の中に入れたのを思い出したのだ。
「取りに行ってくる!」
「え?! あんなのいいよ! 危ないって! げっほげっほ」
細谷は、煙を吸い込みむせる。
「ちょっと、君!」
驚く事に、本当に恵は取りに戻る。
そんな! 命あっての事なのに!
「恵! 戻って来て! げっほげっほ」
細谷は、思いっきり叫んだ!
助けに行かないと!
「君まで何をする気だ!」
「げっほ……。だって……げっほ」
「大丈夫か? おい、しっかりしろ!」
発作が始まり苦しくなった細谷は、男性に支えられながら一階に降りた。
「愛! 大丈夫?」
「薬! そっか、部屋か!」
父親がそう言うと、細谷は崩れ落ちる様に倒れ込んだ。
「今、消防車と救急車が到着しますから……」
「あの! この子と同じ格好の息子がもう一人いるのですが……」
母親が言うと、細谷と一緒に来た男性はすまなそうな顔つきになった。
「す、すみません。止める暇もなく部屋に何かを取りに戻ったようで……」
「俺が行って来る」
「何を言ってますか! 無理ですよ! 火災現場は四階のようなのです! 煙が凄くて、お願いですから消防車が来るまで……」
細谷は、男性が叫んでいる言葉を最後に気が遠くなり意識を失った――。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる