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細谷の記憶~彼の時間(トキ)を止めた腕時計
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宿泊先に行くと、手違いがあって部屋がなかった!
両親は、家族旅行で一緒に泊まれるのが今日しかないと告げると、使っていない部屋を掃除してそこに通された。
「本当に申し訳ありません。こちらをお使い下さい。食事の方が予約時の物とは違ってしまうのですが、お許しいただけるでしょうか?」
「いや、こんな立派な所に泊まれるなんて! 食事は、人数分出るなら構わないよ」
父親が仲居にそう言うと、深々と頭を下げて部屋を出て行った。
部屋は、予約時よりゴージャスだった。
話を聞けば、明日で宿は閉めるらしく、建設業者が四階を使っている事から四階は使わない事になっていたらしい。
「さて、俺達はコーヒーでも飲みに行くか」
父親そう言うと、お詫びとして置いて行った無料券を手に持った。玄関に入ってすぐあるラウンジにそうい場所があるのだ。
細谷と恵は、後で行くと部屋に残った。
二人は、最後にと同じ服装をしていた。そして、細谷が髪を切った為に初めて見た人は、どちらか区別がつかない程二人はそっくりだった。
「久しぶりだな。こういう風に同じ格好なのは……」
「うん。色々ありがとう」
「何だよ改まって……って、何それ?」
「お礼とお祝い」
「俺、何も用意してないけど?」
「うん。僕の気持ち」
照れながら渡すと、恵はありがとうと受け取った。
「開けていいか?」
細谷は頷く。
テーブルに置いて、箱を開けると腕時計がが入っている。
「お前、これ……」
「ランクは最低だけど、限定品」
「よくお金あったな」
二人は、お小遣いは貰っていなかった。なので、自分達がここに泊まれるなんて思ってもいなかったのだ。
「つけて……」
ドーン!
ジジジジ……!
恵みが腕時計を手にした時、何か凄い音と火災報知器がけたたましく鳴り響いた!
「え? 何今の音……」
「爆発?!」
細谷が言うと恵も驚いて言った。二人は顔を見合わせると扉に急いだ。
そっと開けると、凄い煙が部屋に舞い込む!
「なんだこれ!」
驚いて恵が言うと、一旦ドアを閉めた。
「えっと、エレベータは……」
「バカか! こういう時は非常階段だろう? 確か反対側に……」
二人は頷くと、大きく息を吸い込みドアを開けた。
通路は、煙が充満していて何も見えない。二人は、這うようにして向こう端に行き、壁伝いに移動する。
防火戸に行きつき、二人は安堵する。
「あ、君達、よかった!」
宿の人だろう。二人を助け出しに来てくれた。
「さあ、こっち」
「ありがとうございます」
「あ! 腕時計!」
恵は叫んだ。
手に持った瞬間にベルが鳴り出した為、箱の中に入れたのを思い出したのだ。
「取りに行ってくる!」
「え?! あんなのいいよ! 危ないって! げっほげっほ」
細谷は、煙を吸い込みむせる。
「ちょっと、君!」
驚く事に、本当に恵は取りに戻る。
そんな! 命あっての事なのに!
「恵! 戻って来て! げっほげっほ」
細谷は、思いっきり叫んだ!
助けに行かないと!
「君まで何をする気だ!」
「げっほ……。だって……げっほ」
「大丈夫か? おい、しっかりしろ!」
発作が始まり苦しくなった細谷は、男性に支えられながら一階に降りた。
「愛! 大丈夫?」
「薬! そっか、部屋か!」
父親がそう言うと、細谷は崩れ落ちる様に倒れ込んだ。
「今、消防車と救急車が到着しますから……」
「あの! この子と同じ格好の息子がもう一人いるのですが……」
母親が言うと、細谷と一緒に来た男性はすまなそうな顔つきになった。
「す、すみません。止める暇もなく部屋に何かを取りに戻ったようで……」
「俺が行って来る」
「何を言ってますか! 無理ですよ! 火災現場は四階のようなのです! 煙が凄くて、お願いですから消防車が来るまで……」
細谷は、男性が叫んでいる言葉を最後に気が遠くなり意識を失った――。
両親は、家族旅行で一緒に泊まれるのが今日しかないと告げると、使っていない部屋を掃除してそこに通された。
「本当に申し訳ありません。こちらをお使い下さい。食事の方が予約時の物とは違ってしまうのですが、お許しいただけるでしょうか?」
「いや、こんな立派な所に泊まれるなんて! 食事は、人数分出るなら構わないよ」
父親が仲居にそう言うと、深々と頭を下げて部屋を出て行った。
部屋は、予約時よりゴージャスだった。
話を聞けば、明日で宿は閉めるらしく、建設業者が四階を使っている事から四階は使わない事になっていたらしい。
「さて、俺達はコーヒーでも飲みに行くか」
父親そう言うと、お詫びとして置いて行った無料券を手に持った。玄関に入ってすぐあるラウンジにそうい場所があるのだ。
細谷と恵は、後で行くと部屋に残った。
二人は、最後にと同じ服装をしていた。そして、細谷が髪を切った為に初めて見た人は、どちらか区別がつかない程二人はそっくりだった。
「久しぶりだな。こういう風に同じ格好なのは……」
「うん。色々ありがとう」
「何だよ改まって……って、何それ?」
「お礼とお祝い」
「俺、何も用意してないけど?」
「うん。僕の気持ち」
照れながら渡すと、恵はありがとうと受け取った。
「開けていいか?」
細谷は頷く。
テーブルに置いて、箱を開けると腕時計がが入っている。
「お前、これ……」
「ランクは最低だけど、限定品」
「よくお金あったな」
二人は、お小遣いは貰っていなかった。なので、自分達がここに泊まれるなんて思ってもいなかったのだ。
「つけて……」
ドーン!
ジジジジ……!
恵みが腕時計を手にした時、何か凄い音と火災報知器がけたたましく鳴り響いた!
「え? 何今の音……」
「爆発?!」
細谷が言うと恵も驚いて言った。二人は顔を見合わせると扉に急いだ。
そっと開けると、凄い煙が部屋に舞い込む!
「なんだこれ!」
驚いて恵が言うと、一旦ドアを閉めた。
「えっと、エレベータは……」
「バカか! こういう時は非常階段だろう? 確か反対側に……」
二人は頷くと、大きく息を吸い込みドアを開けた。
通路は、煙が充満していて何も見えない。二人は、這うようにして向こう端に行き、壁伝いに移動する。
防火戸に行きつき、二人は安堵する。
「あ、君達、よかった!」
宿の人だろう。二人を助け出しに来てくれた。
「さあ、こっち」
「ありがとうございます」
「あ! 腕時計!」
恵は叫んだ。
手に持った瞬間にベルが鳴り出した為、箱の中に入れたのを思い出したのだ。
「取りに行ってくる!」
「え?! あんなのいいよ! 危ないって! げっほげっほ」
細谷は、煙を吸い込みむせる。
「ちょっと、君!」
驚く事に、本当に恵は取りに戻る。
そんな! 命あっての事なのに!
「恵! 戻って来て! げっほげっほ」
細谷は、思いっきり叫んだ!
助けに行かないと!
「君まで何をする気だ!」
「げっほ……。だって……げっほ」
「大丈夫か? おい、しっかりしろ!」
発作が始まり苦しくなった細谷は、男性に支えられながら一階に降りた。
「愛! 大丈夫?」
「薬! そっか、部屋か!」
父親がそう言うと、細谷は崩れ落ちる様に倒れ込んだ。
「今、消防車と救急車が到着しますから……」
「あの! この子と同じ格好の息子がもう一人いるのですが……」
母親が言うと、細谷と一緒に来た男性はすまなそうな顔つきになった。
「す、すみません。止める暇もなく部屋に何かを取りに戻ったようで……」
「俺が行って来る」
「何を言ってますか! 無理ですよ! 火災現場は四階のようなのです! 煙が凄くて、お願いですから消防車が来るまで……」
細谷は、男性が叫んでいる言葉を最後に気が遠くなり意識を失った――。
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