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第16話 祝福されますが、凹みます

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 噂を広めたのはダンザルだろう。地味な嫌がらせだ。
 祝おうと探せば、ルナードは何故か見習いの制服で、理由はともかく見習いになりましたと、本来ならそっとしておこうとなるところを触れ歩く事になる。

 まあ、これも私の至らなさから来たものだ。

 それでも凹むものは、凹むルナードだった。

 「悪目立ちしちゃっているね」

 サーターが、ぼそりと呟く。

 「誰が広めてるんだろう? 誰かに教えたの? 俺すら知らなかったのに」

 ちょっとむくれてサーターが言う。
 彼とは、仲がよかった。ルナードが先に神官になっても心から喜んでくれた一人だ。

 「広めたのはダンザルさんだよ。嫌がらせ」

 「え? なぜに? というか、今日、見かけなかったけど。何かあったの?」

 「見習いに戻るのが嫌で、自分で辞めたはずだ」

 「はぁ? 辞めた? って、二人で何したの?」

 「……いわゆる喧嘩かな?」

 「え? ルナードが喧嘩? あいつ、よっぽど怒らせる事をしたんだね。俺ですら君が怒った所を見た事ないのに」

 「あははは。私も怒るよ? 外面がいいだけさ」

 「しかし、辞めてからも嫌がらせかよ……」

 何故かサーターまでため息をついた。

 「ルナード!」

 ポンと後ろから肩を叩かれ振り向く。

 「ミリサ」

 ルナードと同じ年の少女だ。修行を始めるまでは、よく一緒に遊んだ幼馴染だ。

 「聞いたわよ。あいつが触れ回ってるけど、婚約って本当?」

 「まあね」

 「水臭いじゃない」

 「決まったのは数日前だよ」

 「で、なんであいつが知っている?」

 「それ、話さないとダメ?」
 
 「ダメ!」

 まあ、聞いて来た時点で、話すまで放してくれないよな。

 「婚約者と一緒に歩いている所を見られたんだよ」

 「え? そうなの? へえ。一緒にねぇ」

 「案内しろってマカリー様に言われてさ」

 「明日、連れて来て!」

 「え……」

 「紹介しなさいよ。もう決定事項なんでしょ?」

 「うん。たぶん……」

 ジーッとミリサは、ルナードを見つめ視線を外さない。

 「わかったよ。でも彼女、口が聞けないからコイバナとか出来ないと思う。それと、私達より年上」

 「「年上!」」

 二人共以外だったのか、声を揃えて驚いた。

 「いくつよ」

 「18だってさ」

 「ぎりぎりね。なんでまた引く手あまたのルナードが年上なのかしら?」

 「マカリー様から見たら頼りなく見えたのかもね」

 「手厳しいなぁ。って、年上かぁ。あまりないパターンだよな」

 女性は18歳までにという風習だが、男性にはない。なので、女性が年上というのは少ないのだ。

 「じゃ、明日、楽しみにしているからね!」

 「はぁ。参ったなぁ」

 「俺も楽しみにしているからな!」

 「はぁ……。楽しんでいるだろう、サーター」

 「ルナードの嫁さんなんて、みんなが知りたがる事だろうが」

 「そうか? まあ、美人だけどな」

 「な! もうデレてるのかよ!」

 「本当の事だ! 私も不思議でならないんだ。なぜ18歳まで残ってたってな」

 「へえ。そこまでの美人かよ。明日が楽しみだ」

 珍しく自慢めいた事を言うルナードなので、あーだこーだといいながら好いているのだろうと思うサーターだが、次の日見て驚く事になる。
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