【完結】偽り神官様は恋をする

すみ 小桜(sumitan)

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第19話 私達の最後の晩餐

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 ざわつく店内においしそうな匂いが漂っていた。四人は、居酒屋に来ていた。ここは料理も美味しく、見習いの時はこうしてたまに三人で来ていた場所だ。

 「かんぱーい」

 テーブルに並べられた、大皿から小皿に盛り付けるミリサ。

 「あ、何でも食べられるわよね?」

 ディアルディは、こくりと頷く。

 もしかして、俺も盛ってやったほうがいいのか? やった事はないが、出来ない事はない。でも彼女に任せた方がいいよな。

 チラッと隣に座るルナードを見てディアルディは、様子を伺う。

 「はい。今日は、お客さんだから別に気にしなくていいわよ」

 ルナードとは逆の隣に座るミリサがニッコリとして言った。
 席は、ルナード、サーター、ミリサ、ディアルディと丸テーブルを囲んで座っている。

 「久しぶりにうま」

 盛ってもらったおかずを頬張り、ルナードはほほ笑んだ。
 家では見ない彼の姿に、ディアルディは驚く。

 マカリーさんは、心を許せる相手がいないと言っていたが、彼らには心を開いている様に見える。でも、ミリサさんは、去って行ってしまうんだよな。

 ディアルディもおかずを口に運ぶ。甘しょっぱく味付けされたお肉はジューシーで美味しい。

 「これが私達の最後の晩餐かもね。私もね、婚約したわ。今月中に引っ越す予定なの」

 「え……あ、おめでとう。よかった。安心したよ」

 「安心って何よ。売れ残ると思った?」

 「いや……婚約候補がいっぱいいて選べないかと」

 「あなたじゃないんだから……あ、マカリーさんの孫だからって事よ」

 ミリサは、ディアルディに振り返って付け加えて言った。
 ディアルディは、どうしていいかわからず、取りあえず頷いておく。

 「そんな事、ミリサが言わなくたってわかってるよ。本当におめでとう。幸せになってね」

 「あなたもね。って、ちゃんと彼女を幸せにしてあげるのよ」

 「うん。まあ……」

 「まあって何よ。ちゃんと約束して!」

 「なんでミリサが怒ってるんだよ」

 顔を覗き込む様に言われてルナードが、不服そうに言う。

 「彼女を代弁しているの!」

 「まずは、神官に戻ってから……」

 「神官にならなくたって、幸せに出来るでしょう?」

 俺は一体何を見せられているんだ? この二人、お似合いじゃないか……。

 ディアルディが本当に女性ならやきもちを焼きそうな場面だ。

 「はあ、なんで二人がくっつかなかったのか……」

 ボソッとサーターが漏らす。

 「な、何を言っているのよ」

 「私達は、それぞれ相手を見つけたんだから」

 「あぁ、俺もそういう相手がほしい。神託おりないかな~。俺も素敵な伴侶がほしい」

 「おりないよ」

 「お前、ひど!」

 サーターが、抗議する。

 「そういう意味じゃなくて、私達が敬う神には、そんな能力はないって言ってるんだ」

 「何、言ってんだお前。その神託で選ばれた相手だろう?」

 サーターが言うと、三人はディアルディを見る。

 「……だな。忘れてた」

 「いや、忘れてたって。もう酔ったのかよ」

 と、サーターは笑い出す。そして、かもとルナードも笑い出した。

 楽しそうじゃないか……。

 ディアルディは、安堵するも何となく複雑な思いだった。
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