【完結】偽り神官様は恋をする

すみ 小桜(sumitan)

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第66話 祝いの拍手

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 ルナードは、混乱する頭で考えていた。
 振り払ったのは、ディアルディを王子に戻す為だった。イグーレンの言う通り、後悔すると思ったからだ。
 それに神官のままでいたいというのも本音だった。
 それなのに、神官のままでディアルディと結婚するという流れになってきた。

 「え? どういう事?」

 ルナードはぼそりと呟いた。

 「あなたは、幸せになれるって事よ」

 ラルーがいつの間にかルナードの側に来ていてそう言った。

 「幸せ……」

 「あぁ。俺が絶対に幸せにする!」

 ディアルディは今度は手を握らず、出して来ただけだった。手を取って欲しいという意味だとルナードはわかった。
 皆が注目する中、ルナードは震える手をディアルディの手の上に置いた。
 ディアルディがその手を引き寄せ、ルナードを抱きしめる。

 「ありがとう、ルナード。愛してる」

 ラルーが拍手をすると、次々と皆が拍手を送った。

 えーと。本当にこれでよかったの?

 嬉しさと不安でまだルナードは、混乱していたのだった。

 「陛下。ありがとうございます。これでやっと安心して過ごせます」

 「エルド……君は戻ってきてもよいのだぞ?」

 「いいえ。私はこちらの方々と暮らします」

 「私は、大歓迎だわ。ね、あなた」

 ラルーに振られ、慌ててフィタードは頷いた。

 「今回の寛大な配慮に感謝いたします。ディアルディ様達の事は、今まで通りお任せ下さい」

 深々と頭を下げてマカリーが言った。

 「たぬきめが……」

 ぼそりとイグーレンが呟く。

 「では、我々はこれで失礼します。会議を中断させて申し訳ありませんでした」

 「マカリー。君達には感謝してもしきれない。ありがとう。二人を頼む。今度は、ちゃんと連絡を取り合おう。後で色々と話し合う時間がほしい」

 「はい。連絡をお待ちしております」

 陛下の言葉にルナードは、やっと少し実感が伴ってきた。

 「手を繋ごうか……」

 「いやですよ!」

 「なんで!?」

 「男同士でしょ!」

 ディアルディの申し出に照れたルナードは、そう冷たく返した。

 「っち。女装して来ればよかった」

 「あのね……」

 そんな事したらこうはこう丸く収まっていなかっただろう。

 「これで満足かな、マカリーさん。あなたの思惑通りでしょう?」

 マカリーに近づいたウィドガが呟く。

 「えぇ、満足ですとも。孫の幸せが一番なのでな」

 「だったらディアルディ殿下をあのまま丸め込んでおくんだな」

 「ご心配なく。王族に戻すことなどしませんので。ご協力ありがとうございます」

 「ふん。あなたに協力した覚えないな。最善だと思ったまでの事」

 マカリーは、軽くウィドガに会釈し、皆と部屋を出て行った。

 「本当によかったのでしょうか。これで……」

 「イグーレンさん。切り替えましょう。色々と丸く収まったのですから」

 「えぇ、そうですよ。ウィドガさんの言う通りです。最初から殿下はレノイディ様一人。そういう事ですよ」

 「さあ、お披露目の話を進めましょう。陛下、大丈夫ですか?」

 「あぁ。君達にもちゃんと謝らなくてはいけないな。疑っていたすまなかった。この通りだ」

 陛下は、三人に頭を下げた。

 「お、おやめください陛下」

 慌ててイグーレンがいうと、二人もそうですと頷いた。

 「これからも私を助けてくれるか?」

 「勿論ですとも。三人になってはしまいましたが、今まで通り微力ながらお手伝いさせていただきます」

 ミルアビが言うと、二人も頷く。

 「ありがとう。宜しく頼む」

 ここも丸く収まったのだった。
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