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第七話

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 なんて事! 私は、涙目になった。

 「誰が、こんな事を!」

 次の日、猫ちゃんミャの元へ行くと、リボンが刻まれていた!
 本来はお姉様がするけど、お姉さまではない事は確かよね。する理由がない。一応イベントは、私が知っているシナリオに沿ってはいるようだけど。

 「ごめんね。ミャ……」

 涙が溢れてきた。私は知っていたのに。この子が怪我をする事を。
 ずれているからと安心していた。
 このイベントは起こらないと思い込んでいた。お姉様のポジション、悪役令嬢役がいるのね。
 でも私がターゲットでは、ダメなのよ!

 「ごめんね」
 「どうしたの!?」
 「マイステリー様。ごめんなさい。私のせいだわ」
 「君のせいって……」

 マイステリー様がミャに手をおくと、スーと傷が消えた。
 ヒールが使える事を人に知られたくないはずなのに、使わせてしまったわ。

 「ほら、もう大丈夫。君のせいじゃないから」
 「うん……」

 探し出してやるわ。こんな事をした者を!
 でも一体誰なのかしら?
 攻略対象がマイステリー様になっているって事は、マイステリー様の事を好きな人でしょうか? でもクラス全員の令嬢がそう見えたのですが……。
 取りあえず明日、リボンを作り直してきましょう。



 前回より上手く出来たわ。これをマイステリー様に差し上げて……。

 「あら、また作ってきましたの?」
 「え?」

 ルミージュ嬢! って、彼女がリボンを? 確かに一番食いついてきてましたけど……。
 彼女は、魔法貴族と言われるビールドリィ子爵家の令嬢。子爵家だけど、伯爵家以上の権力を持つ貴族なのよね。この国、魔法国家だから。
 綺麗な緑のウェーブした髪に、目力が凄い緑の瞳。この瞳に睨まれると、動けないわね。
 というか、魔法が出来る彼女が私に意地悪するなんて、これ真逆になってません?

 「それにしてもあなた下手ね。本当に令嬢なのかしら?」

 と、ルミージュ嬢が作って来たリボンを掲げて見せた。それは、きれいな刺繍が施されている。
 わぁ。私のとは雲泥の差だわ。魔法だけではなく、裁縫も得意なのね。羨ましい。

 「やっぱり君だったんだね!」

 声の主は、マイステリー様だ。あれ? この展開って……。

 「な、何の話? 昨日猫を見つけて下手くそな刺繍でしたので、新しいリボンを作ってまいりましたのよ。どう?」
 「こっちがいいな」

 そう言ってマイステリー様は、私のリボンを手に取った。

 「な、何よ! 婚約者の私のじゃなくて、彼女のを付けるというの!」
 「婚約者!?」
 「彼女のリボンには、ミャへの愛情がこもっているからね」

 待って。婚約者の件はスルーなの?

 「愛情って!!」
 「待って! 私、婚約者がいるなんて知らなかったの。ご、ごめんなさい」

 パシッと自分が作ったリボンをひったくって、私は逃げる様にその場を走りった。
 婚約者がいただなんて! 彼から距離をおかないと行けないわ。
 私は、リゾール殿下の婚約者にならないといけないの。お姉様から……お姉様から奪わないといけないのに、変な噂がたったら困るのよ。

 そうだから彼と距離を取るのよ。
 ……なのに、どうして、苦しいの! どうして涙が溢れて来るの……。
 どうして――。
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