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序章

序章2

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 さてスタートだ。まずは色々設定だな。
 テスターをした者の特権として『グッドラックランダム』が二回行えるらしい。
 よくはわからないが、ランダム選択にした時にそれを使うと、一つスキルなどが貰えるらしい。これはお楽しみになっていて、それしか知らされていない。俺は勝手にチートスキルだと思っている。これが欲しくて俺は、テスターに申し込んだ。

 どれにそれを使うか考えたが、一つは性別にする事にした。
 このゲームは、現実の性別がゲームに反映される事になっている。だがそれだと、男女の比率が男性に傾くのは必然なので、テスターの特権として性別は自由になっている。だから性別にもランダムが適用できる。

 ランダムでしか選択できない隠れ選択肢もあるらしいが、俺にとってはおまけに付くスキルの方が目的なので性別で構わない。というか、変なのが選ばれる可能性があるものに使いたくはない。ランダムで選ばれたモノは、嫌でも変えられないからである。
 では、『グッドラックランダム』を選択と……。

 ツタタタタ……ピン。

 効果音がなり、女性と決定した。但し、男性として活動と書いてある。
 意味がわからん。

 ポン。
 《隠れステータスを手に入れました》

 そう表示される。多分、これがおまけのスキルだろう。でも変だ……。
 この『choose one』の世界では、マルチエンディングが存在するからか、悪行もOKだ。つまりわざとバットエンディングを選んでもいいわけだ。そこで、表のステータスと裏のステータスが存在する。リアルでいう、表の顔と裏の顔という所だろう。つまり、善人のフリして悪事をしてもOKっという、何とも凄い設定だ。なので、ほとんど何でもありだ。自由度が売りなだけある。

 このゲームでBANされるとしたら、リアルに繋がる悪事だろう。
 そういうワケで、最初から裏のステータスというモノが存在するのに隠れステータスとはなんだ? という事だ。

 よく見ると、虫眼鏡マークがある。これで詳しく見れるかもしれない。タッチしてみる。
 ポンっという音と一緒に、説明文が表示された。

 《隠れステータスとは、裏、表のステータスにあるはずの一部分が表示されないようになるスキルです。今回の場合は裏ステータスに表示されるはずの女性の部分は非表示になります》

 よくわからないが、女性という事が伏せられるという事らしい。
 まあいい。一応意味がわかったから。

 次は、種族だ。これにも使うかな……。

 実は、『グッドラックランダム』は使い切らなくてはならない。使い惜しみしていると、使いたくないとこどで強制的に使わなくてはならなくなるかもしれない。

 選べるのは、人間、エルフ、ドワーフそして鬼人だ。四種類しかないし、人間以外になる確率の方が高い。スキルとかに使って変なのが当たるよりは、こっちの方がいいだろう。それに隠れ種族もあったばず! 当たるかもしれない! よしこれに使おう!
 種族ごとに虫眼鏡があるがあえて無視した。見てしまうと気持ちが揺らぎそうだからだ。

 うんじゃ、『グッドラックランダム』を選択と……。
 ツタタタタ……ピン。
 先ほどと同じく効果音の後に種族が表示される。

 《魔王》

 ――おお凄いのを引いた!
 そう思ったのだが続きを見て、はぁ? となった。
 今度は、《人間として活動》と書いてある。

 それってつまりは、『choose one』の世界では人間の男性として活動するという事になるんだよな?
 なんかこれ自由を制限されてないか?

 ポン。
 《おめでとうございます。幻覚魔導士の職業を手に入れました》

 ため息をついていると、手に入れたスキル……いや、これスキルじゃないな。職業も手にはいるのか……。

 『choose one』にも勿論、職業はある。プレイヤーは最初は皆冒険者で、イベントをこなす事により職業を手にする。そしてその職業を手にする事によって、スキルや魔法、特別な装備が出来るようになる。取得するだけでそれらは出来るようになり、職業を名乗る場合は、表ステータスの冒険者を取得している職業にすればいい。

 今回はラッキーといえるのかもしれない。取りあえず今回も虫眼鏡をタッチして確認だ。
 ポン。
 《幻覚魔導士は、魔族が扱える職業です。またこの職業は裏ステータスになり、隠れステータスで隠れます》

 凄い職業のようだけど、隠さないといけないのか。何か隠さないといけないのばっかりじゃないか?
 うん。考えても仕方がない。次行こう!

 待ちに待ったスキルや魔法だ!
 三つ選べるらしい。って、選択肢多くないか? これざっと見ても、千個以上あるぞ……。

 虫眼鏡をタッチして確認をしてみる。

 ポン。
 《魔王はほぼすべてのスキル、魔法を使いこなせます》

 ……嬉しいけど嬉しくないな。選択肢多すぎだろう!
 まずは、回復魔法はあってもいいだろう。一つ目は簡単に決まった。

 さて次は何にするか。暫くスクロールすると『ワープ』という単語を発見する。
 ワープがある! 広大な世界だ。あってもいいかもしれない。
 テスターの時は遠くに行けなかったし、行かなかったから歩きでよかったけど便利そうだ。

 あと一つは何にするか……。
 膨大な選択肢をスクロールして眺めて行く。

 『召喚』という単語を見つける。
 これにしようかな。簡単な魔法とかならゲーム中に手に入れられるはずだが、これはきっと召喚師にならなければ覚えないだろう!
 こんなにいっぱいあるんだ。直感で選ばないと決まらない!

 俺は直感で三つ選んだ。『回復魔法』『ワープ』『召喚』
 取りあえず最初は何とかなりそうだ。
 それに最初から使える『幻覚』もある。これだけ使えれば、結構サクサクかもしれない。

 さて次は……。外見か。
 外見は登録時の年齢と性別(マイナンバーによって判別されている)から割り出されたその種族の平均体型からプラスマイナスして調整するようになっている。

 つまらん……一応女性なのに、元が男だからムネを最大に大きくしても小ぶりだ。まあ、男のフリをするのにはちょうどいいのかもしれないが……。
 って魔族なので人間となっているが髪の色から何から何まで好きに設定できる。これじゃ、すぐにバレるんじゃないか? ――と思うもせめてここで好きにアレンジしよう!

 髪の長さは胸ぐらいまでで、銀にしよう。目の色は……ブルーで。肌は透き通るような白い肌。顔のパーツは可愛らしく。……これ、男に見えるのか? いやばっちり女性だ!
 もうこうなったら開き直るしかない! 次だ次!

 次は服装か……。
 下着姿の自分の分身が目の前にいる。これに後は服をチョイスしていく訳だが……。
 おかしい。確か冒険者の服の色を選ぶはずなんだが……。『魔王の衣装』と『幻覚魔導士の衣装』がある。というか、この二つしかない。

 おいおい。これじゃ人間じゃないとバレるがいいのか? 突っ込みどころが多いな。設定ミスなのだろうか? それとも嫌がらせか? 隠させる気ないだろうこれ……。

 魔王の衣装は、踝まである光沢のある黒いマント。黒色で胸元が大きく開いている服にミニスカート。それとブーツだ。
 幻覚魔導士の方は、濃い紫のローブ。凄くシンプルだ。

 うん。ここはミニだろう! 胸が無いのに大きく開いている胸元が虚しいが……。
 うんじゃ、『魔王の衣装』を選択っと。
 これ目立つだろうなぁ……。

 で次は……名前だ。
 ……って、これで終わり?

 確かにテスターは、種族人間で固定で職業は数種類から選べた。スキルや魔法は一種類だけ選べて、お試しだからこんなもんかと思っていたが、本番もこんなもんなのか!
 俺が思い描いていたのと違うな。もっとこう色々攻撃とかこまごまと設定して自分好みにするのかと思っていたのだが違ったようだ。

 うん。後はゲーム内で色々あるのかもしれない。さあ、名前を決めよう!
 今までの経緯でわかったと思うが、俺の良いところは、くよくよ考えない事だ!

 さて名前っと。テスターの時は、『そなた』とそのまま名前を名乗っていた。今回もそのつもりだ。
 俺は、『そなた』と入力する。だが、「その名前は使用出来ません!」と出た! おかしい。特権で使えるはずだ。何度も試すが同じだった。

 虫眼鏡で確認をしてみる事にする。
 ポン。
 《本来は女性なので、男性で登録した前回の名前は使えません》

 だってよ! なんだよそれ! まさか名前で悩む事になるなんて……。もう何でもいいか……。今までに一時間ぐらい費やしている。しかし何でもといってもなぁ……。どうするか。

 『キソナ』と入力すると、使用出来ますと表示され一安心する。
 『あら「きそな」た』自分の氏名の中から切り取った。まあまあだろう……そう納得させ確認をクリックする。
 今まで選んだ内容と一番下に注意書きがあった。その内容に俺は驚いた。

 《女性である事が露呈した場合は、このキャラクターは使用できなくなります。新たにキャラクターを作成する場合は、マネーが必要です。また、この場でキャラクターを破棄して新たに作り直す事は可能ですが、グッドラックランダム機能はお使いできません》

 「なんじゃこりゃ!」

 俺は叫んでしまった!
 酷くないかこれ? 破棄して作り直したらまた一時間かかる上に、特典であるグッドラックランダムが使えないなんて!
 これは、お金を使わせる陰謀なのか?

 えい! 俺はOKを選択した!
 やってやる! 魔王として君臨してやる!
 悩むのに一分もかからなかった。

 チートスキルがあるからだいじょ……いやないか? 幻覚は違うよな。って、なんでチート系探さなかったんだぁ!!
 今更気が付いても遅い……。
 俺は後悔と不安を抱えたまま『choose one』の世界に降り立った。
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