【完結】魔女を守るのも楽じゃない

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
12 / 36
古の魔女の願い

第12話~リズが見た白昼夢

しおりを挟む
 リズが見た夢は、洞窟の外だったと話始める――

 見覚えのある大きな木。その前に二人の人物が立っている。
 一人は男性でもう一人は女性である。二人とも白い魔術師の服を着ていた。

 リズはどうして突然外にと、辺りをキョロキョロと見渡すが、何故か二人は彼女を全く気にも止めずに語り始める。

 「ねえ、ハラルド。あなた、研究結果を王様に提出したそうね」

 「したが何か? ちゃんと君の名前も記載した。問題ないだろう」

 男は、手にしている水晶を撫でながらそう答えた。

 リズは、男が手にしている水晶を見て驚く。さっき触れた水晶と同じモノのように見えたからである。

 「あるから聞いたわ。研究は失敗に終わった。そう提出したのよね?」

 「本当の事だろう? 不老不死は不可能。君もそこにたどりついただろう」

 不老不死という言葉にリズは更に驚く。
 どうやら、この二人は王の命令でその研究をしていたようだ。

 「確かにそうね。でも、その延長線でわかった事は乗せてないわよね」

 「乗せたところで理解など出来ないだろう。それにその発見は私の産物だ。他の者に教える必要はない」

 「残念ね。それには私もたどりついているのよ?」

 「誰かに教えるつもりか? それとも王に報告でも?」

 ジッと男は、女を見つめる。

 「いいえ。これは封印するべきだわ」

 フッと口元をゆがませると、男は水晶を目の前に持って来る。

 「いい事を教えてやろう。これは、私が開発した特別な水晶だ。これで私は、永遠を手に入れられる。人間の身体はどう頑張っても永久的に存在させる事は出来ない。だが、能力を魂ごと移動させる事はできる。そして、この水晶はその魂を保つ事が出来るのだ」

 それを聞いた女は驚いた表情を見せる。

 「まさか、自分の身体を捨て、他の者の身体に入り込むつもりなの?!」

 「そうだ。魔力がなければ形を留めておくことが出来ず、ある程度の時間で消滅してしまう。だが、この水晶の中にいればずっと留まる事が出来る。その間、じっくりと相手を選ぶことが出来るってわけさ。水晶なら魔術師が喜んで手元に置いておくだろう?」

 「そう。奇遇ね。私も似たような物を作ったわ」

 女は、そういうと懐からナイフを取り出した。

 「これはね、そういうモノを強制的にその場に留めておくものなの。これで、あなたを封印するわ」

 「なるほど。そうきたか。非常に残念だ。最後に教えておこう。この水晶は私専用だ」

 男は、水晶を地面に置きながらそういうと、突然倒れこんだ。

 『まずは手始めに君の身体を頂こう。少々手荒になるがな!』

 身体からではない場所から、男の声が聞こえる。
 女は少しずつ下がり、大きな木の前で止まった。

 『もう、あきらめたのか? 声だけしか聞こえないというの恐怖だろう?』

 「何を言っているのかしら? ちゃんと見えているわ! ほら、ここ!」

 女は手を伸ばすと、声の主をがっしりと捕まえた。
 そして、不思議な事にリズにもその声の主が見えていた。

 『何! は、離せ!』

 「今、離してあげるわ!」

 女はそう言うと、声の主を大きな木の中に押し込んだ。そして、用意していたナイフを突き立てた!

 『ギャー! お、おのれ……』

 女は、ズルズルとその場に倒れ座り込む。

 「バカ……。本当はこんな事したくなかった。何故、思いとどまってくれなかったのよ……」

 そういうと女は涙を流した。そして、こうもつぶやいた。

 「私が何度でも封印して、あなたを助けてあげるわ……」

 この声を最後に、リズはふっと気が遠くなった――


 ☆―☆ ☆―☆ ☆―☆


 「ナイフで封印? それって……」

 話を聞き終えたジェスが、神妙な顔つきで呟く。

 「なんだよ。何かわかったのか?」

 「いい話じゃないよ。そのナイフはもう処分されたかもって事ぐらい……」

 それを聞き、ディルクは大きなため息をつく。

 「結局、どうにもならないのかよ。って、どうしたレネ」

 レネは、俯きながら泣いていたのである。

 「大丈夫よ、レネ。この話をソイニさんにすればきっと……」

 リズの言葉にレネは首を振った。

 「リズの言う通りだよ。なんとかなるよ。ここにだってたどり着いたんだし……」

 ジェスは、レネにそう言いながら彼女の肩に手を置いた。だが、驚いてすぐに離す。

 ――この邪気! 嘘だろ!

 「な、なんで君がその邪気を纏っているの! 洞窟の時はなんともなかったのに!」

 ジェスの驚きの声に、レネは両手で自分の肩を抱いた。

 「ごめんなさい! だ、だますつもりはなくて、ただ言い出せなくて……」

 そういうと、レネは本格的に泣き出した。

 「邪気ってなんだよ!」

 「レネに妖鬼が取り憑いているのかも……」

 なんとも言えない表情で、ジェスはディルクの問いに答えた。

 「嘘よ! なぜレネが!」

 リズのその問いには、ジェスは首を横に振るだけだった。
 そして、ジェスはレネの肩にそっともう一度置いた。

 「ねえ、レネ。よく聞いて。君はまだ完全にのっとられてない。だから、気をしっかり持って。僕がここから出る方法探してくるから」

 「もう村になんて帰れない……」

 「あぁ、もう! 何言ってんだよ! オレ達だけでどうにか出来ないんだから、言う事聞けよ! それと、なぜリズを狙った!」

 ディルクは怒鳴りけるように言った!

 「知らないわ! 知らないのよ……ううう」

 レネは更に強く泣き始める。

 「もう! こんな時に何を聞いているのよ!」

 「大事な事だろうが! それと、ジェスは探しに行かなくていい」

 「何を言っているんだ! 彼女を放って置くっていうのか!」

 「違うって。オレが探すって言ってるんだよ。ジェスの方が慰めるの向いてるだろう?」

 ディルクの言葉に、二人は目を丸くする。

 「なんだよ……」

 「いや、君が気をまわすなんて……」

 「なんだよそれ! とにかく、見つけたら何が何でも連れて帰るからな!」

 そう言って動き出そうとした瞬間だった。森の中に二人の姿が現れた!

 「え……マティアスクさん!」

 ジェスは、驚きのあまり大きな声を上げていた。
 皆の前に現れたのは、マティアスクとソイニだった。

 「ソイニさん、術を解いたのかよ! すげぇ」

 「いいえ、私は解いていません」

 ディルクの言葉に首を振って、ソイニは答えた。

 「よかった。これでなんとかなるわ!」

 リズが涙を浮かべ安堵する。

 喜ぶ三人だが、レネは悲しげな顔をマティアスクに向ける。

 「おじいちゃん、よかった……。ごめんなさい。今までありがとう……」

 「何を言っているんだ。助けに来た。間に合ってよかった」

 レネは弱弱しく首を振った。

 「みんなもごめん……ね……」

 その言葉を聞くと同時にジェスは立ち上がり、二、三歩下がった。
 邪気が膨れ上がるのを感じたのである。

 レネは、涙を左腕でゴシっと拭くとスクッと立ち上がる。

 「な、なんだ? ジェス、レネはどうしたんだよ」

 「レネが……」

 ディルクの質問に、ジェスが答えようとするも、そこまでしか言えなかった。
 皆が注目する中、レネが口を開いた。

 「やっと、手放したか。まあ、思ったよりは早いか……」

 声はレネだが、とても彼女だとは思えない話し方だった。
 妖鬼が表に出て来たのだ!

 「なんでだよ! マティアスクさんの術だって解けて迎えにも来たのに!」

 「解いてやってのは私だ」

 何故かレネに取り憑いている妖鬼が答えた。

 「孫の体を本人に返してもらおう」

 「残念だが、もうこの体は私の物だ。それとも、取り戻す方法を知っているとか? ないけどな」

 妖鬼がレネの顔で不敵に笑うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

処理中です...