【完結】魔女を守るのも楽じゃない

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
20 / 36
古の魔女の願い

第20話~終結?!

しおりを挟む
 部屋には、ため息が次々と聞こえて来た。

 ゼノが語ったのは、妖鬼は魔女が作り出したのと変わりない。そして今の所、倒す方法はないという事だった。

 「あの僕、妖鬼の行動で一つわからない事があるのですが?」

 その言葉に皆が、ジェスに注目する。

 「妖鬼は何故、リズに嫌疑がかかるようにしたのでしょうか? 自分の手で下せないからと言っても妖鬼が取り憑く条件を満たさない彼女に……。得策な作戦ではないですよね?」

 ゼノは、その通りですと頷き答える。

 「妖鬼は元は人間です。取り憑いた相手の記憶を覗き見る事は出来なかった。取り憑いていた一年間に得た情報しかなかったのではないでしょうか」

 「そうか! 妖鬼対策隊の事を知る事は出来たけど、妖鬼が取り憑く条件がある事を知らなかった。妖鬼は本来、無条件で相手に取り憑く事が出来たから……」

 ジェスは納得とばかりに頷いた。

 「取り憑いていたレネさんの周りでは、その話題は上がらなかったのでしょう。たぶん私が訪ねて来た時に、初めて知ったのではないでしょうか」

 「では、私に眠りの術を掛けたのは、祠に行かせない為ではなく、逆にレネに行かせる為だった……」

 マティアスクの言葉に、ゼノは頷く。

 「そうなります。作戦に失敗したと悟り、レネさんの体を先に奪う事にしたのでしょう。レネさんを行かせる為に、マティアスクさんは邪魔なので眠らせた。と、いうところではないでしょうか」

 「でも、祠に行かないって選択をするかも知れなかったのに?」

 「それでもよかったのではないですか? それに、一年間あなた達の事も見ていたわけですから、どう行動するか把握できはずです」

 リズの疑問にはソイニが答えた。

 「そうだな。ディルクなら行けと言わずともあの状況なら行っただろう。また、私の代わりにレネもついて行くと言い出すだろうと。そしてレネが、自分が妖鬼の封印を解いた事を知れば必ずやレネの体が手に入ると踏んだ……」

 「僕達、妖鬼の策にまんまと乗せられたんだ……」

 マティアスクの言葉に、ジェスはボソッと呟く。

 「いいえ。リズアルさんを受け渡す選択をするよりは、そちらの方が断然よかったはずです。城の者には、彼女が白とも黒とも答えを出す方法などなかったのですから。それに後日、祠に検証に行くか定かですらない。幽閉される可能性が高かったでしょう」

 「………」

 幽閉……その一言で皆不安な顔つきになった。

 「そんな暗い顔をしないでください。リズアルさんが妖鬼ではない事を証明出来ているのですから」

 「ですが、城の者があのナイフが刺さった水晶と今の話で納得してくださるのでしょうか? あなたは納得して下さったようですが……。それに、リズアルの嫌疑が拭えてもレネがどうなるか……。どこまで信用して頂けるかがわからない……」

 ソイニは皆の意見を代弁するかのようにゼノに言った。

 「私が研究者だということをお忘れですか? 心配はいりません。あなた方は嘘を言っていない事はわかっておりますから。そうそう、その水晶こちらに頂けますか?」

 ジェスは、ずっと両手で持っていた水晶をゼノに受け渡す。
 話を聞いていた内容が凄すぎて、今まで持っている事を忘れていた水晶だったが、手渡すと手がだるく感じ両腕を擦った。

 「これが、妖鬼が作った水晶に、魔女が作ったナイフですか! このような貴重なアイテムが手に入るなんて!」

 目をキラキラさせ水晶を見るゼノは研究者そのものだった。

 「本当に大丈夫なのかよ。アイテムさえ手に入ればって感じに見えるけど……」

 「ちょ……うまくまとまったんだから、余計な事いうなよ!」

 ジェスが慌てて言うが、もうその言葉がゼノの耳に届いている以上遅い。

 「相変わらず、直球ですね。でもまあ、あながち外れではありませんが」

 「え!」

 ゼノの言葉にジェスは驚きの声を上げる。

 「今回私がこの仕事を引き受ける条件として、この件で手に入ったアイテムは私が好きに研究出来るというモノなのです。そういう意味なので、あなた方をないがしろにするという事ではありません。むしろ、私からすれば、称賛に値します」

 「それはよかった。あなたにこの話を信じて頂けたのなら後はお任せするしかありません。どうか、宜しくお願いします」

 深々とマティアスクは、頭を下げる。そして、それに倣い他の者も頭を下げた。

 「善処するようお願いしてみましょう。皆さん、今日はお疲れさまでした。お達しは後日、他の者から連絡があると思います。では、皆さん私はこれにて失礼します」

 軽く会釈をすると、ゼノはドアに向かう。
 玄関までマティアスクとソイニが送ると、ゼノは大切そうに水晶を持ち城に向かって飛んで行った。

 「あの……娘は本当に助かったのでしょうか……」

 ゼノを見送り部屋に戻って来た二人に、リズの父親は不安げに聞いた。

 「少し嫌な言い方になりますが、リズアルも研究対象になるのなら彼女は絶対に大丈夫でしょう。かなり頭の回転が良い方のようなので……。話は変わりますが、私達を待っている間、彼とはどのような話を致しましたか?」

 「主にリズアルの話を……。性格とか普段どのように過ごしているのかなど」

 ソイニの質問に父親がそう答えると、彼はやはりと頷いた。

 「誰が祠に向かったなどとは聞かなかったのですね?」

 「え? そういえば、聞かれませんでした。妖鬼や祠の事は一切……」

 「ちょっと待てよ! あいつ、今度はリズを研究するとか言って連れに戻ってこないだろうな!」

 母親の話にディルクは、焦りを見せる。

 「興味を持ったのは間違いないみたいだね。でも、乱暴な事をするような人には見えなかったから、無理やり連れて行く事はしないと思うけど……」

 「う……う~ん」

 ジェスがそう言ったところでレネが目を覚ました。それで、この話は打ち切りとなる。

 「レネ。どうだ。具合は?」

 「おじいちゃん……。あれ、私寝ちゃったの? あ、妖鬼の話はどうなったの?」

 「心配ない。ゼノさんにちゃんと全部話し、わかって頂いた」

 レネは、マティアスクの言葉に不安げな顔をする。
 それは、自分が妖鬼に取り憑かれていた事も話した事になるからである。

 「心配ないわ。凄く頭のいい人みたいだから、ちゃんと説明してくれるわ」

 レネは、リズの言葉にうんと頷く。

 「さて、我々は帰ろうか。マティアスクさん、ソイニさん、今日は本当にありがとうございました。ほれ、二人とも帰るぞ」

 「では、僕も帰ります。レネ、お大事に」

 「うん。ありがとう」

 五人は、挨拶を交わすと外に出た。
 外はすでに暗闇に包まれ、星空がとても綺麗に見える。

 「もう、真っ暗ね。星が綺麗」

 「ジェスくん、本当に今日はありがとうございました」

 父親がそういうと、リズの両親はジェスに頭を下げた。

 「いえ、僕は何もしていませんよ。どちらかというと僕の方がリズに救われたんです」

 「え? 私が?」

 ジェスは頷く。

 「僕は、レネのように妖鬼を自分で追い出す事は出来ないからね。君が妖鬼を封印してくれなければ、僕は取り憑かれて乗っ取られていたよ。ありがとう、リズ」

 今度はジェスがリズに頭を下げる。
 と同時に突然ディルクが、がばっとリズに抱き着いた。

 「ちょっと、ディルク。どうしたのよ」

 「よかった……。オレ……」

 「もう、やだ泣いてるの?」

 「な、泣いてなんかない!」

 そういいながらも、顔をリズの胸にうずめている。
 強気な態度をしていたが、どれだけ不安だったか。やっとディルクは安堵したのである。

 「では、僕は飛んで帰ります。おやすみなさい」

 会釈をすると、ジェスはスッと空へ飛び立つ。

 ――ゼノさんが遣わされなければ、今のあの二人の姿は見れなかったんだよね。

 リズに抱き着くディルクを上から眺め、やっとジェスも無事に乗り切れた事に胸をなでおろす。後は自分たちの事を託したゼノを信じるほかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く

恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。 だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。 しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。 こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは…… ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中

『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?

あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。 「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」

処理中です...