【完結】魔女を守るのも楽じゃない

すみ 小桜(sumitan)

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忍び寄る悪意

第33話~形勢逆転アイテムは――

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 「一つ宜しいでしょうか?」

 ゼノが証言をしたいとスッと手を上げた。

 「いいだろう」

 「ありがとうございます」

 エミリアーノの承諾にお礼を言うと、ゼノはキッとアルドヘルムを睨み付ける。

 「イッロ宅のマジックアイテムですが、賊に流れた形跡はありません。そして、賊はアイテムではなく人の売買をしていたようです。つまり賊は、マジックアイテムの横流しには関与しておりません」

 「君の立場なら、そこら辺はどうにでもなりそうだが?」

 ゼノの話に、アルドヘルムはそう返す。
 確かに書き換える事は可能だ。その場合、ジェスに加担した事になる。

 「それはあなたも同じなのでは? 書類上、ジェスが自分から見届け人にと名乗りを上げたとあるが?」

 「え!?」

 エミリアーノの言葉にジェスは驚いた。
 そう言われれば、そうしなければ偶然、ジェスがイッロ宅に行った事になる。自分から名乗りを上げて行ったのであれば、計画的ともとれる。
 アルドヘルムの話が成り立つのはその為だ。

 「アルドヘルム総隊長、あなたがイッロ宅にレネさんを向かわせるとなった時に、リズ……アルさんを一緒にと提案したそうですね」

 ゼノが言うと、アルドヘルムは、眉をピクッとさせる。

 「レネは優秀だ。リズアルは、長年見習いをやっていたぐらいの者だ。一緒に組ませた方がいいと思ってな。何か問題でも?」

 「あると思いますが? 普通の仕事始めではなく、イッロ宅の密偵も任務にあった。初めての者を同行させる任務ではないと思いますが」

 「そこは私も読みが甘かった。まさか賊が絡んでるとは思わなかったのでな」

 アルドヘルムは、そう言って「すまなかった」っと頭を下げた。
 先ほどからぬらりくらりと、上手く交わしている。

 ――だめだ! 決定打がない!

 攻める材料はあるが、どれも上手く交わされている。
 このままだと、ジェスが企てた事で話がまとまりそうだ。
 そうなれば、アルドヘルムの疑いは晴れ、今まで通り悪事を働くかもしれない!

 そもそも賊に襲わせたのは、リズが魔女だからだ。
 アルドヘルムが、魔女であるリズが邪魔だから事を起こした事を証明しなくてはならない。それは凄く難しかった。
 彼が魔女だと知ったからといって、襲うとは限らないからだ。知っているだけでは動機にならない。

 ――何かないか? 彼だけにしか出来ない事とか……。

 上手く裏工作もされていて、ジェスにはどうしようもない。
 レネに毒を負わせた事だって言った所で、ランベールはあの時引いたのだ。つまり、捉えようでは、仲間を最初から殺すつもりはなかったとも捉えられる。
 ランベールがいなくなったのは、ゼノ達も証言出来るのだから。

 ――そうだ、あの時……。

 「あの! 僕からもいいでしょうか?」

 ゼノがしたように、ジェスは手を上げた。
 それをジッとアルドヘルムが見つめている。何を言う気だと探っている感じだ。

 「いいだろう」

 「ありがとうございます」

 エミリアーノの許可を得て、ジェスはチャンスを得た!

 「アルドヘルム総隊長にお聞きします。返してくれたムチですが、どなたが届けてくれたのですか?」

 今までの流れの話とは全然違う事なので、周りの者はキョトンとしている。
 だがアルドヘルムとゼノは、ジェスの言いたい事がわかったようだ。

 「忘れたな」

 「思い出して頂きたい。そのムチは、洞窟の岩の下敷きになったはずのムチなのです。彼らが洞窟から出て来てから岩を撤去するまで、特殊警ら隊があの場にいました。ムチが見つかったとしたならば、警ら隊の者しかいないはずなのですが?」

 ゼノにそう言われるが、今までの様にすぐに返事が返ってこない。
 今までは、答えを用意していのに違いない。
 だがムチの事を聞かれるとは思っていなかったので、答えを用意していなかった!

 「では、僕がムチを使っていると言う事は誰からお聞きしましたか?」

 ジェスがまた、答えを用意していない質問をした。

 「噂を耳にしたまでだ……」

 「噂ですか? どのような?」

 「君が、白いムチを振り回しているという噂だ!」

 「本当に白いムチをと聞いたのですか?」

 「あぁ……」

 アルドヘルムは、しつこいと言う顔つきで、ジェスに答えた。

 「それはおかしいです。僕は確かにムチを持ち歩いています。ですが、使った事など殆どありません。仲間の者達もついこないだ知ったぐらいです。噂になりようがないのですが?」

 「使った事があるのだろう? だったら君が知らないだけで、流れていたのだろう」

 「ちょっとお待ちください。何故ムチがあなたの所に届けられたのですか?」

 「知るか!」

 ゼノの質問に、イラッと来たのかアルドヘルムの態度が粗暴になった。

 「それ、アルドヘルム総隊長が拾ったからですよね? 返したのは、そのムチがマジックアイテムだと、ランベールさんに聞いたからではないですか? マジックアイテムを持っていて、更に疑われたら困ると。違いますか?」

 アルドヘルムは、ギロッとジェスを睨んだ!

 「違う! どうやって拾ったというんだ!」

 「勿論見ていたんです。そこにランベールさんが投げたムチが足元に飛んできた。だからつい拾った。魔法陣の効果をその目で見たかったのではないですか! あなたが立てた作戦です! あの魔法陣だってあなたが用意した!」

 話ながらジェスは、そうだ! そうすればつじつまが合う! と納得しながら語っていた。
 あの丘で、アルドヘルムは、作戦を立てたのは自分だと語っていた。だったらあの魔法陣を考え出したのも彼かも知れない。
 あの場所へ来る事に最初からなっていたのだから、アルドヘルムはジェス達が来るのを待っていればいい。そして、見届けて戻ればいいだけだ。

 「たかがムチだけで! 偽物を置いて行ったんだろう! あの場所では拾ってなかったんじゃないのか!」

 すっごい言い訳をアルドヘルムは言った。

 「それはないですね。確かに彼が今持っているムチは、私が差し上げた物です。あなたもどうしてあの場所に私が現れたか不思議に思っていたでしょう? このムチは、使うと私にわかるようになっているのです」

 アルドヘルムは、ゼノの説明に驚いた顔を見せた。

 「なるほどな。そういう事か。余計な事を」

 アルドヘルムは、ジェスが何故、ゼノが来ると思っていたかやっとわかったのだ。
 SOSがあったと偶然聞いて、探し出したとアルドヘルムは思っていた。

 「あと、付け加えるなら、そのムチは落としたその日に頂いた物です。知っているのは、一緒にイッロ宅に行った仲間だけです。もしアルドヘルム総隊長が言う様に、ムチを用意したとしても白いムチにならないですよ!」

 「っち」

 観念したのか、アルドヘルムは舌打ちした!
 形勢逆転だ!
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