【完結】魔女を守るのも楽じゃない

すみ 小桜(sumitan)

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忍び寄る悪意

第34話~幕引き

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 アルドヘルムは、ふうっと大きく息を吐いた。

 「私も余計な事をしたもんだ。ムチなど捨てればよかった」

 「それって、み……」

 アルドヘルムに認めるのかと聞こうと思ったジェスは、咄嗟に結界を張った!
 スッとアルドヘルムが手を横に振ったからだ!
 アルドヘルムのすぐ横に立っていた、彼を警護していた特殊警ら隊が吹き飛んだ!
 そしてジェスの張った結界も一瞬で壊され、ジェスとゼノ、それに二人を警護していた特殊警ら隊も一緒に壁まで吹っ飛ぶ!

 慌ててロベルがエミリアーノの前に出て結界を張った!
 アルドヘルムは、邪気による術の攻撃を行ったのだ!
 ジェスには、術が見え咄嗟に結界を張るも直ぐに壊されて吹き飛ばされた。ゼノも特殊警ら隊の者も身構えなかった事から邪気が見えなかったのだろう。吹き飛ばされてぐったりしている。

 そしてまたアルドヘルムが、腕を振った!
 バーンと言う大きな音と共に、ジェス達が吹き飛ばされた壁が壊され穴があいた!
 ジェス達に瓦礫が降り注ぐ!
 その穴からアルドヘルムは、悠々と逃げ出した!

 「ロベル! 彼らを見てくれ!」

 「はい!」

 エミリアーノは、アルドヘルムの警護していた特殊警ら隊の者に近づき命令を出す。
 その者は、まじかで直撃を受けて虫の息だ!
 エミリアーノは、治癒の術で治療を試みる。

 「彼を追います!」

 「頼んだぞ。ウリエン!」

 ウリエンはエミリアーノに頷くと、アルドヘルムが外に出て行った穴から追いかけて出て行った。

 ロベルは、ジェス達の上にあった瓦礫を排除する。
 ジェス達に瓦礫による怪我はなかった。何とかジェスが結界を張ったのだ。

 「ゼノ、動けますか?」

 意識のあるゼノにロベルは話しかける。

 「も、申し訳ありません。動けません……」

 ゼノは痛みに耐えながらそう答えた。
 ロベルは、一緒に吹き飛んだ特殊警ら隊の者を見た。ぐったりとして意識はない。

 「ジェスといいましたか、あなたは動けますか?」

 「あ、はい。何とか……」

 そう返し、ジェスは体を起こす。
 ジェスは、吹き飛ばされはしたが、吹き飛ばされるのがわかったので、受け身を取れたのだ。

 「では、ウリエンに続き、アルドヘルムを追って下さい」

 「え……」

 さも当然の様にロベルは言った。
 ジェスが行った所で、何も出来ない。

 「わかりました」

 だがここにいても何もする事も出来ないので、頷いてアルドヘルムを追いかける事にした。
 ジェスは立ち上がると、ウリエン同様に開いた穴から外に飛び出した。

 二人の姿は、遠くに見えた。
 と、火の玉がジェスに向かって飛んで来る!
 慌てて避けようとするも火事になると思い水の術で相殺を試みる。消滅するまで術を放つ。

 驚く事にウリエンは、アルドヘルムと互角に戦っていた!

 ――この人、滅茶苦茶強い!

 火の玉を消滅させたジェスは、ムチを取り出し一応二人に近づく。
 少し間合いを取っていたアルドヘルムは、ジェス達の方を見ながらゆっくりと後退する。
 ジェスとウリエンもアルドヘルムを見据え、ゆっくりと進む。

 「うわぁ!」

 と突然ウリエンが落下した!
 驚くも落下するウリエンをジェスは追った。
 アルドヘルムが術を使った素振りはない。それなのにウリエンは術を封じられたかの様に、落下していく!
 追いついたジェスは、ムチを振るった。ウリエンに巻き付かせ、自分の引き寄せる。するとウリエンは自分で浮遊した!

 「一体何が……」

 そう言ったウリエンの声は、心なしか震えていた。

 ジェスは地上を見下ろし何が起きたか理解した。あの洞窟に描かれていた魔法陣が、描かれていた!
 ウリエンは、その魔法陣の上を通過した為、浮遊の術がかき消され落下したのだ!
 アルドヘルムがゆっくり移動したのは、追いかけるジェス達が、だせいでその魔法陣を超えてしまわないようにしていたのだろう。

 アルドヘルムは、万が一の事を考え、逃げる工作をして準備を整えていた!
 見上げたジェス達は、アルドヘルムをその目で捉える事は出来なかった。まんまと逃げられたのだ。

 「何がありました?」

 声に振り向くと、頭上にロベルが浮いて、二人を見下ろしていた。

 「申し訳ない。彼を逃がしました」

 「そうですか。残念ですが、怪我が無い様でよかったです」

 「ジェスのお蔭で命拾いをした」

 ウリエンは、横に浮くジェスに振り向き言った。
 その言葉に、ジッとロベルはジェスを見つめる。行けと言ったものの大して期待をしていなかったのだろう。

 ウリエンは、スッと地面に降り立った。彼もカラクリに気が付いたようだ。邪気で描かれている魔法陣を覗き込む。

 「そこに何があるのです?」

 そうロベルは、ウリエンに聞いた。
 ロベルには、邪気で描かれた魔法陣が見えないようだ。

 「魔法陣がある。邪気で描かれたな」

 ウリエンはそうロベルに答えると、ロベルに振り返る。

 「戻ろう。エミリアーノ様にご報告だ」

 「はい」

 二人は頷き合うと飛び立つ。それにジェスはついていった。

 部屋に戻ると、エミリアーノとゼノが待っていた。
 ゼノは、怪我を治癒してもらったようで、普通に立っている。

 「逃げられたか……」

 「申し訳ありません」

 三人で戻った事でそう理解したエミリアーノが言うと、ウリエンは頭を下げた。

 「エミリアーノ様。少しお話があります」

 「わかった別室で話そう」

 ウリエンの話を別室で聞く事にしたエミリアーノのは、ウリエンと一緒に部屋を出て行く。
 それにロベルもついて行った。

 ポツンとジェスとゼノは二人だけになる。

 「怪我はないようですね」

 「はい。あの、ゼノさんも大丈夫ですか?」

 ゼノは頷く。

 「では我々も」

 ゼノの言葉にジェスが頷くと、二人も部屋を後にした。


 ☆―☆ ☆―☆ ☆―☆


 次期「魔女」候補にも上がっていた人物だった、アルドヘルムがマジックアイテムを横流ししていた話は、多くの魔術師達を驚かせた。
 彼は、魔女候補からお尋ね者になった。

 アルドヘルムが魔女の能力をリズが引き継いだ事を知ってリズに仕掛けた事は、ゼノにジェスは話した。それでアルドヘルムが、リズが魔女だと知らないハズだったことをジェスは知る。アバーテは、査問会議後速やかに束縛された。
 受け継いだ本来の能力を知っていれば、襲われる事はないのにとジェスは溜息が出る。

 ウリエンも次期魔女候補で、研究員だった。強いはずだとジェスは関心した。
 そしてジェスは、自分の疑いが晴れた事に安堵したのだった。
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