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第六話
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「私はすぐに気がつきましたよ。空模様と彼女の心境を考えれば、すぐに気づけたはずです。私は彼女を愛していました。あなたに奪い返される前に、それができないようにしたかったのです。聖女が欲しかったわけではない」
イース様。
「どうだか」
「私の国は、聖女がいなくても成り立っている国です。今回好きになった方が聖女だっただけです。レインルナは、あなたに捨てられ心病んでおりました。その間、ずっとその心の鏡の様に雨が降り続いた。聖女ではないと切り捨てたあなたは、気づかなかった。彼女を見ようとしていなかったから」
そうだった。私が元気になったのは、イース様の毎日の訪問のお蔭かもしれない。
「彼女を救いたいと思った。聖女である限り、彼女には幸せはない」
「は? 何を言っている。聖女だぞ? 名誉な事だ」
「名誉? 泣かない聖女など飛べない鳥と一緒だと言ったのは誰だ? 今更気がついても遅いのです! 彼女は渡しません! 彼女との婚約は、私の国中の者が知っています。もう既に遅いのです」
「……もういい! 後悔するがいい!」
「後悔しているのは、そちらでしょう? ずっと悔やんでいるといい。彼女を手放した事を」
エストベラル様は、憤慨して出ていきました。
でもまさか、私が本当に聖女で、それにイース様が気がついていたなんて。
「私の事を嫌いになりましたか?」
「え?」
「あなたが聖女だと気がついていたのに黙っていたからです。私もずるいのです。あなたにその事を報告すれば、彼の元に戻れたかもしれない。それが怖かった。今も、もし戻ると行ったらどうしようかと……」
私は、首を横に振りました。
「イース様のお蔭で目が覚めました。キラレイ王国の皆さんには悪いですが、私も一人の女性として好きな方と一緒にいたいです。今、お慕いしている方は、イース様です」
顔が熱い。心臓も凄いドキドキしている。
「ありがとう。大切にします」
そっとイース様は、私を抱きしめてくださいました。
□
一か月後。急ピッチで私達のお家が作られました。そこに住む事になった私達は、国民のみなさんにお披露目パレードです。
でも空模様は、最悪です。雨でした。
それでも一目見ようと来てくれているので、馬車の中から手を振りご挨拶。
こんなに歓迎されて、嬉しくて涙が出そうです。
「あなたは、心を偽れない方ですね」
「え?」
「空が語ってしまうのですから。知っていますか? 涙は嬉しくても流れる事を」
イース様は、とても嬉しそうに言いました。
嬉しさで涙が出そうなのは、バレバレでしたのね。
「この国にとっても、雨は恵みなのです。国民の皆様は、聖女だと知りませんが、二重の喜びでしょう」
もう無理して泣こうとしなくてもいい。喜ぶ事でも雨が降るなんて!
愛しています。イース様。私はとっても幸せです。
イース様。
「どうだか」
「私の国は、聖女がいなくても成り立っている国です。今回好きになった方が聖女だっただけです。レインルナは、あなたに捨てられ心病んでおりました。その間、ずっとその心の鏡の様に雨が降り続いた。聖女ではないと切り捨てたあなたは、気づかなかった。彼女を見ようとしていなかったから」
そうだった。私が元気になったのは、イース様の毎日の訪問のお蔭かもしれない。
「彼女を救いたいと思った。聖女である限り、彼女には幸せはない」
「は? 何を言っている。聖女だぞ? 名誉な事だ」
「名誉? 泣かない聖女など飛べない鳥と一緒だと言ったのは誰だ? 今更気がついても遅いのです! 彼女は渡しません! 彼女との婚約は、私の国中の者が知っています。もう既に遅いのです」
「……もういい! 後悔するがいい!」
「後悔しているのは、そちらでしょう? ずっと悔やんでいるといい。彼女を手放した事を」
エストベラル様は、憤慨して出ていきました。
でもまさか、私が本当に聖女で、それにイース様が気がついていたなんて。
「私の事を嫌いになりましたか?」
「え?」
「あなたが聖女だと気がついていたのに黙っていたからです。私もずるいのです。あなたにその事を報告すれば、彼の元に戻れたかもしれない。それが怖かった。今も、もし戻ると行ったらどうしようかと……」
私は、首を横に振りました。
「イース様のお蔭で目が覚めました。キラレイ王国の皆さんには悪いですが、私も一人の女性として好きな方と一緒にいたいです。今、お慕いしている方は、イース様です」
顔が熱い。心臓も凄いドキドキしている。
「ありがとう。大切にします」
そっとイース様は、私を抱きしめてくださいました。
□
一か月後。急ピッチで私達のお家が作られました。そこに住む事になった私達は、国民のみなさんにお披露目パレードです。
でも空模様は、最悪です。雨でした。
それでも一目見ようと来てくれているので、馬車の中から手を振りご挨拶。
こんなに歓迎されて、嬉しくて涙が出そうです。
「あなたは、心を偽れない方ですね」
「え?」
「空が語ってしまうのですから。知っていますか? 涙は嬉しくても流れる事を」
イース様は、とても嬉しそうに言いました。
嬉しさで涙が出そうなのは、バレバレでしたのね。
「この国にとっても、雨は恵みなのです。国民の皆様は、聖女だと知りませんが、二重の喜びでしょう」
もう無理して泣こうとしなくてもいい。喜ぶ事でも雨が降るなんて!
愛しています。イース様。私はとっても幸せです。
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