魔法使いじゃないから!

すみ 小桜(sumitan)

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『レベル1―少女がくれた杖―』

―3―

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 「間に合った~」

 なんて、呑気に雨の中、額の汗を拭くしぐさなんかしている。
 これ、間に合ったって言うの? 確かにモンスターを倒したけどさ!

 「って、それ出来るなら最初からやってよ! 死ぬかと思った! って、キミ誰? これ何?!」

 僕は指差した。横になって倒れ動かなくなったモンスター三体を――って、その姿が今消滅した!

 「……え?」

 指差した先を僕は、ボー然と見つめた。今更だけど、これ夢だよね? じゃないと突然現れて、突然消えるなんて事があるわけない……。
 いや、そもそも目の前の少女が、空に浮かんでいる事自体があり得ない!

 「大丈夫だった? って、見える人がいるなんてビックリ!」

 彼女は、ビックリと言いながらその表情は全然そう見えない。きっと、僕の方がびっくりした顔をしているに違いない。

 「ちょっとお願いがあるんだけど。これであの魔物倒してみてくれない?」

 彼女は、放心している僕の目の前に『杖』を突きだした。それから、『あの魔物』の方に視線を移す。僕も移す――残っていたモンスターもこっちに向かってきていた!

 「わー。こっち来た! さっきので何とかしてよ!」
 「あれ、高いのよ! だからまず、これ試してってば!」

 と、何とわがままな事を! 値段の話じゃないだろう! 安全性だよここは!
 突き出された杖は、彼女が『あれ?』っと言っていた時に持っていたやつだ。つまりは、使えない代物!

 「それで、僕にどうすれって言うんだよ! 使えない杖じゃん!」

 それにうんって彼女は頷いた。頷かれた僕は、どうすればいいの?

 「だから私には使えなかったの! 予想外だよ! とにかくやってみて!」
 「いや、使い方知らないし……」

 そう言うと、仕方がないなっと偉そうに説明を始める。

 「杖を魔物に向けて、力を下さいとお願いして、あれを倒して!」

 いとも簡単に言った。自分が出来なかった事を!

 「いや、無理! 僕、魔法使いじゃないし!」
 「いいから早く! やってみてよ」

 もう目の前にモンスターが迫っていた! 仕方がない。出来ないと見せないと、あのアイテムを使ってくれそうもない。
 たしか、こんな感じな事を言っていたよな――

 「僕に力を! あのモンスターを倒せ!」

 僕は、軽く杖をモンスターに向けた振った。
 これで、あのアイテムを使って――もらえないかも! 目の前のモンスターの一体は、倒れる事無く――消滅した!
 僕は、杖とモンスターを見比べる様に見た。

 「なんでー? 消えちゃったらアイテム使ってもらえないじゃん! うん? あれ? 消滅したからこれ使えばいいのか?」
 「やったー! ほら、次!」

 僕がパニックになっているのなんて、お構いなし! ――自分は出来なかったくせに!

 「僕に力を! モンスターを倒せ! 僕に力を! モンスターを倒せ! って、これめんどくさ!」

 やけになって杖を振ったけど、一回一回台詞を言わなくてはならなくて、面倒だ! もっと短くならないかな? ――例えば、二○ラムとか、叫んで消えないかな?

 もう僕は、ゲームの魔法使いのノリだった。いやもう、現実逃避してないとやってられないよ!
 だが、ある言葉で僕は、現実に引き戻される。

 「あの子、大丈夫かしら?」

 ハッとして、周りを見ると、傘を差した人たちが僕を可哀想な目で僕を見ていた! 周りには、僕一人が杖を振って叫んで様にしか見えていない――気づいたらここには居られない!
 僕はとっさに彼女の手を掴み、雨の中、傘の代わりに杖を握りしめ走り去った。
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