魔法使いじゃないから!

すみ 小桜(sumitan)

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『レベル1―少女がくれた杖―』

―4―

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 はぁはぁと息を切らし、二度目の全力疾走! もう一生分走った!
 周りを見渡すと、知らない場所だ。バスで通っている僕は、いつも乗り降りするバス停を通り越し、兎に角走った。逃げる時に、ちょうどよくバスなんかこないし!
 もちろんタクシーも。来てもお金がないから乗らないけどね。
 とにかく知っている場所に出ないと――いや、その前に何が起こったか聞く方が先か。

 僕は、隣で息を切らしている少女を見た。よく考えたらこの国どころか、この世界の標準の見た目じゃない。

 「あのさ、キミ何者?」

 何を聞こうか迷った――正確には、何から聞いたらいいかわからないけど、取りあえず聞いた。

 「私は、ミーラ。カイミノチニ界から来ました。あの魔物は、魔界の魔王の手下が、私の世界にばらまいたモノなの」

 このミーラさん、驚く事を言った! 魔物は自分の世界にばらまかれたモノって言った! なんて事をするんだ! ――他にも驚くところはあるけど!

 「ごめんね~。対処しきれないから、一旦この世界へ送ってから倒す事にしたんだけど、何故か杖が使えなくて。焦ったわ~」

 全く焦ったように聞こえないのは、僕だけだろうか?

 「あ、大丈夫! あの魔物は魔力を吸い取るだけだから。この世界の人は、元から魔力を使わないでしょう? だから魔力が少ないのは知っていたの。だから被害は最小限!」
 「最小限! って、そんな自分勝手な言い分……」

 何をどう言っていいのか、わからない。魔力? 僕達、少なからず持っているのか? ――いや、そんな事はどうでもいい!

 「酷くない? かまれた人はいたよ! ふらついていた! 被害は出てる! それに僕だって、被害に遭った!」

 そう言って睨みつけたのに、ごめ~んっだって! 軽すぎる! ――全然誠意を感じない!
 とにかく、もうしないように言って、残りのモンスターを倒して、自分の世界に帰ってもらおう!

 「取りあえず、残りのモンスターを倒して、さっさと元の世界に帰ってよ! で、二度と今日みたいな事をしないで! そして、もう来ないで!」
 「え? 倒すのは、あなたがやってよ! その杖使えるんだから!」

 なんて、人任せなんだ! なんで、僕が倒さなくちゃいけないんだ!

 「嫌だよ! なんで僕が! キミにだって倒せるじゃないか! 液体せいすいで倒せよ!」
 「え~。あれ高いって言ったじゃん! それあげるからさ。倒してよ!」

 可愛く言ったって――いや、言ってなかった。腰に手を当てて偉そうに言った。基本この人、上から目線? 他力本願? ――つまり、わがまま!

 「いやぁ、助かった。さて、言われたように帰るかな。後で見に来るね! 本当はこんなに長居するつもりなかったし」

 いや、僕帰れって言ったけど、モンスターを倒してからって言ったよね? しかも、もう来るなって言ったよね? ――全然、話きいてないよ、この人!
 って、手を振ってるし! ――待って! モンスターを置いて行かないで!
 シュッと姿が消える一瞬、僕の後ろを指差したように見えた。で、フッと後ろを振り返ったら残りのモンスターが! ――このやろう! 覚えていろよ!

 「僕に力を! モンスターを倒せ!」

 仕方がないというか、やるしかない! で、一体消滅! やったー! ――喜んでもいられない。あと三体がこっちに突進してきた!
 結局また走る羽目に! 走りながら台詞じゅもんを発する!

 「僕に力を! モンスターを倒せ! 僕に力を! モンスターを倒せ! 僕に力を! モンスターを倒せ!」

 僕は、杖をブンブン振りながら、全力疾走! 来世の分も走り切った! ――もう人目なんて気にしていられなかった。哀れな僕。
 目が覚めたら夢でありますように! と祈らずにいられなかった。
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