魔法使いじゃないから!

すみ 小桜(sumitan)

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『レベル3―家庭訪問お断り―』

―2―

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 「ふう。こんなもんかな」

 僕は腰に手を当て、自分の部屋を見渡した。
 いつもなら寝起きのままのベットも整えた。本棚の本もただ積んである状態なのをきちんと並べ、見栄えよく見える。

 今日は、学生ならよく知っている家庭訪問の日。僕の学校では希望者だけ家庭訪問がある。
 部屋も覗かれるかもしれないので、四角な座敷を丸く掃くような感じだけど綺麗にした。

 僕が居間に向かうとそこにはお母さんが、いつもより念入りに化粧をし着飾ってソワソワしていた。

 「部屋片付けたよ」
 「もう、そろそろかしらね」

 チラッと時計を見て確認して言ったが、予定の時間まで十五分程早い。
 まだ前の生徒の家にいるか移動中だよ。きっと……。

 ピンポーン。

 「来たわ!」

 インターホンで確認もせずに、お母さんは玄関に向かった。
 いや多分、配達かなんかだよ。いくらなんでも早すぎるって……。

 僕は、違ったわって戻って来ると思い、何か飲もうと冷蔵庫に手を掛けた。

 「来たわよ。七生」
 「え!」

 先生、早すぎるって! ――振り返って驚いた。
 お母さんの横に立っているのは、どう見ても白髪のおじいちゃんだ! 担任の先生は、若い先生だ。お母さんが気合を入れてるぐらい……。

 いやその前に服装が変だ。ワンピースのように、ただ上からスポッと着ただけの服だ。どこかで見たような……。

 「へえ、中ってこうなってるんだ……」

 僕は、その台詞の人物に釘付けになった! いや、正確には驚いて放心してしまった。

 紛れもなくミーラさんだ! そしてその彼女と同じような格好をおじいちゃんはしていた! ――見た事があるはずだ! それワンピースじゃなくて、向こうの世界の服装だったんだ!
 いや、今はそんな事どうでもいい! 何故いる。しかも、お母さん『来たわよ』って言ったよな?

 「ちょ! お母さんに何した?!」
 「いやぁねぇ。何もされてないわよ。それより言ってあったでしょ。お父さんの親戚が日本に来るから泊めるって話」

 ……いえ、聞いてません。
 お母さんに記憶を操作する何かをしたんだ……。そんな事も出来るのかよ! アニメかよ! 映画かよ!

 「七生くんや。少し話をしようか?」
 「え? 何で名前を……」

 よく考えれば、僕は彼女に名乗ってない。なのに……。あ! 今、お母さんがそう呼んだのか!
 僕は、おじいさんに首を縦に振り頷いた。
 これ以上、お母さんを巻き込まない為に!



 僕は二人を自分の部屋に連れて行き、バンッとドアを閉め二人に振り向く。

 「何しに来たんだよ! って、どうしてここがわかった!」

 思い返せば、学校の時もそうだった。一体どうやってわかったんだ!?

 「杖だよ。あれはワシが作ったものだ。どうだ、素晴らしいモノだろ?」

 そうか。だから杖を持って行ったあの日体育館に! 何故、よりによってあの日なんだ!
 いや、それよりこれはチャンスだ! 杖を返すチャンス!

 「すっごいものでした! 僕には勿体ない品物ですのでお返しします。それで、持って帰って、もうここには来ないで下さい!」

 僕は、机の上に置いてあった杖を手に取ると、おじいちゃんの前に突き出した。

 「いや、それはもう君のモノだ。大事にしてほしい」

 おじいちゃんは真面目な表情でそう言って、受け取るのを断った。
 いらないから返すって事なんだけどなぁ……。

 「いえ、すみませんがいりません。ごめんなさい!」

 杖を差し出したまま頭を下げる。
 この杖さえなければ、モンスターは連れてこないだろう。あるからいけないんだ!
 だが受け取ってもらえない。

 「返されても困る。さっきも言った通り、君にしか使えないレア物だった。いやぁ、見た目が普通のと一緒だから気づかなかったが、ミーラから聞いて驚いた。本当かどうかこの前見た時に、杖もレベルアップし滅多に作れない杖だった事が確認できた。色々と決める事もあってな。ご挨拶に来るのが遅れて申し訳ない。あ、ワシはパスカルと言って、ミーラの師匠だ。宜しくな」

 饒舌に語り出したパスカルさんに、僕は唖然としていた。
 ハッとして、僕は正気を取り戻す。

 師匠って、魔法使いの師匠なのか? 向こうの世界では自分で杖を造るのか? そんな事より僕にしか使えないってどういう事?

 「ミーラさんの師匠……パスカルさん、僕にしか使えないって? なんで?」
 「そこからか。……そうだな。この世界ではこういうのは造らんか。杖というのはな、我々が魔法を使う手助けをしてくれる物だ。普通は使う者を選ばん。だが、稀に意思を持つ物が出来上がる事があり、それは一人の者しか使えない。そして普通は見た目も違う。勿論、威力も性能も桁違いだ。だが……」
 「ちょっと、待って!」

 この人話長そう! 杖の性能うんぬんって僕に関係ないし!

 「いっぺんに話されても! っていうか、僕、杖いりませんから! この世界では必要がないものだし!」
 「何を言っておる!」

 何故かパスカルさんは、ビシッと真顔で言った。

 「かなりのレア物なのだぞ! しかもレベルが上がるモノなんて滅多にできん! 君にしか使えないのだ! 今はまだちょっとした事しかできないかもしれないが、レベルが上がれば色々使えるようになる! ワシの名も上がる! ……いや、これは関係ないが。さっきも言ったように君にしか使えないのだ!」
 「………」

 いや、だから僕にしか使えなくても、この世界では必要がないもので……。
 はぁっと、僕は溜息をつく。
 たぶん、常識が違うのだろうなぁ。どうやったら断れるんだろう……。

 「あの本当に僕にしか使えないんですか? 例えばミーラさんがダメでもパスカルさんが使えるかもっていう可能性は……」
 「レベルアップした時点で、君しか使えないという事は明白なっている。杖の匠としては、それは本来最終目標になる品物だ! ワシの世界の者に渡っていれば、ワシの名は轟いたであろう。だからせめてレベルアップさせて欲しいのだ! この通りだ」

 パスカルさんは、僕に頭を下げた。

 気持ちはわかる。すっごいものを作ったのに評価されないって事だよね? でも、それって僕が悪いわけじゃなく、ミーラさんのせいだと思うんだけど……。とんだとばっちりだ!

 「あの……使う事も滅多にないし、レベルが上がった所で評価されないんですよね? だったら勿体ないかもしれないけど、飾るだけにしておいて下さい! 僕にはすぎる物です!」
 「何を言っている! 飾っておくだけなど! 杖は使ってなんぼだ! 普通は使い捨てだが、それは一生もんなのだぞ! それに、君が持ち主として選ばれた事は伝え、許可も頂いた! 存分に使ってほしい。レベルを上げる為に協力は惜しまない!」

 はぁ。ダメだ。勝手に許可までとってるし……。うん? レベル上げに協力する……てぇ!!

 「協力するってモンスターを連れて来るって事じゃないか!」

 今までの事を振り返ればそうなる! 冗談じゃない!

 「そうだ。我々の世界には、ここにはいない魔物が湧く。それを魔法で消滅させ魔力に返している。まあ、ここで消滅させれば、ワシの世界に魔力は還元されないが多少だ。問題はない」

 うん? 我々の世界に湧く?

 「魔界の手下がばらまいたモンスターじゃないの?」
 「魔界? 何の話だ?」

 ミーラさんが、あぁ……という顔をしている! 嘘だったのか! 何故そんな嘘を……。

 「ミーラさん……!」

 僕はミーラさんを睨みつけた。

 「だって、そのほうが盛り上がるでしょ? 好きだよね? 勇者と魔王」

 って、ニッコリ微笑んだ! ちょっと可愛いからって騙されないぞ! この嘘つきがぁ!
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