魔法使いじゃないから!

すみ 小桜(sumitan)

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『レベル4―僕らは桜舞う中で杖を振るう―』

―4―

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 何故かシーンと静まり返る。
 マジに出た! ミーラさんもパスカルさんの弟子だけあってちゃんと? 杖を造れるようだ。だけどなんて物を造ったんだ!!

 「すげぇ。どうなってるんだ? 俺が想像したモノが出た!」

 そりゃ一応本物の杖ですから……。

 「透けてない! 映像じゃないの? 本当のオオカミみたい!」

 オオカミに見えますが、あれはモンスターです! ――って、突っ込みを入れてる場合じゃない! 何とかしないと!
 うん? あれ?

 「二人とも見えてるの!?」

 僕が叫ぶと、二人は不思議そうな顔を僕に向けた。今までのモンスターは、僕以外の人達には見えていなかった。

 ガルルル……。|
 見合っていると、オオカミモンスターは僕達に威嚇を始めた。
 やばい。——二人に見えてる事だしいいか。

 「るすになにする!」

 僕は杖を手にして叫んだ。
 突然言った言葉に驚き二人が振り向くも、杖が出現した事にも驚いたのか、何も言わずに茫然としている。

 「もうミーラさん! 約束しただろう!」
 「約束?」

 なんだっけという顔で聞き返して来た。

 「モンスターを勝手に出さないって約束だよ!」
 「え~。出したの私じゃないし!」
 「同じ事だろう!!」
 「ふ~んだ。召喚してないもん」

 屁理屈ばかり言いやがって!

 「結局、お前もノリノリじゃん」

 大場が僕に向かって言った。

 ノリノリって……僕にとっては、強制的なんだけど!

 「あぁ、もう! 消滅しろ!」

 僕は怒りを込めて、オオカミモンスターに杖を振るった!
 オオカミはよろけるも目を吊り上げる。その目は赤に変わっている!

 一発で倒せないのか!
 もう自分の強さも相手の強さもわからないと戦いづらい! 出来ればこの状態にしたくないのに!
 ゲームでいうなら、ある程度HPが削れると、敵が狂暴化になる状況と一緒だ!

 「もう二人共ずるい! 私もやりたい! 貸して!」

 二色さんが自分も杖を使いたいと言い出した。しかも僕に……。
 彼女は出すより攻撃をしたいらしい。しかし、これ僕専用だし。

 「これは、僕専用なんだ。だから……」
 「何それ! 少しぐらい貸してくれてもいいでしょう!」
 「いや、そうじゃなくて……」

 突然、オオカミが僕に向かって飛びかかって来た! 言い争い? をしていた僕は咄嗟によけるも、杖を持ってる右手に攻撃をくらい杖を落としてしまった!
 そしてそれを二色さんが拾ってニンマリとする。

 「ちょ……。危ないから!」
 「いいから。いいから。消滅して!」

 二色さんは嬉しそうに、オオカミに向かって杖を振るった。勿論何も起こらない。いや、僕が振るった時と同じだ。見た目は……。

 「消滅!」
 「俺も消滅!」

 二色さんがオオカミに向かって杖を振ると、大場もミーラさんの杖を振った。

 「ちょっと待てて!」

 僕は慌てた。大場が持っているのはモンスターを出す杖だ! 万が一また出たら厄介だ。
 しかし何も出てこなかった。僕は胸を撫で下ろす。

 「も、もういいよね? 返してくれない?」

 僕は二色さんにそういうも嫌そうな顔をされた。――あぁもう、返してよ!

 オオカミは僕ら二人に威嚇していたが、突然、大場目掛けてジャンプした!
 僕は慌てて、二色さんから杖を奪い取った!

 「うわ~!」
 「消滅しろ!」

 襲い掛かって来たオオカミに驚いた大場は、頭を庇う様にして両手を顔の前で構えた!
 そして僕は、そのオオカミに向けて杖を振るった!
 オオカミは、大場に攻撃を入れる直前で消滅した。

 ビビった。冗談じゃない! 二人まで巻き込むなんて!

 「やったー!」

 後ろから喜ぶミーラさんの声が僕の耳に届いた。――振り向いて彼女を睨みつける。

 「何、考えてるのさ!」
 「何って。杖のレベルアップでしょう? この世界で出した魔物でもその杖がレベルアップする事が証明された! あぁこれで、師匠に私の杖が認めらる!」

 僕はハッとして杖を見るも形態は変わっていない。ガックシと肩を落とす。
 使っている本人が、杖のレベルアップを確認出来ないってどうなんだ?
 うん? いや待てよ?

 「もしかして、その杖を使えって言ったのパスカルさん?」
 「そうだよ! 杖のレベル上げに使えるなら、私達の魔物をこっちで消滅させなくていいからさ。それが出来たら私の杖の価値を認めてくれるって!」

 僕の質問に嬉々としてミーラさんは答えた。
 モンスターは、魔力で出来ているらしく、消滅させる事で魔力に戻している。
 パスカルさんは、向こうの世界のモンスターをこっちで消滅させれば、魔力還元が向こうの世界で行われない。そこでミーラさんが造った杖でこっちの魔力を使ってモンスターを作り、それを消滅させ僕の杖のレベルアップに使えないかと考えた?

 はあ? だったら最初から言ってほしい! いやミーラさんの口ぶりからすると、本人も気づいてないな。僕もミーラさんも上手く丸め込まれた?
 自分の杖のレベルアップの為に!!

 僕の考えが甘かった! 流石ミーラさんの師匠だ! ミーラさんの上を行く……。

 「ちょっと二人だけで盛り上がらないでよ! よく設定がわからないんだけど?」
 「そうだよ! って、なんでおいしいとこをあきらが持ってくんだよ!」

 文句タラタラの二人。あぁ、こっちも厄介だ! 代われるなら代わってほしいよ!
 二人に説明して協力でもしてもらうか? ……いやダメだ! 協力という名の下で、好き放題しそうだ! ――ミーラさんが三人になったら困る!

 「あぁ、ごめん。つい、夢中になって……。それより写メ撮るんじゃなかったのか?」
 「あ、そうだったわ! 幸映ゆきはる、杖をミラさんに」
 「おう!」

 大場はミーラさんに杖を返した。

 「るすになにする」

 僕はこっそり戻す言葉じゅもんを口にし杖をペン型に戻す。そして胸ポケットに突っ込む。

 かくして、ミーラさんの写真撮影が始まった。彼女は笑顔で杖持ちポーズを取っていた。――ここだけ切り取ると平和な一枚だ。
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