魔法使いじゃないから!

すみ 小桜(sumitan)

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『レベル9―これで卒業!?検証セレモニー ―』

―3―

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 僕が、来客用のイスを並べていると突然、辺りが静かになった。――なんなんだぁ!?
 顔を上げると、ミーラさんの横に師匠のパスカルさんに、本物の魔法使いのミントさんがいた。
 そして、見知らぬおじさんが二人……。

 ミーラさん以外は、向こうの世界の一般的な服装だと思われる、水色や緑色などのワンピースの様な格好をしている。
 で、誰も周りの人たちが騒いでないと言う事は、彼らの姿は見えていないみたい。基本的に、何故か見えないらしい。

 「何しに来たんですか? お客さんまで連れて……」

 嫌な予感しかしない。
 ミーラさんの師匠のパスカルさんも、ミーラさん以上に厄介な人だ。こちらの事情なんてお構いなし!

 「実はな。その杖が、わざを繰り出せるまでになったと聞いてな。監査官の方々に、杖の査定をして頂こうと思ってお連れした」

 今、何とおっしゃいました!?
 それってあれだよね? モンスターを必殺技で倒す所を見せるって事だよね!? ――ここでやらせる気かぁ!!

 「大丈夫です。色々この世界の事を勉強しました。今、音を遮断する結界を張ってあります! 気兼ねなく出来ます!」

 と、ミントさんは、真面目な顔でいいました……。
 いや、音だけ遮断してもねぇ。
 それって、僕の姿は見えているって事かな?

 「あのさ。もうちょっと後でもいいかな? もう少ししたら終わるからさ」
 「何を言っておる。わざわざお越し下さったのだ!」
 
 だったら先に連絡よこしてよ!
 さて、どうしよう。もうやる気満々な彼らは止められない!

 「あぁ、じゃ場所を変えませんか?」
 「私が張った結界ではダメでしょうか?」

 ミントさんが、ショックを受けた顔つきになった。
 あぁもう!

 「ねえ、七生くん。何をしているの?」

 げ! 安達先輩!
 結界ってどこからかわからないけど、普通に僕の横に来たんだけど!

 「何かわからない事があるの?」
 「いや、えーと」

 まずい。また巻き込んでしまう。

 「あ、安達先輩だ! 師匠! 彼女が出したモンスターが凄く強かったんです! それで、七生くんが必殺技を編み出したんですよ!」

 って、余計な事を言わなくていいから!

 「安達先輩! 悪いけど、離れて!」
 「え!?」
 「そうか。彼女が……では、同じモンスターの方がいいか」
 「はーい!」

 僕が言った言葉で安達先輩が驚いている間に、何か良からぬ話が進んでいるんですけど!

 「ちょっと待って!」
 「え? 何?」
 「あ、いや。安達先輩じゃなくて!」
 「安達先輩!」
 「きゃ!」

 僕と安達先輩が、漫才の様なやり取りをしていると、杖を持ったミーラさんが安達先輩に声を掛けた。
 たぶん今は、安達先輩に見える様になっているんだと思う。
 って、何でしがみつくんだぁ!!

 「あの、先輩……」
 「誰、なんで?」
 
 安達先輩がミーラさんではない方を見て言った。

 「え? まさか、全員見えるの?」
 「見える様にした」

 僕の質問に、ミントさんが答えた。
 余計な事をしないでほしい!! ――もう誤魔化せなくなった!

 「お願いがあるんだけど。この杖でこの前のモンスターを出してもらえないかな?」
 「スライムですか?」
 「うん。それそれ」
 「ちょっと待って! ここ……」
 「うん。杖用意するまで待ってるね」

 待ってるって言ったのは、ミーラさんではなく彼女から杖を受け取った安達先輩だった。とても嬉しそうに、早くしてと目で訴えて来る。
 いいのか? ここがぐちゃぐちゃになっても!!
 あぁもう、知らないから!

 「るすになにする!」

 胸ポケットに入れてあった杖を取り出すと、大きさを戻す言葉じゅもん唱えた!
 杖は、元の大きさに戻る。

 「スライム召喚!!」
 「「おぉ!!」」

 監査官達は、安達先輩が召喚した、見た目はカワイイスライムを見て感動? している。
 さてと、ちゃちゃっと終わらせよう!!

 「必殺技!」

 僕は、スライムに向けて杖を振う!

 「おぉ!!!」

 パスカルさんは、歓喜の声を上げた!
 スライムは、一発で消滅していた!

 必殺技ってすごい!
 前回は、普通に攻撃を何度もしてやっとスライムは、水色から赤色に変わった。
 ゲームでいうならある程度HPが削れると、狂暴化する状況と同じ現象らしい。本当は、赤くなるのは目なんだけどね!
 それで、必殺技を使ったら一回で撃破!

 って、目が回る……。
 僕はフラついて、倒れた。
 ガシ!
 と、誰かが僕を抱えてくれた。

 「お前、何先輩と遊んでるんだよ!」

 支えてくれたのは、大場だった。
 やっぱり僕と安達先輩の姿は見えていたんだ!

 「もしかして……モンスターを出したの? 二人で!? ずるいわ!」
 「あ、あのね……」
 「あら? その杖……」

 抗議していた二色さんが、杖を指さした。僕は握っていた杖を見て、驚いて起き上がった!
 先がくるっと丸まった何の変哲もなかった杖が、とぐろを巻いた様にねじれ、先はコウモリの様な羽の形になっていた!
 そして、羽の間には、小さなオレンジっぽい宝石がついていた。――この宝石は、どこから?!

 いやいや、そうじゃない!
 杖の形が変わった! これで、役目も終わる!
 僕は、顔を上げた。そして、居るはずのパスカルさんに話しかけようとするも誰もいない!

 「はぁ!? なんで! 居ないの!?」
 「お前、元気じゃん」
 「君達、手伝う気がないなら帰っていいから!」

 ムッとした声に振り向いて顔を上げると、睨んで見下ろしている稲葉先輩がいた。
 あぁ……言われた通り、帰りたい。
 パスカルさんが消えていた事で、だるさが二倍になった!

 「もうそんなに怒らないで。大切な作業をしていたのよ」

 安達先輩が、稲葉先輩に言うも彼は困り顔だ。

 「そうなんです! 大切な検証だったんですよ!」
 「あ! ミーラさん! パスカルさんは? 杖見てよ!」

 居ないと思っていたミーラさんが現れて、僕は変化した杖を掲げた。
 ミーラさんは、パチパチパチと手を叩く。

 「そっか。変わったのね!」
 「すげー!! 本当にかわったのかよ」

 二色さんと大場は、驚きながらもミーラさんと同じく拍手する。――その拍手いらないから!

 「師匠からの伝言。明日、その変化を遂げた杖の効果の検証をするそうです!」
 「……え? えぇ!!!」

 まだするのかよ!
 ちょっと待て! 明日って卒業式じゃないかぁ!!
 これは、学校にこれないな。はぁ……。

 「そうだわ! その検証、皆さんに見て頂きましょうよ!」
 「………」

 驚きの言葉を安達先輩が言った!
 それ、ミーラさんが言う台詞だよ? それを先輩が言っちゃうんですか!!

 「いいわよね? 稲葉生徒会長!」
 「こういう時だけ、生徒会長って……。それ、俺だけじゃ決められないし」
 「あら、教頭先生だわ!」

 二色さんの声に振り向けば、教頭先生が様子を見に来て、僕達を見つけ近づいてきている!
 タイミング、良すぎですからぁ!!

 そして、安達先輩筆頭に、あーだこーだと教頭先生に言った結果、最後の余興として、ステージの上で披露する事になった。
 もう知りません――。はぁ……。
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