魔法使いじゃないから!

すみ 小桜(sumitan)

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『レベル10―嘘は魔法使いの始まり ―』

―3―

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 「教頭先生」
 「おや、どうしました?」

 僕が来たので他の人はと確認をする教頭先生。わかりますその気持ち。

 「あ、今日は一人です」
 「そうか」

 あからさまに、教頭先生はホッとする。
 僕達、問題児扱いになってるかも……。

 「で、どうした?」
 「あ、はい。あの、入部希望者が多い様なので、選抜したいのですが……」
 「選抜?」
 「えっと、入部試験です。それをやる予定です。……許可を頂きたく……」
 「あぁ。構わないよ。しかし、凄い効果だな。マジシャンって人気だったんだな」
 「………」

 人気なのは、安達先輩ですけどね!

 「ありがとうございます」

 僕は、安堵して部室に向かう。
 悪いけど、全員落とします! ――じゃないと、稲葉先輩に何されるかわかりません!

 「あ、きたきた!」
 「遅くなってごめん」
 「別に構わないわ。楽しい時間だった。じゃ、一日ついたちにね」

 僕が部室に行くと、入れ替わりに安達先輩が出て行った。

 「生徒会の仕事だってよ」

 大場がそう教えてくれた。
 彼女も忙しいなら、この部に入らなくてもよかったのに……。

 「って、一日にって?」
 「次の部活を4月の初めにしようかってなったの」

 僕の質問に嬉しそうにミーラさんが答えた。

 「その日に、ミラさんが杖を作って持って来てくれるって事になったのよ。やっと私達にも専用の杖があたるのよ!」

 二色さんも嬉しそうに僕に話してくれた。
 ――って、何だって!!!

 「ちょっと待って! その杖って、モンスターが出る杖なんじゃないの?」
 「そうだよ。たぶん……」

 たぶんって何だよ。
 いやそれより、まずいだろうそれ。倒せるの僕だけだし。

 ミーラさんは、まだ見習いらしくちゃんと杖を作れない。前にこっそり作ったのが、本来の杖と逆でモンスターを出す杖だった!
 それが、師匠のパスカルさんに認められて、この世界でモンスターを出す杖として使用される事になった。その杖で出したモンスターを僕が持っている杖で倒すのだ。
 だから、そういう杖が増えるのはまずい!
 って、彼らに渡したらところかまわずモンスターを出すだろう!!
 これは何とかしないと!!

 「あのさ、ミーラさん。ちょっと!」

 僕は、彼女を手招きする。

 「あのさ。杖じゃなくて服にしない?」
 「服?」
 「ほら、水色のワンピースみたいの」
 「なんで?」
 「何でって……」

 それは、杖を作らせたくないからです!

 「って、私には服は作れないよ?」
 「………」

 そうだった!
 ミーラさんは、杖職人の見習いだった!!
 さて、どうしよう……。

 「せこいことすんなよな!」
 「そうよ! 自分だけだなんて!」

 聞き耳を立てていたらしく、大場と二色さんに抗議されてしまった。
 あぁ、もう!

 「じゃ、受け取っても勝手に出しまくらないでよ! 僕にしか倒せないんだから!」
 「へいへい」
 「でもこれで、その杖のレベルアップに貢献できるわね!」

 いや、それはしなくていいんです!
 僕は、ため息しかでなかった。
 ミーラさんが、失敗してくれる事を願うしかない。



 とうとう4月になった。学校に行きたくない!
 今日は、モンスター退治させられまくるだろう。
 絶対、一回ずつじゃ終わらない。

 「遅いぞ!」
 「もう、待ちくたびれたわ!」

 部室のドアを開けた途端、大場と二色さんがそう文句を言ってきた。
 見ればもう、ミーラさんも安達先輩もいた。
 集合時間の10分前に到着したというのに、何で文句を言われなきゃいけないんだ!!

 「ふふふ。じゃ~ん!」

 ミーラさんは、得意げに杖を出し皆に見せた!
 うん。変哲もない普通の杖。前にミーラさんが作った杖と同じ形。

 「おぉ!!」

 大場が興奮した声を上げた。

 「ごめんね。実はね、一つしか出来なかったの……。だから、この杖を使って最初にモンスターを出した人に差し上げます!!」
 「何!?」

 大場は、今度はミーラさんの言葉に、驚きの声を上げた。
 っは! このままだと取り合いが始まり、それこそ、ところ構わずにモンスターを出そうとするかも!

 「言っておくけど、建物内でモンスター出すの禁止! 無効だからな!」

 バシ!
 僕が言い終わるのが早いかぐらいで、杖をミーラさんの手から安達先輩が奪った!

 「え? ちょっと待てよ!」
 「年上なのだから、最初は下に譲るものでしょう!」

 驚いた大場達は言うも、安達先輩は部室を駆けだし出て行った!
 二人は、それを追いかける。
 僕も追いかけようとすると、「ダメ」とミーラさんが僕の前に立ちはだかった!

 「うふふ。大丈夫!」
 「何が大丈夫なの? 喧嘩になるかもよ!」

 もしかしたら最悪、血の争いになるかもしれない!
 って、誰かがモンスターを出すかもしれないから追いかけないと!

 「実は、全員分作ったの! あの杖は、私が前に作った杖だよ」
 「うん? 何でそんな嘘を?!」
 「だって、今日って嘘を言っていい日なんでしょう?」

 エイプリルフールを知っていたの!?
 誰が教えたんだー!!

 「嘘は考えて言わないと!! 言っていい嘘と悪い嘘があるだろうが!」
 「えぇ!? 本当は全員分あるよって言えば喜ぶって!」

 喜ぶかもしれないけど……それ、すぐに教えないと大変な事になる!
 僕も部室から出た。

 「審さん。一体何があったのだね? 追いかけられていたが……」
 「え!?」

 そう聞いてきたのは、教頭先生だ!
 職員室のすぐ隣に部室がある。騒げば直ぐにわかってしまうんだった。
 あぁ、もう、急いでいるのに!

 「えっと、あれです! 試験!」
 「え? それ、今日なのか?」

 取りあえず頷いて、僕は駆けだした。
 どこに行ったんだぁ!!
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