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第4章 姿を現した魔術師

第26話

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 リーフは、上空から辺りを見渡していた。

 「確かこの辺に……」

 仕事の時は、ボシェロ家のすぐ横の森で待機していたが、少女達がそんな所を探すとは思えない。
 普通に森の入り口から入って行くだろうと、一番近い入り口を探していた。

 「あった!」

 見つけるとリーフは、入り口の前に降り立った。

 「えっと、確か名前はナディアちゃんにネリーちゃんだっけ?」

 ブツブツと言いながら森の中へ入って行く。

 「ナディアちゃーん! 僕は、アージェさんの所で働いているリーフです! 探しに来ました。ナディアちゃーん!」

 呼びかけるも返事が無く、人影も見当たらない。森の入り口付近には、いなそうだ。
 森の中を飛んで探索を始める。浮いた方が見渡せるし、躓く事もない。
 森の探索もした事があり、リーフは木と木の間をすいすいと通り抜け進む。

 ガサッ。
 探索して十分程経った時、右斜め前方に人影が見えた。

 「ナディアちゃん? ネリーちゃん?」

 見ると少女が二人と毛が短い小さな白い犬が一匹、ブルブルと震えていた。
 目が合うと、二人は小さく頷いた。

 「良かった。僕は、アージェさんの所で働いているリーフです。ウリッセさんの依頼で探しに来ました」
 「パパの?」

 そう言ったのは肩より少し長い柳色の髪に瞳の少女。ウリッセの娘ナディアだ。
 リーフは、優しく微笑んで頷いた。
 そして、二人に近づきよく頑張りましたと、二人の頭をなでる。少女達は、安堵したのか泣き出した。

 「え! あ、大丈夫だから……」

 リーフがそう言うも泣き止みそうもなかった。
 仕方なくリーフは、二人の前に屈む。

 「可愛い犬だね」

 黒髪のツインテールを揺らし、犬を抱いていたネリーがうんと頷く。

 「一緒に旅をしているんだよ」
 「旅?」
 「うん。パパのお仕事は商人なの。だから、あちこち行くの」

 涙を拭いて、笑顔でネリーは答えた。

 (もしかして犬ってこの犬じゃ……)

 逃げた場所が偶然森で、ウリッセはもう一匹の犬の事は知らなかったのではないか。つまりリーフ達が、勘違いをしていただけだった。

 「この犬が迷子になって、森に入ったの? 怖くなかった?」

 二人は、顔を見合わせる。

 「違うよ。もう一匹の犬だよ。ここでいなくなったんだって……」
 「パパのお友達の紫の髪をした魔術師の犬なの」

 二人は、ねーっと言いながら話をするも、リーフの方は手に汗を握った。
 リーフ達は、間違ってなどいなかった!
 それどころか、イサルコとあの魔術師が繋がっているかも知れない事実を知ったのだ!
 そしてないとは思うが、自分は罠に嵌められたかもしれないと、リーフは辺りを見渡す。
 人の気配はない。誰もいなさそうだと安堵する。

 (早く森から出た方がいい)

 リーフは、立ち上がる。

 「さあ、森を出よう。怪我はないね」
 「うん。でも見てみたかったね。フワフワでエメラルドグリーンの目の犬」

 そうネリーが言った。

 「うん? ちょっと待って。その犬って君の家で預かっていたんじゃないの?」

 ネリーは、違うと首を横に振った。
 どういう事だろうかとリーフは考える。
 確かにイサルコは、預かった犬だと言っていた。だが実際は、預かってなどいなかった。
 リーフは、ハッとする。

 (ワザとボシェロ家に捕まえさせたとか?)

 目的はわからないが、アージェに依頼する為の工作。
 そしてもしヘリムのマスターが、本当はあの紫色の髪の魔術師だったとしたら?
 首につけてあったリボンは、ヘリムの意思で封印が解けるマジックアイテムだった。
 そうだとするとあの魔術師は、リーフと同じく王の目が届かなかった召喚師の末裔かもしれない!

 (僕とは、本当は契約などしていない……)

 アージェに捕まえてもらう事自体が目的だった。
 ゲージに入れられそうになった時逃げださなかった事から、もしかしたら騎士団の館に入るのが最終目的だった?!
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