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第三章 リュシオン王国
リュシオン王国
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ヴァルディア皇国は周辺諸国に支えられている。
魔術に長け、魔術師育成に一役買い、皇国内にもある魔術師ギルドを共同管理している隣国セランディア。そして、海洋国家で街道が集約する皇国に、海産資源を輸出で国家運営を担う国。それが、リュシオン王国だった。
土地柄もあり、山賊や海賊に対応するために、そういったことを専門に行う貴族が存在する。リュシオン王国からの系譜を引き継いでいた古い家系だったものの、流れる月日と共にその役目は変遷を繰り返していた。
「くっ! これまで、我々がどれほどの尽力をしたと思っている......」
カチャカチャと騎士甲冑を響かせながら、屋敷の廊下を歩く女騎士がひとり。屋敷に来襲した敵組織に苦戦していた。多くの歴戦を経てきたヴァリス家が、ここまで遅れを取ってしまうのにも理由があった。
『......何も、今ならずとも......』
『......くっ。言い訳か......』
山賊の討伐を終えて返ってきたアリアナのもとに現れたのは、屋敷が襲撃されたという皮肉な知らせだった。専用の秘密通路から屋敷へと入ることはできたものの、周囲はすでに王国騎士団が詰めかけていた。
窓から外を眺めれば、王国騎士の旗を掲げた騎士共が、屋敷を取り囲むようにして陣を築いていた。しかし、突入してくる様子はなく、膠着状態が続いている様子だった。
「まったく、何をしたいんだ」
「騎士団ともあろう部隊が、屋敷の前にたむろして......」
「とっとと、突入してくればいいだろう。その時は、我が丁重に追い返してみせる!」
王国の隠密部隊として、数多の組織を纏めてきたヴァリス家。その長でもあるアリアナは、王国騎士など、ひと捻りだと言わんばかりの豪傑のひとでもあった。しかし、こればかりは家名を背負っていることもあり、そういった暴挙に出ることはなかった。
それを良いことに、王国騎士は無血開門を要求してくる。それは、アリアナにとって受け入れがたい内容だった。
「アリアナ卿。貴官には国王襲撃の容疑がかかっている!」
「しかしながら、かねての王国貢献に鑑みて、領地買収をもって放免とする旨」
「国王様の沙汰が出ておる! おとなしく屋敷を手放し、即刻。国内から退去するならば...」
「......その咎は、追求しないものとする!!」
巻物を高らかに掲げながら宣誓をする使者に合わせて、周囲の何万もいる騎士団の士気も高く、今にも突入してきそうな圧迫感すら感じさせる。その多くが若い兵士で、騎士団になりたてのような新人が多くをしめていた。
「......ヴァリス家だろう? 落ちぶれた貴族風情が......」
「とっとと、屋敷と土地を受け渡しやがれ......」
「......静かにしろ!」
「はっ!」
窓からそこまで離れていない屋敷の外にある平原にたむろする、兵士たちを眺めながら腹立たしい気持ちに包まれるアリアナ。
貢献してきたことすら知らない若い兵士に狙われ、蒼影《そうえい》のヴァリスとまで呼ばれた彼女が受けていい仕打ちでもなかった。せめてもの救いだったのが、アリアナの両親や肉親が出払っていた事だった。唯一残っていたのは、妹のユリシアだった。
「お姉さま! 王国騎士団が......」
「あぁ、見ている」
「どうしましょう! ここには姉さまと私」
「そして、いくばかりかの私兵がいるだけです!」
長い髪を振り乱しながらも、アリアナを頼るユリシア。彼女も右腕として精一杯の働きをしていたものの、多勢に無勢。いくら私兵がいたとしても、何万もの兵士が相手では太刀打ちできない。それを知ってもなお、ユリシアは動くことはなかった。
それどころか、逃がそうとする姉の手を掴み、離すどころではなかった。がっしりと掴んだその手は、姉。アリアナを信用している証でもあった。
「......ユリシア。お前は......」
「姉さま!」
「姉さまを放おって置けません!」
「ユリシア、君に生きてほしいんだ」
「それは、姉さまもです。一緒に......」
膠着状態が続き、返事をすることのなかったアリアナ達の邸宅に騎士団が突入したのを皮切りとして、ユリシアと共に脱出することに成功する。しかし、追手が近づいていることに気づいたアリアナは、ユリシアと別れることになってしまった。
「姉さま!!」
「ユリシア! 必ず、お父様とお母様に......このことを......」
「はい! お姉さまも、必ず再会しましょ!!」
「あぁ、必ずだ!」
再会をかたく決意したアリアナとユリシアは、散り散りになってしまった。
『......蒼影のアリアナと呼ばれていた私が......』
『無様な最後ね......』
悲哀を込めたその言葉を残しながらも、妹を逃がすことだけで精一杯だった自分の力不足に歯を食いしばりながらも、リュシオン王国を後にすることになった。
そんなアリアナ・ヴァリスが名字を伏せ、ただのアリアナとして行動を始めたのは、隣国にある皇国繁華街最奥部にある、高級娼館を建てそこで資金と力をつけることだった。
--
そうして月日を経たアリアナは、数名の子分を従えるようになったものの、その男たちはごろつきばかりで、落ちぶれた近衛兵が可愛く見えるほどだった。
天蓋の付いた立派なベッドに玉座の椅子。さながら、ダンジョンの女ボスかのように、従えた男たちを見下ろす。そこには、夜の街エスカテリアを訪れた女、シェルヴィに良いようにやられた、ブラン・キール・ザックの三人が頭を下げていた。
「で? 良いようにやられたっていうことね?」
「アネキ。すみません!」
「すみません!!」
「さーせん!」
「ふーん」
この街に居を構えたアリアナは、かつての部下を近衛兵にし、新たな部隊を作ろうと画策し、男たちを支配下にする。ザック達もそのうちので、エスカテリアの治安を任せていた。
しかし、彼らがすることは治安こそ守られてはいるものの、広い意味での治安は二の次で、見知らぬ輩が来れば拳でわからせるという、基本的なことができずに頭を抱えてしまう。
『はぁぁ、あんた達は......』
アリアナもそれなりには腕が立ち、ブラン達を鍛えていたものの、その男たちを手駒にしてしまうほどということもあり、考えを巡らせる。
街で出会った女に、手痛くやられた子分たちが、申し訳なさそうに頭を垂れる。さりとて、夜の街を取り仕切るものとしては、しっかりと躾も重要になる。
「背中向けなさい......」
「......アニキ......」
「......いいから、向けて......!」
見下ろすように威圧する様子は、繁華街を取り仕切る女王のような雰囲気を醸し出し、男たちを従えていく。アリアナの方に背中を向けたあと、そこに向けて足を振り上げた後、男を踏みつける。
「ぐっ!!」
「......これくらい耐えなさい! 良いわね?」
「は、はいっ!!」
「アニキ......」
「ん? アンタも踏まれたいのかしら?」
「......アネキ。俺だけで......」
「ふーん。わかったわ......」
かつては隣国の女騎士として名を馳せていたアリアナは、今。身をやつしてまでエスカテリアで夜の街を取り仕切るボスとして君臨している。しかも、まがりなりにも鍛え上げた男三人をたやすくのした女。というのが信じられなかった。
ミスを犯したブランを足蹴にしながらも、明らかにアリアナより腕が達者なことを感じ取るほど、腹立たしい気持ちが踏みつける脚に込められる。
『いい気味ね、こんな子分たちすら、しっかり鍛えられないなんて......』
『とんだ皮肉ねっ!』
「ふんっ!」
「ぐはっ!」
「アニキ!」
「お、俺は、良い......」
ブラン達の他にも子分を従えてはいたものの、ブランを含めた三人をメインとして従えていた。都合が良く、アリアナに従順だった。そんなブラン達が、こう手玉に取られれば腹の虫も収まらない。
「で、どんな女だったの?」
「お、俺の不手際で......」
「それは、知ってるわ。知ってるけど......」
おもむろに脚をどけたアリアナ。その様子に安堵したブランだったが、ホッとしたのもつかの間。後ろから威圧たっぷりで耳元でささやく。
「その割に、あんたはもちろんのこと...」
「たちから、女の匂いがするのだけど......」
「それは、どういうことかな?」
「......教えてくれる?」
「そ、それは......」
渋るように口ごもったブランの様子に、腹をたてると。もう一度立ち上がって背中を踏みつける。しかも、ヒールでブランの尻を踏みつけるため、ヒールのピン部分が絶妙にブランの尻を捉える。
ただでさえ、最初の踏みつけで背中に跡が残っているなかで、今度は尻という。
“ぎゅっ!”
「ふぐっ! はぁっ!!」
「い・い・な・さ・い。言うのよ! 言わないという選択はないわ」
「は、はい!」
足蹴にされながらも男は説明を始める。
黒髪で赤い瞳を持つ踊り子のような姿。それでいて、腕も立ち男三人を相手にして余裕の素振りを見せたとのことを、すべて報告する。
「ふーん......」
考え事をするようにして、ようやく足蹴にしていた脚を離すと、踏んでいた尻に跡が残るほどだった。
『男を相手にして......?』
『どんな女? 黒髪赤目......?』
『わからないことだらけ......』
こつこつとヒールの音を響かせながらも、壇上へと上がっていくと玉座に腰を下ろすアリアナ。そこに、男が更に報告をする。
「それで、アネキの名を。申し訳ねえっす!!」
「すみません!!」
「はぁ? 言ったのね」
『......動きにくくなるけど』
改めて頭を下げる子分たちだったが、アリアナから帰ってきたのは、意外な言葉だった。
「......そう」
「あ、アネキ?」
「いいんっすか? アネキの名前を......」
「良いわよ?」
「マジっすか?!」
「だって、いずれ。私が相手にすることになるでしょうから......」
澄んだ青い瞳が月明かりに照らされて妖しく光りながら、男たちを見下ろすその姿は、未だ決意を感じさせるように輝いていた。
魔術に長け、魔術師育成に一役買い、皇国内にもある魔術師ギルドを共同管理している隣国セランディア。そして、海洋国家で街道が集約する皇国に、海産資源を輸出で国家運営を担う国。それが、リュシオン王国だった。
土地柄もあり、山賊や海賊に対応するために、そういったことを専門に行う貴族が存在する。リュシオン王国からの系譜を引き継いでいた古い家系だったものの、流れる月日と共にその役目は変遷を繰り返していた。
「くっ! これまで、我々がどれほどの尽力をしたと思っている......」
カチャカチャと騎士甲冑を響かせながら、屋敷の廊下を歩く女騎士がひとり。屋敷に来襲した敵組織に苦戦していた。多くの歴戦を経てきたヴァリス家が、ここまで遅れを取ってしまうのにも理由があった。
『......何も、今ならずとも......』
『......くっ。言い訳か......』
山賊の討伐を終えて返ってきたアリアナのもとに現れたのは、屋敷が襲撃されたという皮肉な知らせだった。専用の秘密通路から屋敷へと入ることはできたものの、周囲はすでに王国騎士団が詰めかけていた。
窓から外を眺めれば、王国騎士の旗を掲げた騎士共が、屋敷を取り囲むようにして陣を築いていた。しかし、突入してくる様子はなく、膠着状態が続いている様子だった。
「まったく、何をしたいんだ」
「騎士団ともあろう部隊が、屋敷の前にたむろして......」
「とっとと、突入してくればいいだろう。その時は、我が丁重に追い返してみせる!」
王国の隠密部隊として、数多の組織を纏めてきたヴァリス家。その長でもあるアリアナは、王国騎士など、ひと捻りだと言わんばかりの豪傑のひとでもあった。しかし、こればかりは家名を背負っていることもあり、そういった暴挙に出ることはなかった。
それを良いことに、王国騎士は無血開門を要求してくる。それは、アリアナにとって受け入れがたい内容だった。
「アリアナ卿。貴官には国王襲撃の容疑がかかっている!」
「しかしながら、かねての王国貢献に鑑みて、領地買収をもって放免とする旨」
「国王様の沙汰が出ておる! おとなしく屋敷を手放し、即刻。国内から退去するならば...」
「......その咎は、追求しないものとする!!」
巻物を高らかに掲げながら宣誓をする使者に合わせて、周囲の何万もいる騎士団の士気も高く、今にも突入してきそうな圧迫感すら感じさせる。その多くが若い兵士で、騎士団になりたてのような新人が多くをしめていた。
「......ヴァリス家だろう? 落ちぶれた貴族風情が......」
「とっとと、屋敷と土地を受け渡しやがれ......」
「......静かにしろ!」
「はっ!」
窓からそこまで離れていない屋敷の外にある平原にたむろする、兵士たちを眺めながら腹立たしい気持ちに包まれるアリアナ。
貢献してきたことすら知らない若い兵士に狙われ、蒼影《そうえい》のヴァリスとまで呼ばれた彼女が受けていい仕打ちでもなかった。せめてもの救いだったのが、アリアナの両親や肉親が出払っていた事だった。唯一残っていたのは、妹のユリシアだった。
「お姉さま! 王国騎士団が......」
「あぁ、見ている」
「どうしましょう! ここには姉さまと私」
「そして、いくばかりかの私兵がいるだけです!」
長い髪を振り乱しながらも、アリアナを頼るユリシア。彼女も右腕として精一杯の働きをしていたものの、多勢に無勢。いくら私兵がいたとしても、何万もの兵士が相手では太刀打ちできない。それを知ってもなお、ユリシアは動くことはなかった。
それどころか、逃がそうとする姉の手を掴み、離すどころではなかった。がっしりと掴んだその手は、姉。アリアナを信用している証でもあった。
「......ユリシア。お前は......」
「姉さま!」
「姉さまを放おって置けません!」
「ユリシア、君に生きてほしいんだ」
「それは、姉さまもです。一緒に......」
膠着状態が続き、返事をすることのなかったアリアナ達の邸宅に騎士団が突入したのを皮切りとして、ユリシアと共に脱出することに成功する。しかし、追手が近づいていることに気づいたアリアナは、ユリシアと別れることになってしまった。
「姉さま!!」
「ユリシア! 必ず、お父様とお母様に......このことを......」
「はい! お姉さまも、必ず再会しましょ!!」
「あぁ、必ずだ!」
再会をかたく決意したアリアナとユリシアは、散り散りになってしまった。
『......蒼影のアリアナと呼ばれていた私が......』
『無様な最後ね......』
悲哀を込めたその言葉を残しながらも、妹を逃がすことだけで精一杯だった自分の力不足に歯を食いしばりながらも、リュシオン王国を後にすることになった。
そんなアリアナ・ヴァリスが名字を伏せ、ただのアリアナとして行動を始めたのは、隣国にある皇国繁華街最奥部にある、高級娼館を建てそこで資金と力をつけることだった。
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そうして月日を経たアリアナは、数名の子分を従えるようになったものの、その男たちはごろつきばかりで、落ちぶれた近衛兵が可愛く見えるほどだった。
天蓋の付いた立派なベッドに玉座の椅子。さながら、ダンジョンの女ボスかのように、従えた男たちを見下ろす。そこには、夜の街エスカテリアを訪れた女、シェルヴィに良いようにやられた、ブラン・キール・ザックの三人が頭を下げていた。
「で? 良いようにやられたっていうことね?」
「アネキ。すみません!」
「すみません!!」
「さーせん!」
「ふーん」
この街に居を構えたアリアナは、かつての部下を近衛兵にし、新たな部隊を作ろうと画策し、男たちを支配下にする。ザック達もそのうちので、エスカテリアの治安を任せていた。
しかし、彼らがすることは治安こそ守られてはいるものの、広い意味での治安は二の次で、見知らぬ輩が来れば拳でわからせるという、基本的なことができずに頭を抱えてしまう。
『はぁぁ、あんた達は......』
アリアナもそれなりには腕が立ち、ブラン達を鍛えていたものの、その男たちを手駒にしてしまうほどということもあり、考えを巡らせる。
街で出会った女に、手痛くやられた子分たちが、申し訳なさそうに頭を垂れる。さりとて、夜の街を取り仕切るものとしては、しっかりと躾も重要になる。
「背中向けなさい......」
「......アニキ......」
「......いいから、向けて......!」
見下ろすように威圧する様子は、繁華街を取り仕切る女王のような雰囲気を醸し出し、男たちを従えていく。アリアナの方に背中を向けたあと、そこに向けて足を振り上げた後、男を踏みつける。
「ぐっ!!」
「......これくらい耐えなさい! 良いわね?」
「は、はいっ!!」
「アニキ......」
「ん? アンタも踏まれたいのかしら?」
「......アネキ。俺だけで......」
「ふーん。わかったわ......」
かつては隣国の女騎士として名を馳せていたアリアナは、今。身をやつしてまでエスカテリアで夜の街を取り仕切るボスとして君臨している。しかも、まがりなりにも鍛え上げた男三人をたやすくのした女。というのが信じられなかった。
ミスを犯したブランを足蹴にしながらも、明らかにアリアナより腕が達者なことを感じ取るほど、腹立たしい気持ちが踏みつける脚に込められる。
『いい気味ね、こんな子分たちすら、しっかり鍛えられないなんて......』
『とんだ皮肉ねっ!』
「ふんっ!」
「ぐはっ!」
「アニキ!」
「お、俺は、良い......」
ブラン達の他にも子分を従えてはいたものの、ブランを含めた三人をメインとして従えていた。都合が良く、アリアナに従順だった。そんなブラン達が、こう手玉に取られれば腹の虫も収まらない。
「で、どんな女だったの?」
「お、俺の不手際で......」
「それは、知ってるわ。知ってるけど......」
おもむろに脚をどけたアリアナ。その様子に安堵したブランだったが、ホッとしたのもつかの間。後ろから威圧たっぷりで耳元でささやく。
「その割に、あんたはもちろんのこと...」
「たちから、女の匂いがするのだけど......」
「それは、どういうことかな?」
「......教えてくれる?」
「そ、それは......」
渋るように口ごもったブランの様子に、腹をたてると。もう一度立ち上がって背中を踏みつける。しかも、ヒールでブランの尻を踏みつけるため、ヒールのピン部分が絶妙にブランの尻を捉える。
ただでさえ、最初の踏みつけで背中に跡が残っているなかで、今度は尻という。
“ぎゅっ!”
「ふぐっ! はぁっ!!」
「い・い・な・さ・い。言うのよ! 言わないという選択はないわ」
「は、はい!」
足蹴にされながらも男は説明を始める。
黒髪で赤い瞳を持つ踊り子のような姿。それでいて、腕も立ち男三人を相手にして余裕の素振りを見せたとのことを、すべて報告する。
「ふーん......」
考え事をするようにして、ようやく足蹴にしていた脚を離すと、踏んでいた尻に跡が残るほどだった。
『男を相手にして......?』
『どんな女? 黒髪赤目......?』
『わからないことだらけ......』
こつこつとヒールの音を響かせながらも、壇上へと上がっていくと玉座に腰を下ろすアリアナ。そこに、男が更に報告をする。
「それで、アネキの名を。申し訳ねえっす!!」
「すみません!!」
「はぁ? 言ったのね」
『......動きにくくなるけど』
改めて頭を下げる子分たちだったが、アリアナから帰ってきたのは、意外な言葉だった。
「......そう」
「あ、アネキ?」
「いいんっすか? アネキの名前を......」
「良いわよ?」
「マジっすか?!」
「だって、いずれ。私が相手にすることになるでしょうから......」
澄んだ青い瞳が月明かりに照らされて妖しく光りながら、男たちを見下ろすその姿は、未だ決意を感じさせるように輝いていた。
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