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第二章 女の体
女の武器としなやかな体
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密集するように立ち並ぶ繁華街の狭い路地。左右は建物の壁に阻まれ、前には大きな男と後には男の子分であろう輩が、踵を返そうとするシェルヴィの退路を塞ぐ。前にも後ろにもいけない状況になりピンチだった。
夜の街にふさわしいそのドレスは、多少なりともレヴィンの内包するマナを使って改良できるものの、むしろその改良が男たちの高貴な視線を吸い寄せることになってしまう。
『うへぇ......男の視線て、こんな感じなのか......』
《わかった? 女の気持ち......》
『あぁ、視線に気をつけるよ......』
輩たちの舐め回すような視線が、肌を覆うドレスや露わになる肌に注がれ、突き刺すような視線を感じてしまう。
まるで、直接撫でられているような錯覚すら覚えるほどの、嫌悪感を感じてしまった。とはいえ、レヴィンの主目的は、夜の街の調査。こんな最初からつまずくわけにはいかない。
「譲ちゃん。皇都におでかけかい? 夜の街にひとりなんて不用心だねぇ~」
「そうですね~」
「俺らが護衛してやろうか?」
「この状況でですかぁ? むしろ、襲われそうです......」
向かい側に立つ男は細身のシェルヴィより頭一つ大きく、並の乙女ならその力に押されて負けてしまいそうなほどの体格差がある。その一方で、後ろに控えている男達もそれなりに大きく、華奢な体では用意に負けてしまいそうなほど。
それでも、シェルヴィは甘えるような口ぶりで、立ちはだかる男を挑発するようにして覗き込んでいく。まるで皇都に来たのが初めてで、男を知らない乙女のように振る舞う。それは飢えた獣のような男たちの釣り糸に、見事にヒットしたようだった。
「そいつはどうかなぁ?」
「え~。たしか、この辺の人に聞けば、夜の街で有名になれるって聞いたんだけどぉ」
「ほぅっ。そうかい......?」
もったいぶるように皇都で有名になることを目指した、都会を知らない田舎娘のような振る舞いをする。皇都で職を探すのなら、ギルドや騎士団。魔術が使えるのなら、魔術師の弟子にでもなればいい。
しかし、そこにはいかずに、夜の街に来て有名になろうと言うのだから、おおよそそれらのスキルが無いか、それすら発達していない田舎者かスラム街育ちくらいだった。その中でも、肩を大胆にさらけ出し、夜の街に相応しいような一張羅を着ている。
フリフリとした黒髪と宝石のように紅い瞳は、見ただけでも上玉であることが、男たちにもしっかりと伝わる。まして、紺色のドレスに深く入るスリットは、柔らかな太ももやしなやかな脚が垣間見えるため、視線を釘付けにする。
“ごくり”
『こいつは、上玉だ』
『魔術も使えねぇ田舎モンが、皇都に夢見て一花咲かせよってか?』
『その服だって、親か貯金崩して作った一張羅だろ?』
『田舎はどうかわかんねえが、ここは皇都だ』
品定めをするようにシェルヴィのしなやかで柔らかな体を、舐め回すようにして上から下まで見回す。下着の紐までもがちらりと見えれば、夜の街には適した姿だった。大胆にさらけ出される肩と、整った鎖骨。決めの細かい柔肌は、育ちの良さと世間知らずが奇妙に同居し、男の視線を釘付けにする。
『うへぇ。やっぱり、きもちわりぃ......』
『いや、でも、ここで口に出したらアウトだしなぁ......』
《時々思うのだけど、レヴィン》
『ん?』
《......生まれる時、余計なものを付けた?》
『な、何を言う。俺は男だよ? 今は女だけど......』
《まぁ、そうしておくわ》
そんなやりとりをしながらも、男たちの品定めをするような卑しい眼差しを堪えながらも、考えを巡らせる。
『......うーん。まぁ、後でひらめくだろう......』
レヴィンがシェルヴィと名付けたから、レヴィンがシェルヴィを操作している時も、シェルヴィと名乗るものの、人格としてのシェルヴィも存在するため、別の呼び方を考える。そんな考えを巡らせている姿が、男たちには隙きを見せているように捉えれたようで、男の手が伸びてくる。
《男の手が来るわ!》
『分かった......』
シェルヴィの人格部分が、危険を感じ取ってレヴィンに伝える。それを皮切りに、風に揺れる布のように、ゆらりとからだを揺らす。
すると、差し伸べられた男の手が、空をつくようにして、シェルヴィの二の腕を捉えそこねる。
「ん? おいおい、逃げんのか?」
「いきなり掴まれるのは、ちょっと~」
「そんなこと言うなよ~」
「でも~」
そう言いながら、ひょいひょいと男の手を交わすシェルヴィ。
レヴィンもシェルヴィの体越しに伝わる男たちの動きから、近づいていることは感じていた。そのうえ、もうひとりの人格が補佐するように知らせてくれる。
そのことを示すようにして、向かい合っていた男がシェルヴィの胸を触れようと手を伸ばす。
「そいつはどうかな? まずは、品定めをしねぇとな?」
「どんな声で泣いてくれるんだ?」
「良い声で泣いてくれるんだろうな?」
目尻がデレッと落ち、胸に触れることだけを考える男。そのいやらしすぎる男に、シェルヴィの体をたやすく触れさせるわけにはいかなかった。
“ひょい......”
「んぅ?」
「どうしたんだぁ? 怖くなっちまったのか?」
「えぇっ? こまりますぅ......」
月明かりが差し込む路地で、ゆらりと揺れ動くシェルヴィの様子を捉えきれない男たちも、業を煮やし始める。
「おいおい、どうしたんだ? 夜の街で有名になるんだろう?」
「そうだけどぉ」
その間もひょいひょいと交わすシェルヴィ。その様子は踊り子のように交わす。次第に、シェルヴィが身につけた香水が周囲に広がり、興奮した男たちの鼻腔をくすぐれば、さらに男たちの情動お駆り立てる。
しかし、それすらもシェルヴィの手の内で、欲求のままに繰り出されるまっすぐすぎる動きは、容易に読みやすく交わしやすい。聖騎士のスキルを使わずとも、体術として身につけたものだった。
『おい、この譲ちゃん。ほんとうに田舎モンか?』
『あぁ、どこかのお嬢様じゃね?』
『でも、待てよ? どこかのお嬢様だったとしてだ』
『俺ら、それをつかまえたとなりゃ!』
『そうだな!』
田舎育ちの世間知らずのお嬢ちゃん。と高をくくっていた男たちの中で、シェルヴィの階級が上がる様子が、男たちの本気度として伝わってくる。先程までのお遊び感とは違い、シェルヴィを捕まえる気満々の動きに、流石に後手に周りはじめる。
「っと......」
『これは......』
《ピンチね......》
《どうするの?》
『あぁ、こうする』
そういうと、後ろから来た男たちの手を、またしてもヒョイッと交わすと、その反動をりようして、しなやかな脚を跳ね上げて男たちの首筋にクリーンヒットする。踊るようにして体をひるがえしたシェルヴィのしなやかな体は、明らかに村娘とは思えない身のこなし。
防戦一方では、押し切られると思い、しなやかな体を活かしてムチのように男に向かって蹴りを繰り出す。回し蹴りのように繰り出されたその脚は、男に掴まれてしまった。
「おいおい、とんだやんちゃな譲ちゃんだな」
跳ね上げた脚をガッチリと掴まれてしまったため、スリットからでた桃色の肌が月明かりに照らされ、スカートがめくれ上がってしまう。白い紐と大事な部分を覆う部分が見えてしまいそうになるのをぐっと抑える。
「やん......♡」
『こいつは、中身も上玉だな......』
男の視線が脚に吸い寄せられる様子を感じて、あえてそれを利用する方法を考えつく。それは、男の考えるお嬢様とは訳が違った。
男が捕まえている脚を支店にして、男の肩に乗るようにして、男の頭を正面から抱きしめてしまう。股で挟み込むような体制に、男の体はよろめくがなんとか立ち続ける。
「おいおい。とんだ破廉恥な譲ちゃんだな!」
「もぅ、脚を捕まえるから......」
「当たり前だろ? あんたの蹴りを防ぐくらい造作もないさ」
「あら、たくましいのね」
「で、どうするよ? 譲ちゃん。圧倒的に不利だぜ」
「俺に捕まっちまったからな!」
確かに男の言うとおりに、肩に担がれるようにして太ももで挟んだものの、むしろその状況が不利にさせる。ただ、それが“本当の意味で不利”になるかと言われると、嘘だった。
「そのまま抑えてろ、良いな!」
「そうっすよ。その女、めっちゃ良い香水つけてるっす!」
「あぁ、離すかよ。こんな上玉! めったにお目にかかれねぇ!」
シェルヴィの両足をがっちりと掴んだ男は、しなやかな太腿に挟まれながらもしっかりと指示を出していく。
《どうするの?》
『あぁ、作戦がある......こういう時は、急所がでるからな』
《えっ?》
背格好がおおよそシェルヴィの体と似ていた男を抱えることになっていたこともあり、それは、シェルヴィにも都合が良い。
「あら、大変......」
「そのままおとなしくしてろよ?」
「ふふ。それはどうかしら......」
そういうと、内腿に力を入れる。すると、男はがっしりと挟まれてきつそうだが、まだ余裕がありそうだ。そんな中でシェルヴィは上半身をふっ。と後ろに倒す。バランスが崩れた男は、シェルヴィを支えようと背筋を反らせる。それが目的だった。
大きく弧を描くようにして倒れ込んだシェルヴィの体を支えようとした男の体は、弓なりに反り返る。すると、股間が前に突き出されると、その後頭部。ちょうどシェルヴィの匂いに興奮した男のイチモツをシェルヴィの後頭部が、絶妙な位置でヒットし更にグリッと押し込まれた。
「んんんんっ!!」
「はぁぁっ!!」
股間を後頭部が捉え、金的を受けた男の脳裏にバラ色の光景が広がる。ゾワッとした快楽が体を駆け上がると、抑えていた手が緩む。これがシェルヴィの目的だった。
それを利用するように、倒立をする。そして、しゅるりと体をくねらせた脚で、もうひとりを卒倒させてしまった。
「んしょっ......」
とんっ。とまるで踊っているかのように鮮やかな立ち振舞いをするその様子に、とてつもないものを相手にしていることを実感する男。ぱっぱと、布地を整える様は、並のお嬢ちゃんだと思っていたのが嘘のようだった。
『......何が、田舎娘だ......とんだくわせもんじゃねぇか!!』
『あれだけ男を相手してて、息も上がってねぇだと!?』
『こいつ、姉御かそれ以上にやべぇ......』
男の驚きを証明するかのように、シェルヴィの後ろには男がふたり卒倒して気を失っているのだから、ただものではない。
かと言って、男はこれほどの上玉を見つけておいて、おめおめと帰るわけにはいかなかった。そのため、是が非でもシェルヴィを捉える必要にかられてしまった。
『おめおめと、帰れっかよ!』
『こんな、上玉が目の前に転がってんだ』
『絶対、手に入れてやる!』
ゆったりと乱れた髪をなでて整える横顔は、月明かりに輝く黒髪と炎のような憂いを帯びた瞳は、男たちが姉御としたうボスかそれ以上のきらめきを持っていた。
『......これで、教えてくれると良いんだけどなぁ......』
《まぁ、無理よね......》
『だよなぁ......』
明らかに情報を聞き出すだけのつもりが、完全に倒してしまうという状況に、悶々としてしまったのだった。
夜の街にふさわしいそのドレスは、多少なりともレヴィンの内包するマナを使って改良できるものの、むしろその改良が男たちの高貴な視線を吸い寄せることになってしまう。
『うへぇ......男の視線て、こんな感じなのか......』
《わかった? 女の気持ち......》
『あぁ、視線に気をつけるよ......』
輩たちの舐め回すような視線が、肌を覆うドレスや露わになる肌に注がれ、突き刺すような視線を感じてしまう。
まるで、直接撫でられているような錯覚すら覚えるほどの、嫌悪感を感じてしまった。とはいえ、レヴィンの主目的は、夜の街の調査。こんな最初からつまずくわけにはいかない。
「譲ちゃん。皇都におでかけかい? 夜の街にひとりなんて不用心だねぇ~」
「そうですね~」
「俺らが護衛してやろうか?」
「この状況でですかぁ? むしろ、襲われそうです......」
向かい側に立つ男は細身のシェルヴィより頭一つ大きく、並の乙女ならその力に押されて負けてしまいそうなほどの体格差がある。その一方で、後ろに控えている男達もそれなりに大きく、華奢な体では用意に負けてしまいそうなほど。
それでも、シェルヴィは甘えるような口ぶりで、立ちはだかる男を挑発するようにして覗き込んでいく。まるで皇都に来たのが初めてで、男を知らない乙女のように振る舞う。それは飢えた獣のような男たちの釣り糸に、見事にヒットしたようだった。
「そいつはどうかなぁ?」
「え~。たしか、この辺の人に聞けば、夜の街で有名になれるって聞いたんだけどぉ」
「ほぅっ。そうかい......?」
もったいぶるように皇都で有名になることを目指した、都会を知らない田舎娘のような振る舞いをする。皇都で職を探すのなら、ギルドや騎士団。魔術が使えるのなら、魔術師の弟子にでもなればいい。
しかし、そこにはいかずに、夜の街に来て有名になろうと言うのだから、おおよそそれらのスキルが無いか、それすら発達していない田舎者かスラム街育ちくらいだった。その中でも、肩を大胆にさらけ出し、夜の街に相応しいような一張羅を着ている。
フリフリとした黒髪と宝石のように紅い瞳は、見ただけでも上玉であることが、男たちにもしっかりと伝わる。まして、紺色のドレスに深く入るスリットは、柔らかな太ももやしなやかな脚が垣間見えるため、視線を釘付けにする。
“ごくり”
『こいつは、上玉だ』
『魔術も使えねぇ田舎モンが、皇都に夢見て一花咲かせよってか?』
『その服だって、親か貯金崩して作った一張羅だろ?』
『田舎はどうかわかんねえが、ここは皇都だ』
品定めをするようにシェルヴィのしなやかで柔らかな体を、舐め回すようにして上から下まで見回す。下着の紐までもがちらりと見えれば、夜の街には適した姿だった。大胆にさらけ出される肩と、整った鎖骨。決めの細かい柔肌は、育ちの良さと世間知らずが奇妙に同居し、男の視線を釘付けにする。
『うへぇ。やっぱり、きもちわりぃ......』
『いや、でも、ここで口に出したらアウトだしなぁ......』
《時々思うのだけど、レヴィン》
『ん?』
《......生まれる時、余計なものを付けた?》
『な、何を言う。俺は男だよ? 今は女だけど......』
《まぁ、そうしておくわ》
そんなやりとりをしながらも、男たちの品定めをするような卑しい眼差しを堪えながらも、考えを巡らせる。
『......うーん。まぁ、後でひらめくだろう......』
レヴィンがシェルヴィと名付けたから、レヴィンがシェルヴィを操作している時も、シェルヴィと名乗るものの、人格としてのシェルヴィも存在するため、別の呼び方を考える。そんな考えを巡らせている姿が、男たちには隙きを見せているように捉えれたようで、男の手が伸びてくる。
《男の手が来るわ!》
『分かった......』
シェルヴィの人格部分が、危険を感じ取ってレヴィンに伝える。それを皮切りに、風に揺れる布のように、ゆらりとからだを揺らす。
すると、差し伸べられた男の手が、空をつくようにして、シェルヴィの二の腕を捉えそこねる。
「ん? おいおい、逃げんのか?」
「いきなり掴まれるのは、ちょっと~」
「そんなこと言うなよ~」
「でも~」
そう言いながら、ひょいひょいと男の手を交わすシェルヴィ。
レヴィンもシェルヴィの体越しに伝わる男たちの動きから、近づいていることは感じていた。そのうえ、もうひとりの人格が補佐するように知らせてくれる。
そのことを示すようにして、向かい合っていた男がシェルヴィの胸を触れようと手を伸ばす。
「そいつはどうかな? まずは、品定めをしねぇとな?」
「どんな声で泣いてくれるんだ?」
「良い声で泣いてくれるんだろうな?」
目尻がデレッと落ち、胸に触れることだけを考える男。そのいやらしすぎる男に、シェルヴィの体をたやすく触れさせるわけにはいかなかった。
“ひょい......”
「んぅ?」
「どうしたんだぁ? 怖くなっちまったのか?」
「えぇっ? こまりますぅ......」
月明かりが差し込む路地で、ゆらりと揺れ動くシェルヴィの様子を捉えきれない男たちも、業を煮やし始める。
「おいおい、どうしたんだ? 夜の街で有名になるんだろう?」
「そうだけどぉ」
その間もひょいひょいと交わすシェルヴィ。その様子は踊り子のように交わす。次第に、シェルヴィが身につけた香水が周囲に広がり、興奮した男たちの鼻腔をくすぐれば、さらに男たちの情動お駆り立てる。
しかし、それすらもシェルヴィの手の内で、欲求のままに繰り出されるまっすぐすぎる動きは、容易に読みやすく交わしやすい。聖騎士のスキルを使わずとも、体術として身につけたものだった。
『おい、この譲ちゃん。ほんとうに田舎モンか?』
『あぁ、どこかのお嬢様じゃね?』
『でも、待てよ? どこかのお嬢様だったとしてだ』
『俺ら、それをつかまえたとなりゃ!』
『そうだな!』
田舎育ちの世間知らずのお嬢ちゃん。と高をくくっていた男たちの中で、シェルヴィの階級が上がる様子が、男たちの本気度として伝わってくる。先程までのお遊び感とは違い、シェルヴィを捕まえる気満々の動きに、流石に後手に周りはじめる。
「っと......」
『これは......』
《ピンチね......》
《どうするの?》
『あぁ、こうする』
そういうと、後ろから来た男たちの手を、またしてもヒョイッと交わすと、その反動をりようして、しなやかな脚を跳ね上げて男たちの首筋にクリーンヒットする。踊るようにして体をひるがえしたシェルヴィのしなやかな体は、明らかに村娘とは思えない身のこなし。
防戦一方では、押し切られると思い、しなやかな体を活かしてムチのように男に向かって蹴りを繰り出す。回し蹴りのように繰り出されたその脚は、男に掴まれてしまった。
「おいおい、とんだやんちゃな譲ちゃんだな」
跳ね上げた脚をガッチリと掴まれてしまったため、スリットからでた桃色の肌が月明かりに照らされ、スカートがめくれ上がってしまう。白い紐と大事な部分を覆う部分が見えてしまいそうになるのをぐっと抑える。
「やん......♡」
『こいつは、中身も上玉だな......』
男の視線が脚に吸い寄せられる様子を感じて、あえてそれを利用する方法を考えつく。それは、男の考えるお嬢様とは訳が違った。
男が捕まえている脚を支店にして、男の肩に乗るようにして、男の頭を正面から抱きしめてしまう。股で挟み込むような体制に、男の体はよろめくがなんとか立ち続ける。
「おいおい。とんだ破廉恥な譲ちゃんだな!」
「もぅ、脚を捕まえるから......」
「当たり前だろ? あんたの蹴りを防ぐくらい造作もないさ」
「あら、たくましいのね」
「で、どうするよ? 譲ちゃん。圧倒的に不利だぜ」
「俺に捕まっちまったからな!」
確かに男の言うとおりに、肩に担がれるようにして太ももで挟んだものの、むしろその状況が不利にさせる。ただ、それが“本当の意味で不利”になるかと言われると、嘘だった。
「そのまま抑えてろ、良いな!」
「そうっすよ。その女、めっちゃ良い香水つけてるっす!」
「あぁ、離すかよ。こんな上玉! めったにお目にかかれねぇ!」
シェルヴィの両足をがっちりと掴んだ男は、しなやかな太腿に挟まれながらもしっかりと指示を出していく。
《どうするの?》
『あぁ、作戦がある......こういう時は、急所がでるからな』
《えっ?》
背格好がおおよそシェルヴィの体と似ていた男を抱えることになっていたこともあり、それは、シェルヴィにも都合が良い。
「あら、大変......」
「そのままおとなしくしてろよ?」
「ふふ。それはどうかしら......」
そういうと、内腿に力を入れる。すると、男はがっしりと挟まれてきつそうだが、まだ余裕がありそうだ。そんな中でシェルヴィは上半身をふっ。と後ろに倒す。バランスが崩れた男は、シェルヴィを支えようと背筋を反らせる。それが目的だった。
大きく弧を描くようにして倒れ込んだシェルヴィの体を支えようとした男の体は、弓なりに反り返る。すると、股間が前に突き出されると、その後頭部。ちょうどシェルヴィの匂いに興奮した男のイチモツをシェルヴィの後頭部が、絶妙な位置でヒットし更にグリッと押し込まれた。
「んんんんっ!!」
「はぁぁっ!!」
股間を後頭部が捉え、金的を受けた男の脳裏にバラ色の光景が広がる。ゾワッとした快楽が体を駆け上がると、抑えていた手が緩む。これがシェルヴィの目的だった。
それを利用するように、倒立をする。そして、しゅるりと体をくねらせた脚で、もうひとりを卒倒させてしまった。
「んしょっ......」
とんっ。とまるで踊っているかのように鮮やかな立ち振舞いをするその様子に、とてつもないものを相手にしていることを実感する男。ぱっぱと、布地を整える様は、並のお嬢ちゃんだと思っていたのが嘘のようだった。
『......何が、田舎娘だ......とんだくわせもんじゃねぇか!!』
『あれだけ男を相手してて、息も上がってねぇだと!?』
『こいつ、姉御かそれ以上にやべぇ......』
男の驚きを証明するかのように、シェルヴィの後ろには男がふたり卒倒して気を失っているのだから、ただものではない。
かと言って、男はこれほどの上玉を見つけておいて、おめおめと帰るわけにはいかなかった。そのため、是が非でもシェルヴィを捉える必要にかられてしまった。
『おめおめと、帰れっかよ!』
『こんな、上玉が目の前に転がってんだ』
『絶対、手に入れてやる!』
ゆったりと乱れた髪をなでて整える横顔は、月明かりに輝く黒髪と炎のような憂いを帯びた瞳は、男たちが姉御としたうボスかそれ以上のきらめきを持っていた。
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