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第1話 出会い
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お腹が鳴ったので、僕は本を閉じた。
お母さんが作ってくれたサンドイッチを取りに、キッチンへ向かう。
母子家庭のため、お母さんはいつも働きに出ていてあまり顔を合わせることがない。
それでも、お母さんはいつも僕のご飯を作ってくれている。
以前僕はお母さんに、どうして毎日ご飯を手作りしてくれるのか聞いたことがある。
「お母さんは一英に元気でいてほしいから、どんなに忙しくても愛情を込めてご飯を作っているのよ。」
お母さんはそう言っていた。
僕のことを大切に想ってくれるお母さんのことが、僕は大好きだ。
兄弟がいなくても、お父さんがいなくても、学校に行けなくても、友達がいなくても、僕は幸せだ。
明日は母の日。
お母さんは、事故に遭ってほしくないからと、僕が1人で外に出るのを嫌がっているが、母の日にプレゼントをあげたらお母さんはきっと喜んでくれるだろう。
そう思って僕はカーネーションを買いに行くことにした。
家にはスマートフォンもテレビもなく、花がどのくらいの値段なのかわからないので、とりあえずお母さんからもらった少しのお小遣いをポケットに入れていくことにした。
サンドイッチを食べ終え、久しぶりに玄関のドアを開けた。
だいぶ暖かくなってきたものの、半そでではまだ肌寒かった。
今にも雨が降り出しそうな空の色だったので、僕は早足で花屋さんへ向かった。
小さな花屋さんに着くと、嗅ぎ慣れない花の匂いが混ざって少し後ずさりした。
人の気配がしない店内の様子を入口からしばらく控えめに覗いていたが、意を決して店内に足を踏み入れた。
BGMもなく閑散としてはいるものの、色とりどりの綺麗な花に目が眩んだ。
母の日、という文字と共に目立つ場所に置かれたカーネーションの中から、色が良さそうなものを数本選び、どれにしようか迷っていると後ろから声をかけられた。
「あれ、お客さん?」
突然のことに驚いて振り向くと、そこには少年が立っていた。
僕の1つ下くらいの年齢だろうか。
同い年にしては少し子どもっぽい感じだ。
「そうですけど…」
初めて会う人や目上の人には敬語を使うようにお母さんから教わったので、僕は少年に敬語を使った。
「あの、店員さん見かけませんでしたか?」
「僕が店員さんだよ!」
僕の質問に対して少年は予想外の回答をした。
アルバイト…にしては早すぎる。
アルバイトに関して詳しく知らない僕にも、この少年はまだ働く年齢ではないことはわかった。
だとしたら、少年はこの花屋さんを営む家庭の息子で、仕事を手伝っているということだろうか。
「家のお手伝いをしてるってことですか?」
僕がそう聞くと、少年は大きく頷いた。
「カーネーションを買いに来たの?」
唐突な質問に、自分はカーネーションを買いに来たことを思い出した。
僕は色が綺麗なカーネーションを1本選び、少年に渡そうとした。
「お会計お願いします。」
「困ったな、僕計算できないんだよなあ」
計算ができない…?
少年は見た目からすると中学生くらいのはずだが、計算ができないとはどういうことだろうか…?
「僕が計算しましょうか…?」
「え、あーいいよ。今ママいないしタダであげる!」
「タダ…??」
このカーネーションは商品のはずなのに、お金を払わなくていいのだろうか。
この少年の判断で決めていいことではないだろうし、後々トラブルになったらお母さんだって悲しむだろう。
「大人の方はいないんですか?」
「僕の家はパパがいないからさ。今はママ用事あって出かけてるからいないの。お客さんなんて普段全然来ないから留守番引き受けたけど、今日はめずらしく君が来たってわけだよ。」
この少年も母子家庭だと聞き、親近感をおぼえた。
これまで幼稚園や学校など、他の子どもと交流するような場には行ったことがなかったので、僕は友達というものを知らなかった。
しかし、僕は少年に運命のようなものを感じて、気づいたらこう言っていた。
「僕、一英って言います。あの、名前を…教えてもらえませんか?」
「え、名前?」
「僕も母子家庭で、学校にも行ってなくて、友達もいなくて。でも、あなたとなら仲良くなれそうな気がするんです。」
初めて会う相手を前に、こんなにもすらすら言葉が出てきたことに自分でも驚いた。
「そうなんだね。僕は思逸。僕も君となら仲良くなれそうな気がする!よろしくね、一英!」
僕と思逸は、立ったままいろんな話をした。
あたりが暗くなりはじめるまでには、思逸のことをたくさん知ることができた。
思逸は甘いものが大好きだということ。
思逸は僕と同い年だということ。
思逸はよく幼く見られるということ。
思逸も学校に通っていないということ。
思逸にはお父さんも祖父母もいないということ。
思逸と僕のお母さんは、同じ人だということ─────
お母さんが作ってくれたサンドイッチを取りに、キッチンへ向かう。
母子家庭のため、お母さんはいつも働きに出ていてあまり顔を合わせることがない。
それでも、お母さんはいつも僕のご飯を作ってくれている。
以前僕はお母さんに、どうして毎日ご飯を手作りしてくれるのか聞いたことがある。
「お母さんは一英に元気でいてほしいから、どんなに忙しくても愛情を込めてご飯を作っているのよ。」
お母さんはそう言っていた。
僕のことを大切に想ってくれるお母さんのことが、僕は大好きだ。
兄弟がいなくても、お父さんがいなくても、学校に行けなくても、友達がいなくても、僕は幸せだ。
明日は母の日。
お母さんは、事故に遭ってほしくないからと、僕が1人で外に出るのを嫌がっているが、母の日にプレゼントをあげたらお母さんはきっと喜んでくれるだろう。
そう思って僕はカーネーションを買いに行くことにした。
家にはスマートフォンもテレビもなく、花がどのくらいの値段なのかわからないので、とりあえずお母さんからもらった少しのお小遣いをポケットに入れていくことにした。
サンドイッチを食べ終え、久しぶりに玄関のドアを開けた。
だいぶ暖かくなってきたものの、半そでではまだ肌寒かった。
今にも雨が降り出しそうな空の色だったので、僕は早足で花屋さんへ向かった。
小さな花屋さんに着くと、嗅ぎ慣れない花の匂いが混ざって少し後ずさりした。
人の気配がしない店内の様子を入口からしばらく控えめに覗いていたが、意を決して店内に足を踏み入れた。
BGMもなく閑散としてはいるものの、色とりどりの綺麗な花に目が眩んだ。
母の日、という文字と共に目立つ場所に置かれたカーネーションの中から、色が良さそうなものを数本選び、どれにしようか迷っていると後ろから声をかけられた。
「あれ、お客さん?」
突然のことに驚いて振り向くと、そこには少年が立っていた。
僕の1つ下くらいの年齢だろうか。
同い年にしては少し子どもっぽい感じだ。
「そうですけど…」
初めて会う人や目上の人には敬語を使うようにお母さんから教わったので、僕は少年に敬語を使った。
「あの、店員さん見かけませんでしたか?」
「僕が店員さんだよ!」
僕の質問に対して少年は予想外の回答をした。
アルバイト…にしては早すぎる。
アルバイトに関して詳しく知らない僕にも、この少年はまだ働く年齢ではないことはわかった。
だとしたら、少年はこの花屋さんを営む家庭の息子で、仕事を手伝っているということだろうか。
「家のお手伝いをしてるってことですか?」
僕がそう聞くと、少年は大きく頷いた。
「カーネーションを買いに来たの?」
唐突な質問に、自分はカーネーションを買いに来たことを思い出した。
僕は色が綺麗なカーネーションを1本選び、少年に渡そうとした。
「お会計お願いします。」
「困ったな、僕計算できないんだよなあ」
計算ができない…?
少年は見た目からすると中学生くらいのはずだが、計算ができないとはどういうことだろうか…?
「僕が計算しましょうか…?」
「え、あーいいよ。今ママいないしタダであげる!」
「タダ…??」
このカーネーションは商品のはずなのに、お金を払わなくていいのだろうか。
この少年の判断で決めていいことではないだろうし、後々トラブルになったらお母さんだって悲しむだろう。
「大人の方はいないんですか?」
「僕の家はパパがいないからさ。今はママ用事あって出かけてるからいないの。お客さんなんて普段全然来ないから留守番引き受けたけど、今日はめずらしく君が来たってわけだよ。」
この少年も母子家庭だと聞き、親近感をおぼえた。
これまで幼稚園や学校など、他の子どもと交流するような場には行ったことがなかったので、僕は友達というものを知らなかった。
しかし、僕は少年に運命のようなものを感じて、気づいたらこう言っていた。
「僕、一英って言います。あの、名前を…教えてもらえませんか?」
「え、名前?」
「僕も母子家庭で、学校にも行ってなくて、友達もいなくて。でも、あなたとなら仲良くなれそうな気がするんです。」
初めて会う相手を前に、こんなにもすらすら言葉が出てきたことに自分でも驚いた。
「そうなんだね。僕は思逸。僕も君となら仲良くなれそうな気がする!よろしくね、一英!」
僕と思逸は、立ったままいろんな話をした。
あたりが暗くなりはじめるまでには、思逸のことをたくさん知ることができた。
思逸は甘いものが大好きだということ。
思逸は僕と同い年だということ。
思逸はよく幼く見られるということ。
思逸も学校に通っていないということ。
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思逸と僕のお母さんは、同じ人だということ─────
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