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1 婚約しました
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はあ~っ。
シャロンは心の中で大きなため息をついた。
「で、領地の年収は?この王都で過ごせる期間はどれだけだ?」
今王都の館の応接室で向かい合っている金髪碧眼の色男は、我が家の懐と資産ばかりをシャロンに尋ねる。
ズケズケと。
本日は、このズケズケ男、ローラン子爵の次男コールと、マルグリット伯爵家嫡子シャロンとの婚約が整い、その顔合わせだというのに。
ユーナが頑張って赤茶けた髪を撫でつけ、編み込み、若草色のドレスを着せてくれて、一応の乙女に仕立ててくれたのに。
シャロン12歳。可愛いとも素敵とも、初夏らしいとも言わず触れず、この2歳年上の男は、爵位を継いだら、どんな暮らしになるのかしか興味がないらしい。
「さあ。資産はお父様に伺って下さいまし。お父様は領地経営を主となさっているので王都には滅多に」
「それは困るな。俺はゆくゆく近衛になりたい。こちらで住まないとなあ」
「家令も優秀ですが、やはり主が領地を熟知し判断しないと…」
「そうか!お前は才女と聞いている。お前が経営をすればいい。俺は女だ男だに拘らないよ。出来るものが出来ることをすればいいよね」
じゃあ、私が爵位をもてばいいんじゃん…
こいつ今、妻は領地に専念して、自分は王都でルンルンするって、言ったよね、言ったよね!
そりゃ私は痩せっぽちでメリハリのない身体に、傷んだ赤茶っぽい金髪が結った頭からもけもけ飛び出してる剛毛で
瞳はダークブルーだけど、まあ灰色とも言えるかな。角度によって深い青からグリーンにまで変わり、北の特徴として、結構気に入っているんだけど。
その唯一の自慢も、瓶底メガネでコーティングされていれば、台無しである事は、オシャレなど皆無の日々のシャロンですら理解している。
つまり
シャロンは男の子が気に入る容姿ではないって事。
(でも、ここまであからさまに財産目当てを表明しなくてもねえ)
マルグリット家は、北の名家だが、気候が厳しいため、豊かな土地ではない。それでも父は寒冷地に強い作物を広げ、長い時間を掛けて整備をし、僅かずつだが右肩上がりの経営手腕を発揮している。
シャロンの母アーリアがシャロンを残して病で亡くなってからは、それこそ馬車馬の如く働いていて、おかげで娘のシャロンの教育は放置されていた。
野っ原を同年代の男の子と走り回り、牛や羊のお世話もし、雪に閉ざされる季節には、書庫の本を読み漁り。
10歳からは王都の王立学園中等部に入って、この館では執事のロイが親代わりだった。
あれから3年。
学業に勤しんでみると、シャロンは自分が思考し統合する頭を持っている事に気付いた。
この3年で既に中等部の履修内容は見えた。面白いように知識が入る。
入った知識で新たな事を考える。
それが面白くて仕方がない。
最低限の茶会などには顔を出すものの、1日は授業と図書館と館の書庫が全てである。偶に会う父親も、会話が全て経営や政策、時事経営の話ばかりで、
さすがに、あれ?と気がついた。
娘の教育が疎かであったことを。
慌てて伝手をたどり社交に目覚め、一人娘のいいなずけを掴んだ。
それがこの美男子である。
はあ~っ……
何十回目のため息を心の中でついた頃には紅茶も冷めて。
ロイが開いている扉の向こうで、おほん、と空咳をした。
人の気配を思い出したのか、美男子は居住まいを正して口調も変える。
「……あ、こんな時間ですね。そろそろ……え、と、またお会いしましょう。手紙を出します…シャロン嬢」
「はい」
「私たちの婚約は、学園ではあまり広めないで欲しいのです。その、私自身の交友は、婚約に左右されずに自然で居たい。上の爵位欲しさに貴女と繋がったと人様に言われるのは癪ですからね」
こいつ
私との婚約を恥じるってえのか?
女の子たちとキャッキャウフフしている現状を変える気はないってか?
そして
今回の婚約は、爵位と財産目当てだと、しっかり自爆しやがって!
「……承知しました。広言は致しません。ですが他人から確かめられましたら、肯定しても宜しいですわね?」
「それは、そ、そうですね」
「如何に政略であっても、婚約は婚約ですので。私も、殿方とのお付き合いには気をつけたいですから」
「そ、うですかね。
では、また、連絡します」
……おい!
婚約者の手もとらないで挨拶もしないで帰るんかい!
本の虫だとて、作法位は知ってるわい!
「……駄目だこれ。まともに家庭もてる気がしない」
シャロン・アネット・マルグリット
12歳で、女の人生を諦めた瞬間である
シャロンは心の中で大きなため息をついた。
「で、領地の年収は?この王都で過ごせる期間はどれだけだ?」
今王都の館の応接室で向かい合っている金髪碧眼の色男は、我が家の懐と資産ばかりをシャロンに尋ねる。
ズケズケと。
本日は、このズケズケ男、ローラン子爵の次男コールと、マルグリット伯爵家嫡子シャロンとの婚約が整い、その顔合わせだというのに。
ユーナが頑張って赤茶けた髪を撫でつけ、編み込み、若草色のドレスを着せてくれて、一応の乙女に仕立ててくれたのに。
シャロン12歳。可愛いとも素敵とも、初夏らしいとも言わず触れず、この2歳年上の男は、爵位を継いだら、どんな暮らしになるのかしか興味がないらしい。
「さあ。資産はお父様に伺って下さいまし。お父様は領地経営を主となさっているので王都には滅多に」
「それは困るな。俺はゆくゆく近衛になりたい。こちらで住まないとなあ」
「家令も優秀ですが、やはり主が領地を熟知し判断しないと…」
「そうか!お前は才女と聞いている。お前が経営をすればいい。俺は女だ男だに拘らないよ。出来るものが出来ることをすればいいよね」
じゃあ、私が爵位をもてばいいんじゃん…
こいつ今、妻は領地に専念して、自分は王都でルンルンするって、言ったよね、言ったよね!
そりゃ私は痩せっぽちでメリハリのない身体に、傷んだ赤茶っぽい金髪が結った頭からもけもけ飛び出してる剛毛で
瞳はダークブルーだけど、まあ灰色とも言えるかな。角度によって深い青からグリーンにまで変わり、北の特徴として、結構気に入っているんだけど。
その唯一の自慢も、瓶底メガネでコーティングされていれば、台無しである事は、オシャレなど皆無の日々のシャロンですら理解している。
つまり
シャロンは男の子が気に入る容姿ではないって事。
(でも、ここまであからさまに財産目当てを表明しなくてもねえ)
マルグリット家は、北の名家だが、気候が厳しいため、豊かな土地ではない。それでも父は寒冷地に強い作物を広げ、長い時間を掛けて整備をし、僅かずつだが右肩上がりの経営手腕を発揮している。
シャロンの母アーリアがシャロンを残して病で亡くなってからは、それこそ馬車馬の如く働いていて、おかげで娘のシャロンの教育は放置されていた。
野っ原を同年代の男の子と走り回り、牛や羊のお世話もし、雪に閉ざされる季節には、書庫の本を読み漁り。
10歳からは王都の王立学園中等部に入って、この館では執事のロイが親代わりだった。
あれから3年。
学業に勤しんでみると、シャロンは自分が思考し統合する頭を持っている事に気付いた。
この3年で既に中等部の履修内容は見えた。面白いように知識が入る。
入った知識で新たな事を考える。
それが面白くて仕方がない。
最低限の茶会などには顔を出すものの、1日は授業と図書館と館の書庫が全てである。偶に会う父親も、会話が全て経営や政策、時事経営の話ばかりで、
さすがに、あれ?と気がついた。
娘の教育が疎かであったことを。
慌てて伝手をたどり社交に目覚め、一人娘のいいなずけを掴んだ。
それがこの美男子である。
はあ~っ……
何十回目のため息を心の中でついた頃には紅茶も冷めて。
ロイが開いている扉の向こうで、おほん、と空咳をした。
人の気配を思い出したのか、美男子は居住まいを正して口調も変える。
「……あ、こんな時間ですね。そろそろ……え、と、またお会いしましょう。手紙を出します…シャロン嬢」
「はい」
「私たちの婚約は、学園ではあまり広めないで欲しいのです。その、私自身の交友は、婚約に左右されずに自然で居たい。上の爵位欲しさに貴女と繋がったと人様に言われるのは癪ですからね」
こいつ
私との婚約を恥じるってえのか?
女の子たちとキャッキャウフフしている現状を変える気はないってか?
そして
今回の婚約は、爵位と財産目当てだと、しっかり自爆しやがって!
「……承知しました。広言は致しません。ですが他人から確かめられましたら、肯定しても宜しいですわね?」
「それは、そ、そうですね」
「如何に政略であっても、婚約は婚約ですので。私も、殿方とのお付き合いには気をつけたいですから」
「そ、うですかね。
では、また、連絡します」
……おい!
婚約者の手もとらないで挨拶もしないで帰るんかい!
本の虫だとて、作法位は知ってるわい!
「……駄目だこれ。まともに家庭もてる気がしない」
シャロン・アネット・マルグリット
12歳で、女の人生を諦めた瞬間である
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