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Chapter① 出会い 〜シュンside〜
福岡空港発・東京羽田行の最終便(5)
しおりを挟む機体は羽田空港に向けて降下を開始しており、既に千葉県上空に差し掛かっている。あと10分ほどで着陸だ。着陸前の準備をすべて終え、俺は乗務員用の座席へと着席する。
今日の乗務もこれで完了。そういう気持ちで窓の外の東京湾の景色を眺める。今日のフライトも無事に終わることを心の中で願いつつ、着陸の瞬間を待つ。
ドシンという音と共に機体が羽田空港に着陸した。
今日のフライトも安全に終えられてよかった。航空業界に関係する人々はいつもそう思っているに違いない。
機体は順調に駐機場へと移動し、いつもの大型機用のスポットに到着した。
「ドアモードをディスアームドに変更し、相互確認をしてください」
チーフパーサーからのアナウンスで持ち場のドアを操作し、非常時のスライドが展開しないように設定する。これを行うことで正真正銘、機体が安全にスポットに到着したことを意味する。
しばらくして前方2箇所のドアが開き、乗客が次々に降りてゆく。シュンも座席から立ち上がり、頭上の荷物棚に入れているキャリーバッグとビジネスバッグを取り出して、PCを収納し、俺に会釈をしてから機体を降りていった。
乗客が全員が降機すると入れ違いに清掃スタッフが入ってきて、手早く明日のフライトに向けた準備をスタートした。
俺たちキャビンアテンダントも乗客に続いて降機し事務所へと戻る。
事務所へ戻ると簡単な事後ブリーフィングを行い、チーフパーサーから「お疲れ様!今日は飲みに行く?」と全員に声が掛けられ、「黒岩君も行く?」と声をかけてもらったが、「俺はちょっと予定が・・・」と言って断る。
すると他のスタッフが珍しそうに「あら、予定ありなんて珍しいじゃない」と冷やかされながら事務所を後にする。
時計を見ると23時前になっている。
俺はキャリバッグを持って足速に到着ロビーへと向かった。
スタッフ専用エリアを抜けて一般乗客がいる到着ロビーに出ると、ちょうどタカシが仕事を終えた様子でPCをビジネスバッグに収納するところだった。俺は後ろから近づいて声をかけた。
「お仕事お疲れ様です」
タカシがこちらを見るとにっこりと笑って同じように「お疲れ様です」と言いながら立ち上がった。
タカシは俺の制服姿を上から下まで改めてじろっと見ている。やっぱり俺に惚れてるな、と俺が思った時、タカシは「じゃあLINE交換しますか?」と言う。しかし、俺は別のカードを切る。タカシを試すためだ。
「これからうちに来ますか?」
俺の予想通り、タカシは驚いた顔をする。そりゃそうだ。LINE交換する予定が、うちに来るかと提案を受けているんだから。もちろん、この時間に家に行くということはお泊まりになる。しかも、セフレの家でのお泊まり。驚くに決まっている。
「えっ?これからシュンさんんの家にですか?」
「嫌なら別に来なくてもいいですよ」
「嫌じゃなくて、サプライズで嬉しい提案だったからびっくりしちゃって」
「じゃあどうしますか?来ますか?」
俺は会話を早く終わらせたかった。こんなところ、同僚に見られたくないから。早く結論を言ってくれと思い、少しタカシのテンポの悪さにわざとイラッとした顔を見せる。
「もちろん!行きますよー!」
タカシはYESの選択肢を選んだ。つまり、俺に対して本気かもしれない。俺は色々と考え事をしながら、タカシと一緒に東京モノレールに乗車する。
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