26 / 32
第二章
第二十五話
しおりを挟む
第4階層から9階層までは、3階層まで出現するモンスターと変わりはない。難点があるとすれば、上の階層になるにつれ迷宮が広がり、俺たちの体力を蝕んでいく。そのため、それ相応の準備をしなければならないのだ。
俺達は今、6階層で休息をとっていた。10階層へと行くことを決めた俺たちだったが、マッピングの済んでいない階層へ行くことは危険だから、とアルマさんがマッピング済みの地図をもらっていた。
「レイン、ご飯出来たよ!」
地図を見ていた俺に、セレナが声をかけてくれる。
今日の夕飯はリアとセレナに任せていた。
「ありがと。おお、うまそうだな」
目の前には、湯気を立てるシチューがある。
「お代わりもいっぱいあるからね!」
ここに来るまでに倒した魔物の肉と、採取した植物で作られたシチュー。俺はスプーンですくって口に運ぶ。
「うまッ」
「本当に⁉」
俺の感想に、リアが喰い気味で尋ねてきた。
「あ、ああ。うまい」
「そ、そう。よかったわ」
顔が赤いが、恥ずかしいのか?
「リアね、本当は料理したことないんだって。だから、私が教えながら作ったの」」
「へー。セレナは料理できるんだな」
「まぁ、ね。ほら、村にいた頃は普通に作ってたし」
「なるほどな」
セレナは意外に普通の女の子だということは、ここまでで理解していた。が、料理も上手で可愛いとか、意外に良い嫁になるんじゃないか?
「それで、レイン。明日は遂に10階層に行くのよね?」
リアが真剣な表情で話しかけてくる。
俺は頷く。
「そうだ。明日は10階層。オーガを見つけ次第討伐して、心臓を採取。即時離脱だ」
俺の言葉に二人は頷く。
リアは案外平気そうな顔をしているが、セレナは足の震えが隠せていない。怖いのは俺も同じだ。
「今日は二人が先に寝ていいぞ。俺が少し長めに見張りをした後、二人を起こす」
「じゃあ、お言葉に甘えるわ。セレナ、こっちに来なさい」
「へ、なんで?」
「なんでって……。貴方、レインの前で脱ぐ痴女なの?」
「なッ⁉」
セレナはリアが言わんとしていることに気が付いたらしい。顔を真っ赤にしながら奥へと消える。
が、顔だけ出して。
「レインのエッチ……」
「俺何にもしてないし、言ってないだろ⁉」
「意気地なし」
「どうしろと⁉」
リアの追加砲撃に突っ込む俺だった。
二人も寝静まった夜。
俺は地図を広げながらなんどもシミュレートしていた。
迷宮に絶対はない。常に万が一に備えることが、生還への近道だ。
「オーガね」
オークの上位互換。
大きさは約3メートル前後。全身が筋肉で包まれていて、そこから繰り出される攻撃は、まともに喰らえば人間など跡形もなく吹き飛ぶ。加えて、オークとは比較にならない身のこなし。
中層に行く冒険者である以上、オーガを狩れなくては話にならない。が、それを前に絶命する冒険者も多い。
俺は剣の手入れをしながら見張りを続ける。
すると、背後から人の気配がした。
「レイン」
「リアか。どうした、交代はもう少し後だぞ?」
「そう。でも、目が覚めちゃって。隣、いいかしら?」
俺が通路の壁に背を預けている横に、リアが並ぶ。
「どうかしたのか?」
「別に。ただ、明日の事を考えてたら少し不安になってね」
「そうか」
食事のときには平気そうに見えたけど、セレナ同様リアも緊張していたらしい。
「セレナは?」
「もうグッスリよ。案外図太いのかもね」
「だな」
この環境に身を置いてグッスリ眠れるのは、セレナの才能だな。
「レイン」
「なんだ?」
「明日、私が以前のセレナみたいになったら、助けてくれるかしら?」
「いきなりどうした?」
「いいから答えて」
「ん? まぁ、助けるだろうな」
「そ。ならいいわ」
それだけ言うと、リアは俺の横を離れる。
「もう少ししたら呼んで。セレナを起こして交代するわ」
「お、おう……」
別れ際に見たリアの表情は、笑みを浮かべていたのだった。
俺達は今、6階層で休息をとっていた。10階層へと行くことを決めた俺たちだったが、マッピングの済んでいない階層へ行くことは危険だから、とアルマさんがマッピング済みの地図をもらっていた。
「レイン、ご飯出来たよ!」
地図を見ていた俺に、セレナが声をかけてくれる。
今日の夕飯はリアとセレナに任せていた。
「ありがと。おお、うまそうだな」
目の前には、湯気を立てるシチューがある。
「お代わりもいっぱいあるからね!」
ここに来るまでに倒した魔物の肉と、採取した植物で作られたシチュー。俺はスプーンですくって口に運ぶ。
「うまッ」
「本当に⁉」
俺の感想に、リアが喰い気味で尋ねてきた。
「あ、ああ。うまい」
「そ、そう。よかったわ」
顔が赤いが、恥ずかしいのか?
「リアね、本当は料理したことないんだって。だから、私が教えながら作ったの」」
「へー。セレナは料理できるんだな」
「まぁ、ね。ほら、村にいた頃は普通に作ってたし」
「なるほどな」
セレナは意外に普通の女の子だということは、ここまでで理解していた。が、料理も上手で可愛いとか、意外に良い嫁になるんじゃないか?
「それで、レイン。明日は遂に10階層に行くのよね?」
リアが真剣な表情で話しかけてくる。
俺は頷く。
「そうだ。明日は10階層。オーガを見つけ次第討伐して、心臓を採取。即時離脱だ」
俺の言葉に二人は頷く。
リアは案外平気そうな顔をしているが、セレナは足の震えが隠せていない。怖いのは俺も同じだ。
「今日は二人が先に寝ていいぞ。俺が少し長めに見張りをした後、二人を起こす」
「じゃあ、お言葉に甘えるわ。セレナ、こっちに来なさい」
「へ、なんで?」
「なんでって……。貴方、レインの前で脱ぐ痴女なの?」
「なッ⁉」
セレナはリアが言わんとしていることに気が付いたらしい。顔を真っ赤にしながら奥へと消える。
が、顔だけ出して。
「レインのエッチ……」
「俺何にもしてないし、言ってないだろ⁉」
「意気地なし」
「どうしろと⁉」
リアの追加砲撃に突っ込む俺だった。
二人も寝静まった夜。
俺は地図を広げながらなんどもシミュレートしていた。
迷宮に絶対はない。常に万が一に備えることが、生還への近道だ。
「オーガね」
オークの上位互換。
大きさは約3メートル前後。全身が筋肉で包まれていて、そこから繰り出される攻撃は、まともに喰らえば人間など跡形もなく吹き飛ぶ。加えて、オークとは比較にならない身のこなし。
中層に行く冒険者である以上、オーガを狩れなくては話にならない。が、それを前に絶命する冒険者も多い。
俺は剣の手入れをしながら見張りを続ける。
すると、背後から人の気配がした。
「レイン」
「リアか。どうした、交代はもう少し後だぞ?」
「そう。でも、目が覚めちゃって。隣、いいかしら?」
俺が通路の壁に背を預けている横に、リアが並ぶ。
「どうかしたのか?」
「別に。ただ、明日の事を考えてたら少し不安になってね」
「そうか」
食事のときには平気そうに見えたけど、セレナ同様リアも緊張していたらしい。
「セレナは?」
「もうグッスリよ。案外図太いのかもね」
「だな」
この環境に身を置いてグッスリ眠れるのは、セレナの才能だな。
「レイン」
「なんだ?」
「明日、私が以前のセレナみたいになったら、助けてくれるかしら?」
「いきなりどうした?」
「いいから答えて」
「ん? まぁ、助けるだろうな」
「そ。ならいいわ」
それだけ言うと、リアは俺の横を離れる。
「もう少ししたら呼んで。セレナを起こして交代するわ」
「お、おう……」
別れ際に見たリアの表情は、笑みを浮かべていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる