Face of the Surface

悟飯粒

文字の大きさ
2 / 83
魔王との邂逅編

ようこそ表面世界へ

しおりを挟む
 「…………なんで私が怒ってるかわかる?」
 「…………見当もつきません」

 目が覚めると俺は自分家の屋根にロープで逆さに吊るされており、プリプリ怒ったイリナに説教されていた。

 「出会い頭に女の子に不意打ち決めようとしたからに決まってるでしょ」
 「いや、敵かなって思って」
 「頭の中ファンタジーすぎない?小学生の方がまだ現実理解してるよ?」
 「ファンタジーそのものみたいなお前が言うな」

 俺の小説の主人公が言っていい言葉じゃあないぞ。

 「私はね、いい?君に会いにきたんだよ。こんな美少女が君なんかに会いにきたわけ。わかる?まるで天皇陛下にお会いするかのように歓待こそすれ、ドロップキックをしていいはずがない。身の程を知れ」

 口悪くないこいつ?一応勇者で誰からも憧れられる正義の味方のはずなんだけど。

 「いやーーやっぱりさ、唐突に目の前に凄い人が来ちゃうとさ、緊張するじゃん?」「うんそうだね」「でしょ?」「……………つまり?」「緊張しちゃうとさ、人って何しでかすか分からないじゃん」「つまりドロップキックしちゃったのも緊張のせいだと」「イエス」

ボグンッ!!

 イリナのパンチが綺麗にみぞおちに決まる!出る!逆さになってるからマジで出る!

 「そうだねー。緊張しちゃうとなにしでかすかわからないねぇ。殴るつもりなかったのになー」
 「す、すいませんでした…………これからはテキトウな言い訳つきません」
 「……………」
 「待って拳ちらつかせないで!イリナ様許してください!自分悪かったですすいませんでした!」
 「…………しょうがないなぁ」

 ……………拳収まってないんですけど。

 「…………そ、その、イリナ様は一体、何用で私ごときに会いに来たのでしょうか」

 俺はイリナの拳にビビりながら会話をする。

 「え?そんなの決まってるじゃん」「サンドバッグにする為ですか」「…………」「すみませんでした!慈愛あふれるイリナ様様がそんなことするはずありませんでした!」

 ひぃぃいい!!イリナの拳がビュンビュン空を切ってる!!速すぎて目で追えないんだけど!!

 「私はね、迎えに来たんだ。飯田狩虎いいだかこ…………いいや、カイである君をね」

 ……………何言ってんのこいつ?頭の中ファンタジーかよ。

 「………さぁサンドバッグにしろ。死人にされるぐらいなら俺は喜んでサンドバッグにおぼぇえっ!!」

 もう一発パンチが鳩尾に炸裂する!死ぬ!本格的に死ぬ!

 「ふ、ふざけんなよ!俺のどこがカイだよ!ただの小説の作者だっつーの!そもそも小説の世界が存在するってだけでも俺は半信半疑だってのに、死人にまでされるなんてたまったもんじゃない!現実みろバごめんなさいごめんなさい!拳納めてやめて殴らないで!」

 小説書いただけでこの仕打ちですよ!?許されていいんですか!?よくないですよね!?

 「…………私はね、私とカイが魔族と戦う表面世界での物語を…………私とカイの記憶通りの物語を君が小説として書いているから会いに来たんだ。そうでしょう?私とカイしか知らないことを君が書いているのだから、カイだと思ってもしょうがないじゃん」
 「でもカイは死んだだろ」
 「もしかしたら生きていて、私に自分の存在を示すために小説を書いたと考えることもできる」
 「カイは死んでるんだよ…………。」
 「でも実際君が小説を書いたってことは………」
 「死んでるんだよカイは!」

 このままだと訳の分からない方向に行きかねないと思った俺は声を張り上げた。カイが生きていてそれが俺だなんて誤解され続けたらどうなるか…………きっとろくなことにならない。ここだけは何がなんでも曲げちゃいけない。俺は飯田狩虎だ。

 「…………うん、君の言う通りカイは死んでる。でも君が私達の思い出を小説として書けている理由がわからないんだ」
 「それは俺にもわからない。ただ、1年前から夢を見るんだ。イリナとカイが冒険して敵を倒す夢を。………俺はそれを形にしただけにすぎない」

 イリナとカイが勇者として色々な悪を倒していくその夢はとても痛快なものだった。彼らはどこまでも正義で、人々に害をもたらす存在を脅かし続ける。でもそんな楽しい夢はいつも、最後の最後に炎帝が壊して終わる。

 「あくまでもカイとは関わりがないと言うんだ。夢のせいにして。そっちも十分非現実的なこと言ってるってわかる?」
 「わかってるよ。…………でも死人が生き返って小説を書いているよりは現実的だろ」
 「目くそ鼻くそだよ」
 「五十歩百歩って言って欲しかったなー。」

 俺は拘束から逃げられるかどうか試すために、身体を思いっきり揺さぶってみる。でもどうにも、イリナの力で縛り付けられたロープが俺ごときの力でなんとかできるわけもなく、むなしく揺れただけだった。

 「私的にはね、やっぱり君は嘘をついていて、カイとなにかしらの関係があると睨んでいるんだ。私が今君をボコボコにしているのだって、君が不意打ち決めようとしたことよりも、カイが私に秘密を隠していた可能性があることに苛立っているからだよ」

 …………出会えたことに喜びを見出して優しくしてくれよ。

 「たとえば君は生前のカイと仲が良くて話を聞いていたとか…………ありそうじゃん?」
 「ありそうだけどさぁ…………当の本人が知らないって言ってるわけだし、なによりもイリナ達の世界が夢じゃあなく実在してたってことに今驚いているわけじゃん?ないと思うよその可能性」

 俺がカイの知り合いで、イリナと出会う可能性があることを理解した上で小説を書いていたのならば、今この瞬間の俺の対応は違うはずだ。「会いたかったんですイリナさん!」ってなるはずじゃん。不審者か本人かを確認するためにドロップキックはしないじゃん。

 「というわけでね、今君が吊り上げているのは、なぜか偶然君達のことを知っているだけの無関係な一般人なわけよ。解放してあげた方がいいと思わない?塾にもう遅れちゃってるのよ俺」

 俺の発言を受けてイリナはニヤリと笑った。

 「これなーんだ」

 イリナが手に持って俺に見せてきたのは俺の腕時計だった。

 「そんなの見飽きてるよ。俺の腕時計…………何やったお前」

 俺がいつもしている腕時計がなんか変だ。針はちゃんと動いているのになぜか感じる違和感…………そうだ、数字が逆なのだ。まるで自分の腕についている腕時計を鏡越しに見るみたいに逆。

 「持ってきただけだよ、この世界に。君の小説の舞台。勇者と魔族が戦いを繰り広げる現実と鏡写の世界に」

 両手を広げてイリナは俺に笑いかけた。

 「ようこそ、表面世界へ!剣と魔法の世界へ!」

 ……………ふっ。

 現実味がないので俺は鼻で笑った。あーいやそうか、現実世界じゃあないのだから現実味なんてあるわけないか!はっはっはっ!……………はぁ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキル素潜り ~はずれスキルで成りあがる

葉月ゆな
ファンタジー
伯爵家の次男坊ダニエル・エインズワース。この世界では女神様より他人より優れたスキルが1人につき1つ与えられるが、ダニエルが与えられたスキルは「素潜り」。貴族としては、はずれスキルである。家族もバラバラ、仲の悪い長男は伯爵家の恥だと騒ぎたてることに嫌気をさし、伯爵家が保有する無人島へ行くことにした。はずれスキルで活躍していくダニエルの話を聞きつけた、はずれもしくは意味不明なスキルを持つ面々が集まり無人島の開拓生活がはじまる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...