Face of the Surface

悟飯粒

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魔王との邂逅編

バキボキの夢

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 「なぁ………骨折ってしたことある?」

 黒板を見ながら、後ろの席にいる幼馴染に話しかける。

 「ないかなぁ僕は。骨折するような危険なことなんてする気にならないもの」
 「だよなぁ…………昨日さ、両腕の骨が全て粉になるぐらいの骨折をする夢を見たのさ。痛かったなーあれ。痛すぎて目の前真っ白になって何も見えなかったもん」
 「凄まじい夢だねそれ。…………どういうのだったの。投身自殺しようとしたけどやっぱり気が変わって両手で着地したら死んだ方がいいような苦しみを味わったって夢?」
 「夢でまでそんな生々しいの見たくないんだけど。凄い大きな魔物と戦ってたんだよ。そしたら両腕バキバキにされた」
 「ふーーん、いつも君が言っているイリナとカイって人達の夢?」
 「まぁそんなもんだ。違う点があるとすればカイが俺になってたってだけで」

 昨日、気絶している間に表面世界に連れて行かれた俺は洗礼の儀式を行った。そこまではよかったのだが、なぜか魔物のリーダー格みたいな奴が出現し、頑張って倒そうとしてぶん殴ったら両腕が粉砕骨折したのである。その後検証したところ、どうやら俺はイリナと同じぐらいのパワーを出すことができるらしいが、身体がその力に追いついておらず耐えきれずに壊れてしまうらしい。魔力と身体の乖離………こんなことは普通はあり得ないらしいのだけれど、俺だってよく分からんのだ、これ以上混乱させないでくれ。

 「君とイリナの冒険?…………楽しかったかい?」
 「全然。なーんも楽しくなかった。ずっと拷問されるし、両腕は粉砕骨折するし…………生きてる心地がしなかったよ」
 「そうか、今日も同じような夢を見れるといいね」
 「やだよ、絶対」

 俺は時計をチラッと見た。………宏美はまた遅刻ギリギリか。テスト勉強で詰め込むからこうなる。俺は予鈴が鳴るまで幼馴染とダラダラと会話を続けた。


 表面世界にて

 「よーし!困ってる人達を助けにいくよ!」
 「いやです」

 放課後、家に帰っている途中にイリナに拉致された俺はまたもや表面世界に連れてこられていた。

 「なんでぇ?せっかく魔力が発現したのに勿体ないよ!」
 「むしろ困ってるのは俺だって分かってくれよ………人助けなんてしてる余裕ないの!勉強させろ!」

 なんの取り柄もない人間は、勉強を頑張っていい大学に行って優良企業に就職しなきゃ人生始まらないの!イリナはそんなことする必要はないかもしれないけれど、俺みたいなダメダメ人間には選択肢ないの!勉強させろ!

 「勉強しなくたっていいって。なんとかなるなる!」
 「いやだぁ!いやなんだぁ!俺自身を助けるためには勉強するしかないんだぁ!」

 俺はビタンビタンと駄々をこねる。

 「…………でもさぁ?」
 「なんだよイリナ!」
 「ただ良い企業に就職してそっから何かあるの?何もないなら就職するまでの20年も、就職後の40年も無駄にするだけだと思うけど」
 「………………辛辣すぎない?」
 「ただ疑問をぶつけているだけだよ。その先がないのなら、結局一人ぼっちで意味もなく生きるだけじゃん。でもいいポジションにだけはいるからプライドだけが大きくなって、君、死んだ方がいいって望まれるだけの人生になるよ」
 「………………ごめんなさい」
 「私に謝らないでよ。君の人生は君にしか歩めないんだから」

 そういうとイリナは縄を取り出し、俺を縄で縛り上げ引きずっていった…………

 「だからってこの移動方法はおかしくない!?駄々こねたのは謝るけれど、だからってお前こんな変なアブッ!だから鼻が死ぬって言ってるじゃん!俺に歩ませろ人生も移動も!」
 「無理でーす。…………ひとまず勇者領から依頼を貰って来たから、助けにいくよ人々を」
 「…………もしかしてこのまま目的地までいくつもり?」
 「勿論!」
 「降ろしてくれー!」

 俺は引きずられ続けた。


 ~1時間後~

 「ここの村の人々は、畑を荒らす魔物に困ってるみたい。その魔物を退治しちゃおう」
 「耳の中がボワンボワンする…………」

 ようやく拘束を解除された俺は、地面にうつ伏せで倒れていた。俺は車酔いが激しい人間なのだ。逆さ吊りの状態で1時間も揺られたら激酔いになるのは当然だ。よく吐くのを我慢したよ俺…………

 「話聞いてた?」
 「畑耕すんだっけ?」
 「畑を荒らしている魔物を倒すの!」
 「えーーやなんだけど」

 昨日から今日にかけて、俺は何度「いや」って言葉を言ったのだろうか。

 「でもここの畑を荒らしている魔物って弱いから、特訓には丁度いいんだよ」
 「特訓とかせずにノンビリ世界を歩き回るとかダメなの?」
 「それが出来るようになるには力をつけないとね。この世界には危険な魔物や魔族がわんさかいるんだから」

 …………よくもまぁこんな世界で生きてるなここの村人。俺だったら裸足で逃げ出すわ。

 「もし君が特訓して自分の力を操れるようになれば、私と同じぐらい強くなれる可能性があるんだよ。とてもとても強くなれるんだ。この機会を逃さずに頑張らないと!」

 強くなれる………ねぇ?俺は目線を上げて自分の右手を見た。昨日の段階で俺は水を操ることができると理解した。しかし水である。…………水ですよ?そんなんで一体どうやって戦えというんだ。もっとマシな能力が良かった…………

 「それじゃあ人を助けにいこう!」
 「ぶへぇ…………」

 ウキウキ気分のイリナの後を、俺はフラつきながら追った。
 この村は上質な鉱石がよく取れるらしい。それを近くの工業地帯に売ることで生計を立てている鉱山村なのだ。一昔前の夕張みたいだなと思った。…………いずれ尽きる資源に全てを預けるというのは、その需要が尽きた時に崩壊する危険性がある。この村の人たちもそれを理解していて、今度は農業の方にシフトチェンジしているのだろう。多少リスクはあるが第二次産業にシフトした方がいいと素人目線では思うが、何か色々とあるのだろう。俺達は問題の畑に案内されている間、一通り村の成り立ちや産業を聞かされた。

 「うわーー結構荒らされてるね。かなり大きな魔物が暴れ回ったみたいだ」

 イリナの言う通り、60センチメートルぐらいある巨大な足跡が柔らかな土にクッキリと残されていた。土もかなり掘り返されており……………現実的に考えると巨大なイノシシが荒らしたような形跡だ。こんな大きなイノシシいないけど。

 「そうなんです!こんな危険な魔物、私達じゃあどうしようもなくて勇者様達に倒してもらいたいのです!」
 「はいはーいわかったよー!私が来たからにはもう安心だからね!」

 まぁ勇者最強のイリナがそう言ったら誰だって安心するわな。俺はなるべく話を振られないように気配を殺して2人の会話を聞いていた。

 「魔物はここから少し離れた森林地帯を根城にしているといいます!どうかよろしくお願いします!」
 「はいはーい!」

 そして俺達は魔物の住処へと向かった。


 「ひとまず君はさ、すっげー力を使うのなしね」
 「あーー体を壊すようなやつ?」
 「そうそう。昨日発現した水の魔力と、体を壊さない程度の身体能力でなんとか魔物を倒しちゃって!」
 「あーーい」

 ふっ………まぁ?昨日の戦いで腕を完全破壊したけれど、自信になったのは間違いない。こんな畑を荒らすような雑魚魔物を相手にしようと危険はないのだ!さっさと倒してやるぜ!
 魔物の住処に入ると強烈な獣臭さがした。洗ってないワンちゃんの匂いを100倍濃くしたような、嗅ぐだけで涙が出てしまうキツさ。魔物が食い荒らした動物の骨も大量に落ちていて、ああ………魔物の住処なんだなって変な感動を覚えた。…………あれ?

 「…………変なこと聞くけどさ」
 「どうしたの?」
 「こんな大層な住処を作れる魔物ってさ、ここ一体の生態系で結構上位に位置するよね」
 「まぁそうなんじゃない?」
 「それでさ、食い荒らしたような骨もあるってことはさ、まぁ、順当に考えれば肉食なわけじゃん?雑食の線も捨てきれないけど、ここの死骸の多さから察するに、まぁ肉食がメインだと考えられるじゃん」
 「そうだろうねぇ」
 「生態系の上の方にいて、肉食な魔物がさ、畑を荒らして野菜を食うなんてせこい真似するか?人間襲って食った方が早くない?」
 「………………」
 「………………」

 おいおい………冗談だと言ってくれよイリナ。

 「もしかしてさ、別の魔物の住処に来たんじゃない?」
 「………………」

 反応してくれよイリナ………
 俺は身を縮め、イリナの背後に隠れながら歩く。

 「結構ヤバめな魔物がいるんじゃあないですか?」
 「大丈夫!私からすれば目くそ鼻くそだから!」
 「お前からすればね!戦うの俺なの!わかる!?もっと段階踏んで特訓しようよ!そして五十歩百歩って言え!逃げるぞ俺は!」
 「ダメでーす。勇者はどんな逆境も超えていくものなんですぅ」
 「だから縛るなっはえぇえ!!いつの間にがんじがらめにされたんだ俺!」

 俺はイリナにまた縛り上げられ担がれると住処の奥へと連行された!

 住処の奥に来た途端、その獣の臭さをかき消すかのように漂う血の匂い。大量の血が溢れ、酸化し、夥しい死が積み重なりこの部屋は形成されていた。

 「…………あれ、イリナさん?」
 
 しかしこの住処の主もその死骸の仲間入りを果たしていて、魔物に剣を突き立てていた勇者がこっちを振り向いた。
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