異世界島流しの罪名は、世界樹の枝を折ったから!? ~一難さってまた一難な僕っ娘冒険記~

矢筈

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二章 新たな出会いと冒険

遭遇戦

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「やー、今にして思えばあれってフラグだったよねぇ」
「ふらぐが何かしらねぇけど、よくこんな状況で平然としてるよな、お前」
 
 屋根のない、壊れた家の中、僕は独り言ちた。それを少し離れたところからアランが呆れた顔で見てきた。
 周囲からは…… ドゴンだのバゴンだの状況にそぐわない音が響きわたる。
 詰まるところ、会わないだろって言ったやっばい奴に早々に遭遇したわけだ。それで僕のセリフである。
 
「逃げ隠れするのみではただの獲物だ!  道を歩むものならば相対してみせろっ!」
 
 外から聞こえる大音声。え、なんでやばい奴がしゃべってるのかって?
 
「獲物であるならば!  この狩猟神パルムから!  逃げられると思うなよぉ!」
 
 これである。もうね、運が悪いのか良いのかよくわかんないよね。そう、遺跡で暴れまわっていたのは自分の縁の地を荒らされてブチ切れていた狩猟神パルム様であり、それにのっけから遭遇した僕らはこうして追い詰められているわけだ。
 いやぁビックリしたよね。狩猟神って名前で女性だからって僕は普通にスラーっとしたスマートな女性を想像してたんだ。ところがどっこい遭遇したのは…… もう筋肉お化け?  女性かどうかもちょっと疑問に思ったぐらいだ。
 そのムッキムッキの筋肉をフルに使って放たれる矢は、一撃で魔物を貫通とか爆散させてるし、遺跡の廃屋を砕いて回っている。
 魔物とどっちが遺跡を荒らしてるんだろう、とか思ったけどそれを言ったら後が怖いから何も言えない。
 というか、何でまたこっちまで魔物と一緒に追い回されないといけないんだか。もしかして区別ついてないとか?  頭まで筋肉入ってそうだし。
 
「出てこぬのならば!  出たくなるようにしてやろう!」
 
 あぁもう嫌な予感しかしな――
 瞬間、衝突音と瓦礫の崩れる音と共に何かが顔の右をかすめる。そーっとそちらを見れば、壁に穴。
 
「うっそでしょ、矢で壁ぶちぬいてきたんだけど!」
「あぁ~、昨日の晩飯もっと食っておくんだったぁ」
 
 何それ、昨日あんだけ食べてたじゃん!  毎日たくさん食べてるんのにこの状況で出てくるのが食事って何なのさ。
 ていうかその狩猟神さまの加護を受けてるんだから、アランは同じ事ができるんじゃないの?
  
「何期待した目で見てんだよ。無理だ無理無理」
 
 なんでこう色々と毎回追い詰められないといけないんだ、異世界生活。もうちょっとチートとかで楽させてほしいんですけど!  世界を何とかしろっていうならそれぐらい優遇しろー!
 二度目の衝突音、今度は頭の上を掠めて対面の壁にも穴をあける。
 
「これ、もうどうしようもない気がする」
「奇遇だな。俺も今そう思ってた」
 
 こんな威力の矢の前じゃ革鎧なんてあってもなくても一緒だろうし、そもそもじっとしてたら次どこに狙いがくるか分かったもんじゃぁない。
 一か八か顔をのぞかせて……
 
「ひゃぃ!」
 
 穴からのぞかせた顔の、本当に目の前を矢が通過する。もう、珍しく変な声出たじゃないか。
 
「次は中てるぞ!  3つ数えるまでまってやる!  3!!!!」
 
 もう選択肢はないよね、アランと目くばせして元は玄関であったであろう場所から外にでる。
 出た先には筋肉神、いや狩猟神さまが仁王立ちしていた。僕よりも色が濃い燃えるような赤髪、傷にまみれながらその存在を主張する筋肉、その筋肉に押し負けてはちきれそうになっているチュニックに胸当てと指貫、そして背中に背負った大斧。もうなんだろう、神様感のうっすい人だ。まだ前回の自称神様のほうが神様らしかった……
 
「よおし、出てきたな!  今から!  俺が!  試練を課す! 切り抜ければ! 見合う力をくれてやる!」
 
 声もおっきい。その張り上げる声だけで鼓膜がぴりぴりと振動を感じとる。もう狩猟神じゃなくて山賊神とかでもいいんじゃないかな。
 古今東西神様って理不尽な奴ってのはよーく理解したけど、これはあまりにもあまりすぎる。
 そもそも出会って「こんにちは、死ね」と言わんばかりに矢を撃ってきたのはそっちな挙句、試練を課すとか無茶苦茶言われてだんだん腹も立ってきた。
 うん、一発ぐらい殴っても誤射だ誤射。メイスを握る手にも力が入る。
 
「その意気や良し!  条件は!  この俺に一撃でも当てることだ!  なんでも構わんぞ!」
 
 しかもOKが出ているから遠慮もいらないよね。さっきちょっとビックリさせられた分くらいは仕返しがしたい。
 
「おい、何か手でもあるのか?」
「あったらとっくにやってるよ」
 
 無手無策、無謀にも程があるけど、じっと隠れて狙い撃たれるのを待つよりかはずっといい。引き返して体制整えたり準備したりって方法はありだろうけど、せっかく目的の神様が出張ってくれてるんだ。チャンスはものにしないと、後に響く。
 まぁ仮にダメで僕が死んでも、アランだけは生きて戻れるように考えてはおかないといけない。僕の都合に巻き込まれて彼が死ぬだなんてゴメンだ。
 それに僕には向こうも知ってはいるだろうけど、光の剣っていう奥の手もある。使い方は未だによくわかんないけど、剣の形をしてるんだから剣としての能力くらいあるだろう。最悪それをぶん投げてやる。
 
「さぁ!  どこからでも!  鬼謀奇策案略力づく!  なんでもいいぞ!  神に挑む栄誉を胸に!  来るがよい!」
 
それじゃあ、神様攻略、やってみようか!
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