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二章 新たな出会いと冒険
神の力
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「ていっても、何も考えてないんだよねぇ」
「おい……」
あんだけ大見栄きって、今はただ狩猟神パルムと向かい合って睨み合っているだけだ。
向こうは余裕があるのか、弓を構える素振りすらない。
「とりあえず、別れよう。一所に固まって合わせて串刺しにされるより、別々のほうが向こうも狙いにくいはずだし」
9割9分、向こうの狙いは僕だ。なら、アランを遠ざければ彼の生存率は高まるし、最悪逃げきることだってできるはず。
彼は言葉もなく頷くと。狩猟神からは目を離さぬままに僕から距離をとる。
気休めにならないだろうけど、盾を前面に構え、様子をうかがうと、遮られた視界から、狩猟神が矢をつがえるのが見える。
さて、どうやって取っ付いたものか。こうして弓矢と相対してみると、古代の合戦の死者のほとんどが弓矢が死因だってのがよくわかるね。
僕たち二人とも剣とメイスで射程の短いインファイターに対して、狩猟神は勢いからしてそれこそ射程なんて笑うほどあるだろう。
願わくば一射ごとに時間が開いてくれればいいけども、神様になるぐらいの腕前の人だ、そんな甘い話はないよねぇ。
とにかく目的は弓矢を避けて接敵、どうにかして一撃いれる!
作戦もへったくれもないって? だってこれ以上にどう言いようもないし。
「手を分けるのは良手である!」
やっぱりまず狙われたのは僕。弓矢の一番の良いところは、狙ってる場所がよくわかることだ。何せ、向いている方向に矢が――
「考えが甘い!」
放たれた矢が、曲がる。漫画やアニメじゃあるまいに、とは思ったけど現実に弓矢は放たれた後に大きく弧を描き、距離を取り始めていたアランへ向かう。
「アラン!」
「曲げ撃ちは予想済みだ!」
僕が注意の声を上げるものの、彼はこうなるのを予測していたらしい。大きく一歩下がることで矢を難なくかわす。
狙っていると見せかけることもできるってなると、本格的に厄介だ。さて、じゃあこっちの一手にはどう出てくるかな。
「炎の――槍!!」
僕の掲げた左手の先に、名の如く炎を纏った槍が現れる。僕の唯一の攻撃用魔法、通じるだろうか。
「魔法か! 良いぞ!」
宙に浮かんだ槍の石突をメイスで思いっきりぶん殴る。狙いは定めなくても大丈夫。これはそういう魔法だから。
狩猟神へ向けて駆ける槍、それをじっと見据えた彼女はそれを、弓矢で狙う。ちょっと待って、弓で狙う?
放たれる矢。それは違うことなく槍を撃ちぬいた。撃ち落としたんじゃない、撃ちぬいた。
「うそぉ…… 」
「良いが! 陳腐だな!」
何てことはないといわんばかりに、弓を持った腕をぐるぐると回す。さすがに避けても当たる呪いが掛かった槍を撃ちぬいて壊すだなんて想定外だ。こうなってくると打てる手が――
「バカ! ぼおっとするなよ!」
あまりの出来事に呆けてる僕にアランが声を張り上げる。
狩猟神から放たれた矢が僕へ向かう
同時に彼も弓矢を放つ、がそれすらも狩猟神は矢で撃ちぬいてしまう。
「ふんぬっ」
済んでのところで射線に盾を割り込ませる、はじける様に斜めに構えるが、着弾の衝撃に身体ごと持って行かれてしまう。
たたらを踏みつつも留まり、じんじんと痺れる左手に目をやれば、大きくひしゃげた盾。
威力おかしすぎない?
「全力を持って! 抗うが良い! それこそが獲物ではなく! 相対する者の証である!」
なんか勝手なことを言ってる神様は置いといて、今できる事を考える。が、どれも先ほどの弓矢の威力と命中を勘案すれば、有効打には程遠い。よしんば捨て身覚悟で近づいたとして、あの背中の斧を振るわれたら僕の体なんて盾ごと真っ二つだろう。それはきっとアランも同じだ。
頭の中に千日手という言葉が浮かぶ、どうにかしてこの硬直を崩したい。そうなるとどうしても近寄るという選択肢は外せない。あとは弓若しくは斧の最初の一撃をどう凌ぐか、それが一番の問題だ。自分の命を盾にアランに一撃を託すというのも、さすがにまだ死にたくないから却下。ならばもう、あれに賭けるしかない。使えるか使えないかはわからないけど、今この拮抗をくずせるのはそれしかない。
「アラン! 今から一撃かますから!」
あえて、聞こえる声で伝える。わざとらしい程の陽動、だからこそきっと―― 通じる。
僕の声に応えるようにアランが矢を放つ。移動しながら撃っているのだろう、複数の場所から放たれる弓矢は瞬息をもって運ばれる。
「決死の一撃を行うか! それも良し!」
その矢を同じく矢をもって撃ち落とす狩猟神。しかし、その視線が僕から離れることはない。警戒してくれている。
合間を縫って彼女の下へ駆ける。あとは、アランを信じて、ぶちかます!
「光の――」
矢が僕の顔を掠める。でも目は閉じない。流れる血もそのままに、メイスを振りかぶって投げる。
流石に武器を投げるのは予想外だったのか、今まで違ってそれを身をひねって躱す。
その間もアランは弓を射掛けてくれる。さぁ、通じろ! 同じ神の力だ!
「――剣!」
メイスを手放した僕の手に光が集う、そして現れるのはその輪郭すらぼんやりとした剣だ。だけど、わかる。この剣には力が、ある。
「ベリエルの力か! 良いぞ! 万手を尽くせ!」
剣を見て取った狩猟神が弓を投げ捨て、背後の大斧を掴む。あとは半ば運だ。あの自称神様の力が通じるか否か、ここで賭ける!
「おい……」
あんだけ大見栄きって、今はただ狩猟神パルムと向かい合って睨み合っているだけだ。
向こうは余裕があるのか、弓を構える素振りすらない。
「とりあえず、別れよう。一所に固まって合わせて串刺しにされるより、別々のほうが向こうも狙いにくいはずだし」
9割9分、向こうの狙いは僕だ。なら、アランを遠ざければ彼の生存率は高まるし、最悪逃げきることだってできるはず。
彼は言葉もなく頷くと。狩猟神からは目を離さぬままに僕から距離をとる。
気休めにならないだろうけど、盾を前面に構え、様子をうかがうと、遮られた視界から、狩猟神が矢をつがえるのが見える。
さて、どうやって取っ付いたものか。こうして弓矢と相対してみると、古代の合戦の死者のほとんどが弓矢が死因だってのがよくわかるね。
僕たち二人とも剣とメイスで射程の短いインファイターに対して、狩猟神は勢いからしてそれこそ射程なんて笑うほどあるだろう。
願わくば一射ごとに時間が開いてくれればいいけども、神様になるぐらいの腕前の人だ、そんな甘い話はないよねぇ。
とにかく目的は弓矢を避けて接敵、どうにかして一撃いれる!
作戦もへったくれもないって? だってこれ以上にどう言いようもないし。
「手を分けるのは良手である!」
やっぱりまず狙われたのは僕。弓矢の一番の良いところは、狙ってる場所がよくわかることだ。何せ、向いている方向に矢が――
「考えが甘い!」
放たれた矢が、曲がる。漫画やアニメじゃあるまいに、とは思ったけど現実に弓矢は放たれた後に大きく弧を描き、距離を取り始めていたアランへ向かう。
「アラン!」
「曲げ撃ちは予想済みだ!」
僕が注意の声を上げるものの、彼はこうなるのを予測していたらしい。大きく一歩下がることで矢を難なくかわす。
狙っていると見せかけることもできるってなると、本格的に厄介だ。さて、じゃあこっちの一手にはどう出てくるかな。
「炎の――槍!!」
僕の掲げた左手の先に、名の如く炎を纏った槍が現れる。僕の唯一の攻撃用魔法、通じるだろうか。
「魔法か! 良いぞ!」
宙に浮かんだ槍の石突をメイスで思いっきりぶん殴る。狙いは定めなくても大丈夫。これはそういう魔法だから。
狩猟神へ向けて駆ける槍、それをじっと見据えた彼女はそれを、弓矢で狙う。ちょっと待って、弓で狙う?
放たれる矢。それは違うことなく槍を撃ちぬいた。撃ち落としたんじゃない、撃ちぬいた。
「うそぉ…… 」
「良いが! 陳腐だな!」
何てことはないといわんばかりに、弓を持った腕をぐるぐると回す。さすがに避けても当たる呪いが掛かった槍を撃ちぬいて壊すだなんて想定外だ。こうなってくると打てる手が――
「バカ! ぼおっとするなよ!」
あまりの出来事に呆けてる僕にアランが声を張り上げる。
狩猟神から放たれた矢が僕へ向かう
同時に彼も弓矢を放つ、がそれすらも狩猟神は矢で撃ちぬいてしまう。
「ふんぬっ」
済んでのところで射線に盾を割り込ませる、はじける様に斜めに構えるが、着弾の衝撃に身体ごと持って行かれてしまう。
たたらを踏みつつも留まり、じんじんと痺れる左手に目をやれば、大きくひしゃげた盾。
威力おかしすぎない?
「全力を持って! 抗うが良い! それこそが獲物ではなく! 相対する者の証である!」
なんか勝手なことを言ってる神様は置いといて、今できる事を考える。が、どれも先ほどの弓矢の威力と命中を勘案すれば、有効打には程遠い。よしんば捨て身覚悟で近づいたとして、あの背中の斧を振るわれたら僕の体なんて盾ごと真っ二つだろう。それはきっとアランも同じだ。
頭の中に千日手という言葉が浮かぶ、どうにかしてこの硬直を崩したい。そうなるとどうしても近寄るという選択肢は外せない。あとは弓若しくは斧の最初の一撃をどう凌ぐか、それが一番の問題だ。自分の命を盾にアランに一撃を託すというのも、さすがにまだ死にたくないから却下。ならばもう、あれに賭けるしかない。使えるか使えないかはわからないけど、今この拮抗をくずせるのはそれしかない。
「アラン! 今から一撃かますから!」
あえて、聞こえる声で伝える。わざとらしい程の陽動、だからこそきっと―― 通じる。
僕の声に応えるようにアランが矢を放つ。移動しながら撃っているのだろう、複数の場所から放たれる弓矢は瞬息をもって運ばれる。
「決死の一撃を行うか! それも良し!」
その矢を同じく矢をもって撃ち落とす狩猟神。しかし、その視線が僕から離れることはない。警戒してくれている。
合間を縫って彼女の下へ駆ける。あとは、アランを信じて、ぶちかます!
「光の――」
矢が僕の顔を掠める。でも目は閉じない。流れる血もそのままに、メイスを振りかぶって投げる。
流石に武器を投げるのは予想外だったのか、今まで違ってそれを身をひねって躱す。
その間もアランは弓を射掛けてくれる。さぁ、通じろ! 同じ神の力だ!
「――剣!」
メイスを手放した僕の手に光が集う、そして現れるのはその輪郭すらぼんやりとした剣だ。だけど、わかる。この剣には力が、ある。
「ベリエルの力か! 良いぞ! 万手を尽くせ!」
剣を見て取った狩猟神が弓を投げ捨て、背後の大斧を掴む。あとは半ば運だ。あの自称神様の力が通じるか否か、ここで賭ける!
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