異世界島流しの罪名は、世界樹の枝を折ったから!? ~一難さってまた一難な僕っ娘冒険記~

矢筈

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二章 新たな出会いと冒険

まさかのまさか

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ClaíomhSolais――!!」
 
 光の剣を掲げて走る。背後からはアランの矢が僕を避けて狩猟神に迫っていく。
彼女は迎撃のためか、防御か、大斧を両手に構え、こちらからは決して目を離さない。 
 今ここで、できるのは彼女の予想を超える一手を打つだけ。光の剣だからできる。こちらを警戒して、注視しているからこそできる唯一の抜け道。
 それこそが――!
 
「必殺! 猫だまし!」
 
 僕の一撃を斧で防ごうとした彼女の眼前、光が爆発する。それこそ一帯を埋め尽くすほどの暴力的な光だ。
 あまりの光に僕も目を瞑ってしまう。だけど直前に見えた、狩猟神パルムの驚きの顔を。ざまぁ、みろ!
 そしてこの光の影響が少ない人物が一人だけいる。そう、僕の背後にいたアランだ。あとは僕の意図をくみ取ってくれれば……!
 怖いのはこの光を耐えた後の狩猟神の一撃だ。彼女の身の丈ほどもある大斧をまともに食らえば、防御の余裕すらなく真っ二つだろう。
 目を瞑ったまま、必死に後ろへ飛び下がる。追撃は―― こない。
 
「うむ!  まさか奥の手の剣が目くらましとはな!  善哉!」
 
 光の嵐が過ぎ去った後、仁王立ちする彼女の腕には一本の矢が突き刺さっていた。
 やっ……た…… 安堵に膝をつくと、慌てて後ろからアランが走ってきて僕の体を支える。
 
「約定に従い!  力を与えよう!」
 
 彼女が満足気に頷くと共にごおんと幾度目かの鐘の音が、すべてを置き去りにした。
 
「また、ここ?」
「そう嫌そうにするな!  力を刻むには神の座でなくては上手くできん! 特に俺は下手だからな!  下界ですれば、それこそ木端微塵かもしれんぞ!」
 
 そんなこと偉そうに言わなくていいですー…… ってここにはアランは来てないらしい。あたりを見回してもあるのは多種多様な弓や獣の皮ばかりだ。
 
「あの少年は! 既に俺の力の保有者である!  よって別にここまでくる必要はない!」
 
 というかその大声もそろそろやめて欲しい。距離が戦っていたときより近いせいかすっごい響く。
 
「これは生来のモノ故!  諦めよ! 兎も角、先ほどの剣を出すがよい!」
 
 はいぃ近い近い近い! もう神様って理不尽かつ暴虐なものだって思い知りましたのでおとなしく従っておきます。
 
ClaíomhSolais
 
 言葉に出すと同時に、先ほどと同じ光の剣が僕の胸元に浮かび上がる。うーん、しかしこの剣できるかもって思った目くらましが本当にできるとは。でも、もしかして力が目くらましだけとかそういうオチはないよいね?
 
「その剣の力を引き出すのは!  お前の経験がすべてである!  俺たち神は!  それに力を与え、姿を持つよう導くのみ!」
 
 そういって伸ばした狩猟神の手の平から光の奔流が剣へと延びる。おお、なんかそれっぽいそれっぽい。こういう感じのを最初っからやってくれればいいのに。なんでこう試練とかいろいろやろうとするのかな。私はもっとちゃんとしたチートを要求するー!
 やがて光の流れが止まると、先ほどよりほんの少し剣としての姿っぽくなっていた。気のせいって言われれば気のせいかもしれないってぐらいだけど、ちょっと進歩したような気分にはなる。
 
「えーと、今回はどんな力なんです?」
「うむ!  我が力はその剣をそのまま矢とするSagittalucisである!」
 
 光ってぶん投げたところで威力になるのだろうか。威力って速度に重量がかかるから、重さがない光なんて投げたところで、すぽーんって通りすぎるか消えるだけじゃ……
 
「お前の考えはよくわからぬが!  その矢は放たれた所から狙ったところに向けて!  必ず真っ直ぐ進む!」
 
 まぁ光だからね、直進するよね。でも狙ったところに向けて・・・・・・・・・・
 
「その通り!  狙った所までに何があろうと!  突き抜けて直進する!  これぞ我が奥義の力である!」
 
 思ってたより強かったー! 障害物突き抜ける矢なんて反則だ! これだよこれ!  こういうチートな力を待ってたんだよ! 使い勝手抜群じゃん!
 
「であるが、すべてを見通す目を持たぬ限り! 視線は障害物に遮られる! そう甘くないのが現実よ!」
 
 ああー! やっぱりオチがあった…… 台無しじゃん、期待したのに! な! ん! で! こう毎回毎回ままならないことばっかになるのかなぁ……
 でもまぁ狙ったポイントを遮るように相手を誘導すればまだ使える…… かな?
 
「その場合は意志を強く持ち! うまくいけば相手を両断することも可能である! しかし、大体の人間は遮られた時点で意識は相手に向いてしまうな!」
 
 ですよねー…… ていうかこれが奥義ってことは、この光の矢を使って魔物の王とやらを倒したのだろうか。だとすれば、一体どうやって……
 
「俺の場合は! 生来の加護として! 光明神と狩猟神双方の加護を受けておったが故に! 狩猟神としての光の矢と光明神の加護の大鷲の目をもって、どこでも見通すことができたのだ!」
 
 加護が2つ!? ずっこい! そっちの能力もほしかった! そしたら色々できるじゃん。なんで矢の方だけを渡したし!
 
「そちらの能力は光明神の管轄故に! 我が種の結実はあくまでも狩猟神だからな!」
 
 つまり光明神さまに会ってなんとかできれば、見通す目とこの矢がセットにできるってことだろうか。それなら是非ともに会って手に入れたいのだけれど。
 
「知らん!」
 
 知らんて。実はこの神さまこそ力の神様だったりしない?  主に脳筋的な意味で。
 なんだろう、つくづくうまくいかないなぁ。まぁこれはこれで使い方を頑張って考えよう。きっと猫だまし以外に使い道だってあるはず。
 
「うむ! 己が努力こそが結実へ至る一番の! 早道である! それではさらばだ!」
 
 がんがんと響く声の中、ごおんとまた鐘がなった。
 
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