34 / 79
三章 王都にて
お昼
しおりを挟む
歴史の詰め込み勉強と魔法の実習の後は楽しみにしていた昼食だ。
ミュールに案内されてたどり着いたのは大きなホール。そこにはいくつもの長机と椅子が並べてある。
とはいえ、埋まっている席は半分ほどで歯抜け状になっており、隅から隅までじっくりと見ることができた。
「あの奥のところで料理を受け取るだけだから」
某魔法学校みたいに机に色々置いてある形式ではなく、奥の調理室から受け取る形式の様だった。いくつか種類があるのか、見て取れる机にはそれぞれ違ったものを食べている。
ミューラと共に食事を受け取って場所を確保すると、ちょっと一心地ついた気がした。昼食に選んだのは焼きソーセージと茶色のパンとロールキャベツのようなスープだ。
味は中々悪くない。パンがちょっと固めだけど、しょうがないよね。どうにもふわふわのやわらかいパンというのは中々に貴重なものらしい。
今までのところ中が白いパンには未だ巡り合えていない。
しばらくそうして食事をしながら辺りを見回していると、アランが見当たらないことに気が付いた。
先に食べてしまったのか、それともまだ何かやっているのか――
「あら、さっき言ってた子がいないのが気になる? 気になるの?」
気が付いたミューラに早速食いつかれてしまう。別に寂しいとかそういうのじゃなくて、お昼食べたのかまだなのかが気になっただけなんだけど。
「武術系は午前は自主練で、納得するまでやってる子が多いから、遅れてることの方が多いわ」
「そうなんだ、気になるっていうより、結構量食べる奴だからどうするのかなーって思ってさ」
「それを気にするっていうのよ! いいわー青春青春」
この子結構人の話聞かないことあるね。典型的な恋に恋するタイプなんだろうか。こういう話をうまいこと曲解して恋愛話にもっていく癖がある。
「メルちゃんは武術系の授業も受けるんでしょ? 午後が武術系の授業だからそこで頑張ってアプローチしなきゃ!」
いや、だからそういうんじゃないんだけど…… 何れにせよ、午前が魔法系で午後が武術系かぁ。腹ごなしにはちょうどいい組み合わせだね。でも、どこに行けばいいんだろ。
「午後は校舎前に広場があったでしょ、あそこら辺で人が集まってるところにいけば大丈夫よ」
ナイス、ミュール。色々詳しいから便りになるなぁ。
「行って相手に困ったら青い長めの髪でこんなちょーっと釣り目の子に声かけたらいいわよ。ルームメイトのタリヤだから、言えば色々教えてくれるわ」
指でくいーっと目じりを持ち上げて教えてくれるミュール。きっと釣り目美人さんなんだろう。武術系はミュールは受けていないらしいので、これは助かる情報だ。
「私は体動かす分には才能がなくてねー。先生から剣は怪我するから持つなって言われちゃった」
「僕だって似たようなものだよ。基本を習った先生に剣より鈍器で殴っとけって言われたよ」
「あー、だから持ってたのがメイスだったのね」
さらに僕の得ていた加護が力の神様だったから、物理で殴るのが一番ダメージが出やすいかったっていうのもあるしね。ちなみにミュールはうらやましいことに、知恵の神様の加護らしく、魔法はかなり得意なようだった。さっきの授業でも色々と魔法をこっそり見せてくれた。僕もあんな風に自由自在に魔法使えたらいいんだけどなぁ。でもそのためには覚えることが多すぎてどうしてもうんざりしてしまう。
「お互いの持ってないものって余計に良く見えるのよねぇ。私も剣でこう、ちょやーって戦ってみたかったなー」
空手で剣を振る真似をするミュール。その仕草もかっこよさよりも、可愛さが目立つ。ちなみにばいーんも揺れる。
僕としては魔法も武術もいいからそのばいーんをちょっとでも分けてほしいって思うけど、口にはだせないね、これは。
食べ進めていると、やがて人は減っていき、かわりに入り口には少々威勢の良い声の一団がやってくる。
ちらりと視線をそちらへ向けてみれば、その中にアランがいる。ということはきっと武術系の練習が一段落したのだろう。彼ももう仲間と打ち解けたのか、肩をたたきあったり笑顔で対応しいていて、こちらに気がつく様子はない。
「僕は食べ終わったから、先に広場の方にいってみるよ」
「うん、夕ご飯はみんなで食べようね」
食器を指定の場所に返してホールを出る。
部屋に戻って用意をしてから外に出てみれば、高く登った日がじりじりと肌を焼く感覚が心地よい。日焼け止めとかはこの世界じゃ望むべくもないから、長袖のチュニックを着てきたけど、少し蒸し暑くも感じる。
誰もいない広場はどこか無人の学校のグラウンドを思わせるほどに風景が寂しい。せいぜい賑やかしに打ち込み人形があるくらいだろうか。
特にすることもないので、日陰で寝っ転がりたい気分になるけども、それをしていたら授業を寝過ごす自信がある。
かといって特段することもないので、眠気覚ましも兼ねて済の方で準備運動を始めてみた。
全身をくまなく動かしていると、筋肉や筋が伸びる感覚があって、気持ち良い。実は結構体やわらかいほうなんだよね。
ついでに開脚して地面にぺったり体をくっつけてみる。地面の熱さが直に伝わって汗をかくけども、時折吹く風が体の熱を奪ってくれる。
この心地よさのまま過ごせればいいんだけど、やがて校舎の入り口からは先程と同じように元気な声の一団が現れ、広場の方へ向かってくる。
さぁ午後の運動、がんばろう。
ミュールに案内されてたどり着いたのは大きなホール。そこにはいくつもの長机と椅子が並べてある。
とはいえ、埋まっている席は半分ほどで歯抜け状になっており、隅から隅までじっくりと見ることができた。
「あの奥のところで料理を受け取るだけだから」
某魔法学校みたいに机に色々置いてある形式ではなく、奥の調理室から受け取る形式の様だった。いくつか種類があるのか、見て取れる机にはそれぞれ違ったものを食べている。
ミューラと共に食事を受け取って場所を確保すると、ちょっと一心地ついた気がした。昼食に選んだのは焼きソーセージと茶色のパンとロールキャベツのようなスープだ。
味は中々悪くない。パンがちょっと固めだけど、しょうがないよね。どうにもふわふわのやわらかいパンというのは中々に貴重なものらしい。
今までのところ中が白いパンには未だ巡り合えていない。
しばらくそうして食事をしながら辺りを見回していると、アランが見当たらないことに気が付いた。
先に食べてしまったのか、それともまだ何かやっているのか――
「あら、さっき言ってた子がいないのが気になる? 気になるの?」
気が付いたミューラに早速食いつかれてしまう。別に寂しいとかそういうのじゃなくて、お昼食べたのかまだなのかが気になっただけなんだけど。
「武術系は午前は自主練で、納得するまでやってる子が多いから、遅れてることの方が多いわ」
「そうなんだ、気になるっていうより、結構量食べる奴だからどうするのかなーって思ってさ」
「それを気にするっていうのよ! いいわー青春青春」
この子結構人の話聞かないことあるね。典型的な恋に恋するタイプなんだろうか。こういう話をうまいこと曲解して恋愛話にもっていく癖がある。
「メルちゃんは武術系の授業も受けるんでしょ? 午後が武術系の授業だからそこで頑張ってアプローチしなきゃ!」
いや、だからそういうんじゃないんだけど…… 何れにせよ、午前が魔法系で午後が武術系かぁ。腹ごなしにはちょうどいい組み合わせだね。でも、どこに行けばいいんだろ。
「午後は校舎前に広場があったでしょ、あそこら辺で人が集まってるところにいけば大丈夫よ」
ナイス、ミュール。色々詳しいから便りになるなぁ。
「行って相手に困ったら青い長めの髪でこんなちょーっと釣り目の子に声かけたらいいわよ。ルームメイトのタリヤだから、言えば色々教えてくれるわ」
指でくいーっと目じりを持ち上げて教えてくれるミュール。きっと釣り目美人さんなんだろう。武術系はミュールは受けていないらしいので、これは助かる情報だ。
「私は体動かす分には才能がなくてねー。先生から剣は怪我するから持つなって言われちゃった」
「僕だって似たようなものだよ。基本を習った先生に剣より鈍器で殴っとけって言われたよ」
「あー、だから持ってたのがメイスだったのね」
さらに僕の得ていた加護が力の神様だったから、物理で殴るのが一番ダメージが出やすいかったっていうのもあるしね。ちなみにミュールはうらやましいことに、知恵の神様の加護らしく、魔法はかなり得意なようだった。さっきの授業でも色々と魔法をこっそり見せてくれた。僕もあんな風に自由自在に魔法使えたらいいんだけどなぁ。でもそのためには覚えることが多すぎてどうしてもうんざりしてしまう。
「お互いの持ってないものって余計に良く見えるのよねぇ。私も剣でこう、ちょやーって戦ってみたかったなー」
空手で剣を振る真似をするミュール。その仕草もかっこよさよりも、可愛さが目立つ。ちなみにばいーんも揺れる。
僕としては魔法も武術もいいからそのばいーんをちょっとでも分けてほしいって思うけど、口にはだせないね、これは。
食べ進めていると、やがて人は減っていき、かわりに入り口には少々威勢の良い声の一団がやってくる。
ちらりと視線をそちらへ向けてみれば、その中にアランがいる。ということはきっと武術系の練習が一段落したのだろう。彼ももう仲間と打ち解けたのか、肩をたたきあったり笑顔で対応しいていて、こちらに気がつく様子はない。
「僕は食べ終わったから、先に広場の方にいってみるよ」
「うん、夕ご飯はみんなで食べようね」
食器を指定の場所に返してホールを出る。
部屋に戻って用意をしてから外に出てみれば、高く登った日がじりじりと肌を焼く感覚が心地よい。日焼け止めとかはこの世界じゃ望むべくもないから、長袖のチュニックを着てきたけど、少し蒸し暑くも感じる。
誰もいない広場はどこか無人の学校のグラウンドを思わせるほどに風景が寂しい。せいぜい賑やかしに打ち込み人形があるくらいだろうか。
特にすることもないので、日陰で寝っ転がりたい気分になるけども、それをしていたら授業を寝過ごす自信がある。
かといって特段することもないので、眠気覚ましも兼ねて済の方で準備運動を始めてみた。
全身をくまなく動かしていると、筋肉や筋が伸びる感覚があって、気持ち良い。実は結構体やわらかいほうなんだよね。
ついでに開脚して地面にぺったり体をくっつけてみる。地面の熱さが直に伝わって汗をかくけども、時折吹く風が体の熱を奪ってくれる。
この心地よさのまま過ごせればいいんだけど、やがて校舎の入り口からは先程と同じように元気な声の一団が現れ、広場の方へ向かってくる。
さぁ午後の運動、がんばろう。
0
あなたにおすすめの小説
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる