異世界島流しの罪名は、世界樹の枝を折ったから!? ~一難さってまた一難な僕っ娘冒険記~

矢筈

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三章 王都にて

武術も楽しいね

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 辺りからは木剣のぶつかる音が響き渡る。僕は今、目の前の青髪の女の子と幾合目かの競り合いをしていた。

 僕の戦いのスタンスからして先制をとれないのはよくわかっていたけど、合わせるぐらいしかできない。それほど前に彼女、タリヤの腕は逸していた。

 しかも向こうは両手持ちのロングソードでこっちは盾にショートソードという状態で、未だに一手も彼女にとどいていない。

 なにせ、両手で扱う1m近い剣は想像よりも一撃が重く、僕の技量じゃ弾ききれない。なんとか抑えきっても、僕がショートソードを繰り出すころには、彼女は既に僕の間合いからは脱してしまっている。

 しかもここまでやってきて、息を乱していすらいない。さらに僕と同じ力の神様の加護持ちときたら、もはや相手になってるとは言えないだろう。

 騎士さんに習ってたころは、両手で剣を扱う手合いは一撃を避けるか耐えれば隙ができやすいと聞いてはいたけど、彼女にそんな様子は一切ない。

 というかただの木剣のはずなのに、盾で受けた手がしびれるほどってどんだけなんだか。

 それでいて、彼女の体はどこにそんな力があるのかと思えるほど細く、しなやかなその肉体は猫科の動物を思わせるほどだ。

 健康的な汗をうっすら浮かべたその肌は、どこか色気を感じさせるほどに彼女は完成してると思えた。それこそ、なんで学院に通ってるのかが分からないくらい強い。

 終いには、大振りの一撃に身を構えた瞬間、盾を掴まれて引き倒されてしまった。



「タニヤは強いねぇ」



 地面にひっくり返ったまま見上げる。そこには心配そうに見下ろしてくれる彼女の顔。



「……メルタは受けることをまず考えすぎ、そのくらいの大きな盾なら押し込むとか、直接殴ればいい有効打になる」



 ごもっともで。といっても僕自身武術が得意なわけじゃないんだよね。生前だって別に何か習ってたこともないし。

 聖堂の騎士さんはなんだかんだで手加減をしてくれていただろうから、こういう敗北は良い経験になりそうだ。

 差し出された手を取り、立ち上がる。僕はもう完全に息も上がってるし、汗まみれだ。

 でもこの疲れもどこか気持ちよく感じる。やっぱり体を動かすのはいいね。

 それに、タニヤも目つきも確かにちょっと釣り目だし、ちょっときつそうな印象だったけど、あまりそういうことはなかった。

 こちらが攻め手でも受け手でも、的確なアドバイスをくれる。

 しかしこまで負けてしまうと、頭の隅に武器を変えてみたらという考えも浮かんでしまう。でもそれはきっと言い訳だよね。



「メルタもベリエル様の加護を受けているなら、もっと重量系の武器でもいいと思う」

「普段はメイスなんだけどね」

「メイスもいいけど、長柄の武器もいい。間合いを取るなら、私みたいな両手剣かハルバードもありかも」



 両手剣はタニヤみたいに動ける自信がないからおいておくとして、ハルバードかぁ。

 確かに間合いはあればあるだけ有利だし、槍は歴史としては強かったって話も聞くから試してみようかな。

 でもそれよりもまずは、休憩がしたい。広場から少し離れたところに座り込む。



「体力も大事だけど、きちんとスキルを確認して習得した方が良い」



 隣に座り込んだタニヤが慰めてくれる。覚えることが多すぎて、頭も体もくたくただ。

 だいたい魔法は覚えるのはある意味わかりやすいけど、スキルはどうしたら取得したって言えるんだろう。



「ベリエル様の加護があるからきちんとスキルを取れば、安定」

「う…… でもどこで確認できるのさ」

「学舎にボードがあるから、あとで案内する」



 それだけ答えると、タニヤは立ち上がってまた別の人と組み手をしに行った。

 武術の授業は殆どが組み手でお互いを講評するか、指導役を読んで見てもらうかの二択だ。

 今回ぼくはタニヤにお世話になりっぱなし。

 アランはというと、仲良さそうに金髪の男の子とお互い両手剣で組み合いをしている。なかなか楽しそうだ。

 しかし魔法にしてもスキルにしても、もうちょっとわかりやすくしてくれたら良いのにって思うのは僕だけだろうか。

 人に色々責任載っけてるんだから、サービスくらいして欲しいよね。今のところアランが僕にサービスされてるんじゃなかろうか。もしかして彼が実は主人公だったり?



「あっつーい」



 疲れを取るのも含めて伸びをしたまま地面に横たわるも、じわじわと背中から伝わる熱さにまけて、直ぐに起き上がる。

 視線を左右させれざ、タニヤは自分より体格の良い男の子にも競り勝っていた。



「この一年でああいう風に立ち回れるようになれば良いんだけど、どこまでできるかなぁ」



 頭の中でハルバードを振り回す自分を想像してみる。かつて主武装がメイスにハルバードなんて重量級のヒロインっていただろうか。

 ハルバードはまだしもメイスはなかなか思い浮かばない。でも便利なんだよね、メイス。



「ちょっと試してみるかぁ」



 盾とショートソードを模擬武器の収めてある箱に戻して、別の箱からハルバードを取り出す。当然先も木でできているが、中々に重量感がある。長さは僕の身長より長めなくらい。

 クルクルと回してみると、存外手に馴染む。



「これならちょっとできるかも」



 端っこの方ではちょうどアランが組み手を終えたところだし、ちょっと実験台になってもらおう。
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