異世界島流しの罪名は、世界樹の枝を折ったから!? ~一難さってまた一難な僕っ娘冒険記~

矢筈

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三章 王都にて

冒険と買い物

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「さぁさぁさぁ、初仕事! 楽しみね!」
「……」 
 
 翌日一人だけテンションが高いミュールと相変わらずのタニヤを引き連れて僕は王都から3時間ほどのちょっとした森までやってきていた。
 ミュールを見てるとどこか犬を思い出すなぁ。特にこう、散歩へ行く前の段階でテンション上がってる姿はそっくりだ。
 無事に冒険者としての登録を済ませた二人は、貰ったメダルで盛り上がり、初仕事としてこの森での滋養に良いらしい茸を採りを選んだ。
 
「今回は3人だから、タニヤに警戒してもらって僕とミュールで茸をさがそうか」
 
 僕の初仕事は一人だったから、最初ビクビクしながら採取してたもんだ。その挙句イノシシとアランに遭遇したわけで、良かったのか悪かったのかよくわからないね。
 
「森の中は何が出るかわからないし、気を抜かないでね」
 
 僕たち三人とも、学院に申請を出してきている。だから万が一の事だけはないようにしたい。そのために3人とも武器を借りてきているのだ。
 タニヤはロングソード、僕はメイスとハルバード、ミュールは護身用のナイフだけだけど。
 といっても王都近くのこの森で厄介な魔獣がでた記録はなく、せいぜい普通のイノシシか熊あたりだそうだ。そうなると実質タニヤだけで過剰火力な気もするけど、念には念を入れるべきっていうのが僕の考えだから。
 
「簡単な警戒だけなら、魔法でいいのに?」
「魔法は便利だけど、生身で警戒するほうが身に着くかなって」
 
 僕の知らない魔法には、どうやら周囲の敵意を探知するものがあるらしい。そんな便利なのあるなら最初に知っておきたかったなぁ。でも詳しく聞いてみれば、その魔法は明らかに自分に向いている敵意のみを探知するらしく、敵意が向いてない、こちらをまだ見つけて警戒している段階だったり、他の人に意識が向いている敵には反応しないらしい。つまり集団で警戒をするのなら、結局生身でやるのが手っ取り早いのだ。
 貰った茸の絵図を確認しながら周囲を探索する。今回は薬草と違って木の幹に生えるものらしいので探すのが比較的簡単ではあった。
 時間がたつにつれ、ミュールが抱えた籠の中身がつまっていく。今回は別段運が悪くはないらしく、何かに遭遇する気配もない。
 
「うーん、これだけ?」
 
 そのあまりの何もなさに、ミュールが不満をつぶやく。彼女としてはどこか華々しく襲い来る敵を倒したりとかそういうイメージがあったのだろう。まぁ僕も一緒だったけど。
 
「採取系の仕事ならこんなもんだよ」
「えー」
 
 僕の返答にも不満の声が返ってくる。正直、採取系で何かに出会うかどうかはほんと運の良し悪しとしかいえない。それでも、その運が悪い方をひいてしまえば、術を持たない人であれば死ぬことすらありえる。僕が吹っ飛ばしたイノシシだって、人を殺しかねない大きさだった。
 だからこそ、それを冒険者に委託して金銭を払うことで死のリスクを回避しているわけだ。
 危険度が増せば増すほど、収入が上がる。それは前の世界でもこの世界でも一緒だ。
 やがて、何の出来事もなく籠が茸でうまっていく。
 
「色々学校から借りて準備したのに、何もなかったねー」
「……何もないのが一番」
 
 タニヤの言う通りだ。これでまたイノシシに遭遇したら、彼女がおそらく一蹴してしまうだろうが、後始末も面倒くさい。
 それに万が一にでもミュールが狙われでもしたら、もっと大変なことになる。
 誰にも怪我がなく、すべてが終わる。それが一番だ。
 帰路の間、ミュールは終始つまらなさげにしてはいたものの、報酬を受け取ればその顔はかなりのご満悦に変わっていた。
 
「これでメルちゃんの改造計画の第二弾ができるね!」
 
 そこは忘れておいてほしかったなぁ。今度は僕がしょぼたれる番だ。
 
「ねぇミュール。それ絶対必要?」
「絶対!」
 
 折れてくれるつもりはないらしい。足取りが重い僕を目当ての場所へ連れて行こうと、手を掴んで思いっきり引っ張ってくる。
 あぁ、犬の散歩で時々こういうことあったなぁ。ストップって言ってるのに全然聞かなくて、半ば引きずられる勢いで散歩したことを思い出す。
 ほどなくたどり着いたのは、看板に女性の絵だけが掛けられているお店だ。パッと見は地味なつくりで、何の変哲もないお店のようにみえる。
 
「ここよここ! さぁメルちゃん大改造作戦いってみよー!」
 
 扉を開けてさっさと中に入ってしまうミュールを追いかけてみれば、そこは正しく女の園といえる場所だった。
 外からは見えない様にはされているものの、トルソーを使って数々の下着類が展示されている。
 うん、思ってたよりもハード! ていうか、中世ぐらいだと思ってたのに何でこんなに発展してるんだろう。
 
「メルちゃんは髪が赤いから、きっと黒とか赤とかよく映えるよー」
 
 何、映えるって。なんで見せること前提になってるんだ。
 
「ちょっとまってミュール、僕もういっぱいいっぱいなんだけど。このあたりの普通のじゃだめなの?」
 
 僕が選んで持ち上げたのは、何の変哲もない白のセット。飾りっ気がないって? 見せる気なんて毛頭ないからこれでいいんだよ。
 
「だめだめ、もっとこう扇情的にいかないと!」
 
 彼女的には納得はできないらしい。引っ張りだしてきたのはそれこそ僕の髪色のように真っ赤な……
 
「Tバックじゃん! やだよ!」
 
 派手すぎるし、昨日試したみたいなミニ丈の状態でこれはもう恥ずかしいを通り越してしまう。
 
「え~、でも引き締まるよ? 身も心も」
 
 身は引き締まってたいけど、こういうのはいりませーん。
 半ばミュールから奪い取るようにしてその下着を元の列に戻す。
 なんでアランのために僕だけこんな恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだろう。今更ながらの疑問が頭に浮かぶ。
 
「もぅ、でもこういうのは着けてみてからが本番よ」
 
 別の棚から下着をいくつも引っ張りだしてにじり寄るミュール。その姿に僕は抵抗を諦めて、しばしきせかえ人形になることを受け入れたのだった。
 
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