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三章 王都にて
旅
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翌朝、朝食を食べ終えるとすぐに出発した。今日中に次の町へ着かないと食料がなくなっちゃうからだ。そして、歩き始めて十数時間後、ようやく最初の町にたどり着いた。もう日は完全に落ちていて、すっかり暗くなってしまっていたがなんとか辿り着けたのはよかった。
「まずは宿を取らないと……」
くたくたの中、僕達は呟きながら町の門へと入っていく。
この町は王都の北東に位置する小さな町である。目的地の 領に行くには北の森を通る必要があり、そのための補給地点として発展した町である。
「わりぃが部屋は四人雑魚寝部屋くらいしかねぇな」
辿り着いた宿屋で言われた一言である。なんとか空いているところは見つけたものの、最早個室だなんて贅沢は言えないようだ。
ミュールとタニヤには悪いけど、ここは我慢してもらうしかない。
時間的にも金銭的にも余裕はないからだ。
「私たちの事は気にしなくていいから」
ミュールの言葉に甘えて、提示された部屋を何とか確保する。
アランを露店にご飯の買い出しに行ってもらって、残りの3人で寝床を整える。
「まさか、こんな事になるなんてね」
「……帝国は不凍港が欲しいから仕方ない」
毎回の紛争の理由はそこだったらしい。だが今回は条約破りとはなかなか穏やかではないのは何でだろう。
「……恐らく、力推しできるだけの何かを持っているか、中枢部が軍事掌握されてるかだと思う」
流石タニヤは詳しい。
「兎も角目的は港が封鎖される前にコドル王国に渡ってしまう事ね」
僕の言葉に二人とも頷いて返してくれる。意思統率が出来ているなら安心だ。
「お金の問題もあるから、これからも相部屋になる可能性が高いけど、ごめんね」
「いいのよー、気にしなくて。あ、でもおっぱじめないでね」
「ふんっ」
そんなことするもんか!
暗くなりつつある雰囲気をミュールが壊して、僕がそのばいーんを弾く。
その弾力を僕にもよこせ!
「それより、アランが帰ってくる前に体拭いて着替えないと」
1日の汚れくらいはなんとかしておきたいもんね。
皆であわてて服を脱いで体を拭う。
本当なら風呂なりサウナなりでらすっきりしたいけど、今はそこまで贅沢を言える時ではない。
そうこうしているうちにアランが帰ってきた。両手いっぱいに食べ物を抱えて。
この世界って意外と肉料理が多いよね。まぁ、海が遠いし前世みたいに冷蔵運搬技術とかなさそうだから当然と言えば当然なのかな?
食事を受け取ると、床に座り今後の目標を話し出す。
「次の街でファルカ領だ。そこで食料とか整えて、次のダルマン領を目指して一気に行こう」
買ったきてもらったサンドを頬張りながら、アランが指さす地図を確認する。
地図上でも目指す港まではまだ結構な距離があるのがわかる。
「そんで問題なのが帝国の進路なんだが、今聞いてきた話だと南下した後、やっぱり港を目指して東進しているらしい」
地図の上をアランがなぞる
「軍隊行動だし、王都からも迎撃の部隊が出てることを考えりゃ、途中の休息を最小限にしておけば最悪の事態は免れると思う」
あとの問題はみんなの体力だ。僕やタニヤは力の神様の加護があるから、体力としてはなにも問題はない。アランも男だし大丈夫だろう。
問題はミュールだ。なにせ武術をやっていないから一番体力としては懸念が残る。
「私は、大丈夫。最悪置いてってくれれば――――」
「僕かタニヤで担ぐから大丈夫」
彼女の言葉を打ち消すように被せる。ここまで一緒に来て、おいていくだなんだ後味の悪い真似ができるわけがない。
僕かタニヤなら荷物を纏めて持つこともミュールを担いでいくこともできるはずだ。
「とりあえず、今日は飯食ったらさっさと寝よう。明日からは野営で過ごすのも増えるから、今の内に寝とかないと後が大変だぞ」
「そうだね、そうしよう」
アランの言葉に同意して、急ぎ目でご飯を食べると、横になる。食後すぐに横になると体に良くないとは聞くけども、今はそんな事いってる場合じゃあない。
明日からの体力を確保をするためにも早めに休んでおかないと。
雑魚寝部屋に4人分の荷物がある所為で左右は非常に狭い。実際顔を横に向ければすぐそこにアランがいる。
それこそ肩が触れ合う一歩手前ほどの距離だ。久々の近い距離に少しドキドキするけども、彼はそんなことお構いなしらしい。
しばらくの後には寝息が聞こえてきた。なんか僕ばっか損してる気がする。
同じ用な夜を何度過ごした頃か、やっと僕たちの視界に海が映るようになった。
あと、もう少し。距離的には今日中に港町に着けるはずだ。全身疲れでぼろぼろだけど、終わりが見えてくれば色々と我慢だってできる。
重い足取りで一歩一歩踏みしめれば、やがて日が傾きかけた頃に港町に入ることができた。
街の中はどこか潮の香にみちており、そこかしこに干物を作っているのが見える。
やっと、たどり着いたのだ。あとは船の日取りを確認すれば一安心できる。
ここで僕たちは食料を買う組と情報集め組とに分かれて待ち合わせ場所を決めて行動した。
そして日が落ちる直前にはすべての準備が整っていた。
「船は、4日後だってよ。運がいいというかなんというか」
「食料は無事買い込めたよ、まだ戦時徴用とかはここには来てないみたいだね」
なんともご都合主義なことだった。帝国は港町より手前の街で迎撃を受け、停滞。
ここよりも戦地に近い街がいくつかあるので、ここはまだ戦時徴用からは回避できているのだろう。
船も無事出られるのだから本当に運がよかった。この4日でひっくりかえらなきゃ、だけど。
兎にも角にも疲れ果てていた僕らは、食料を買い集める時に確保しておいた宿で泥の様に眠った。
「まずは宿を取らないと……」
くたくたの中、僕達は呟きながら町の門へと入っていく。
この町は王都の北東に位置する小さな町である。目的地の 領に行くには北の森を通る必要があり、そのための補給地点として発展した町である。
「わりぃが部屋は四人雑魚寝部屋くらいしかねぇな」
辿り着いた宿屋で言われた一言である。なんとか空いているところは見つけたものの、最早個室だなんて贅沢は言えないようだ。
ミュールとタニヤには悪いけど、ここは我慢してもらうしかない。
時間的にも金銭的にも余裕はないからだ。
「私たちの事は気にしなくていいから」
ミュールの言葉に甘えて、提示された部屋を何とか確保する。
アランを露店にご飯の買い出しに行ってもらって、残りの3人で寝床を整える。
「まさか、こんな事になるなんてね」
「……帝国は不凍港が欲しいから仕方ない」
毎回の紛争の理由はそこだったらしい。だが今回は条約破りとはなかなか穏やかではないのは何でだろう。
「……恐らく、力推しできるだけの何かを持っているか、中枢部が軍事掌握されてるかだと思う」
流石タニヤは詳しい。
「兎も角目的は港が封鎖される前にコドル王国に渡ってしまう事ね」
僕の言葉に二人とも頷いて返してくれる。意思統率が出来ているなら安心だ。
「お金の問題もあるから、これからも相部屋になる可能性が高いけど、ごめんね」
「いいのよー、気にしなくて。あ、でもおっぱじめないでね」
「ふんっ」
そんなことするもんか!
暗くなりつつある雰囲気をミュールが壊して、僕がそのばいーんを弾く。
その弾力を僕にもよこせ!
「それより、アランが帰ってくる前に体拭いて着替えないと」
1日の汚れくらいはなんとかしておきたいもんね。
皆であわてて服を脱いで体を拭う。
本当なら風呂なりサウナなりでらすっきりしたいけど、今はそこまで贅沢を言える時ではない。
そうこうしているうちにアランが帰ってきた。両手いっぱいに食べ物を抱えて。
この世界って意外と肉料理が多いよね。まぁ、海が遠いし前世みたいに冷蔵運搬技術とかなさそうだから当然と言えば当然なのかな?
食事を受け取ると、床に座り今後の目標を話し出す。
「次の街でファルカ領だ。そこで食料とか整えて、次のダルマン領を目指して一気に行こう」
買ったきてもらったサンドを頬張りながら、アランが指さす地図を確認する。
地図上でも目指す港まではまだ結構な距離があるのがわかる。
「そんで問題なのが帝国の進路なんだが、今聞いてきた話だと南下した後、やっぱり港を目指して東進しているらしい」
地図の上をアランがなぞる
「軍隊行動だし、王都からも迎撃の部隊が出てることを考えりゃ、途中の休息を最小限にしておけば最悪の事態は免れると思う」
あとの問題はみんなの体力だ。僕やタニヤは力の神様の加護があるから、体力としてはなにも問題はない。アランも男だし大丈夫だろう。
問題はミュールだ。なにせ武術をやっていないから一番体力としては懸念が残る。
「私は、大丈夫。最悪置いてってくれれば――――」
「僕かタニヤで担ぐから大丈夫」
彼女の言葉を打ち消すように被せる。ここまで一緒に来て、おいていくだなんだ後味の悪い真似ができるわけがない。
僕かタニヤなら荷物を纏めて持つこともミュールを担いでいくこともできるはずだ。
「とりあえず、今日は飯食ったらさっさと寝よう。明日からは野営で過ごすのも増えるから、今の内に寝とかないと後が大変だぞ」
「そうだね、そうしよう」
アランの言葉に同意して、急ぎ目でご飯を食べると、横になる。食後すぐに横になると体に良くないとは聞くけども、今はそんな事いってる場合じゃあない。
明日からの体力を確保をするためにも早めに休んでおかないと。
雑魚寝部屋に4人分の荷物がある所為で左右は非常に狭い。実際顔を横に向ければすぐそこにアランがいる。
それこそ肩が触れ合う一歩手前ほどの距離だ。久々の近い距離に少しドキドキするけども、彼はそんなことお構いなしらしい。
しばらくの後には寝息が聞こえてきた。なんか僕ばっか損してる気がする。
同じ用な夜を何度過ごした頃か、やっと僕たちの視界に海が映るようになった。
あと、もう少し。距離的には今日中に港町に着けるはずだ。全身疲れでぼろぼろだけど、終わりが見えてくれば色々と我慢だってできる。
重い足取りで一歩一歩踏みしめれば、やがて日が傾きかけた頃に港町に入ることができた。
街の中はどこか潮の香にみちており、そこかしこに干物を作っているのが見える。
やっと、たどり着いたのだ。あとは船の日取りを確認すれば一安心できる。
ここで僕たちは食料を買う組と情報集め組とに分かれて待ち合わせ場所を決めて行動した。
そして日が落ちる直前にはすべての準備が整っていた。
「船は、4日後だってよ。運がいいというかなんというか」
「食料は無事買い込めたよ、まだ戦時徴用とかはここには来てないみたいだね」
なんともご都合主義なことだった。帝国は港町より手前の街で迎撃を受け、停滞。
ここよりも戦地に近い街がいくつかあるので、ここはまだ戦時徴用からは回避できているのだろう。
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