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四章 二つ目の国
山登り
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「人生って後悔の連続だよね」
翌朝、すっきりと目が覚めた僕は先に起きて着替えを始めていたアランを見つめてそうつぶやいた。
「とりあえず、メルタも酒は禁止な」
うん、それはもう言わなくてもそのつもりだ。
なにせ記憶は万全じゃないけど、結構変なことをやらかしていた覚えはある。既にある程度思い出してその恥ずかしさに悶え狂った後だ。
お酒のふわふわ感は楽しいけど、それであんなぐだぐだになってるようじゃ当面お酒は飲めないね。
あーでも美味しい料理にはお酒をちょっとだけつけるみたいな感じで飲むならいいかな?
いやいや、ここで妥協してると絶対またどこかでやらかすような気がする。
そんなことを考えている僕を見て、アランが少し困ったような顔でため息をつく。
「夜もがっつり人を抱き枕扱いしてくれんだから、こっちはたまったもんじゃない」
「うーん、記憶にございません……」
「まぁいいけどよ、もうちょっとこう…… 考えようぜ」
「はいぃ……」
まったくもって正論である。
昨日あんだけの醜態をさらしたわけだし、ここは素直に従っておくべきだろう。
というか、この辺のことをちゃんとしておかないとこれから先色々まずいことになりそうだしね……。
それから身支度を整えて朝食を食べてから街へと繰り出していく。
今日の目的は山越えのための買い出しだ。
山道は基本的に整備されていないうえに岩トカゲみたいなのがいるので、途中で野営がし辛い。つまり上り始めたらある程度下るまでは一気に歩ききってしまわなければいけないのだ。
幸い乗り越えるだけのルートなので、先日岩トカゲを乱獲したあたりから反対側へ回っていくことができるため、体力的にはなんとかなるだろう。
問題はそこからの道のりもそれなりにあることと、道中の岩トカゲ対策、そして森での野営ぐらいだろうか。
基本的な野営道具はあるので、あとは食材の買い出しと消耗品の補充をしておけば問題ない。
あとは明日出発のために英気を養うという形でゆっくりすることになるだろう。
「さて、それじゃまずは雑貨屋だな」
「あいあい」
朝早くということもあってまだ露店も開いていないため、開いている店を探しながら街の中を歩いていく。
この街はそこまで大きくはない。その代わりに聖地としての土産物や生産物で生計を賄っているらしい。
そうやって歩いているうちに、ようやく目当てのお店をみつけて中に入っていく。
登山といっても五合目あたりでぐるっと回る形になるので、そこまで本格的な装備は必要ない。
雑貨屋のメインは主に消耗品だ。冒険と一言にいっても必要なものは結構多い。
特に着火用の木くずに油をしみ込ませたものなどは必需品といっても過言ではない。
アランは雑貨屋に併設されてる研屋に剣を出したようだ。結構岩トカゲ相手に使ってたもんね。刃こぼれくらいしているだろう。
僕のハルバードはあの後確認したけども、刃こぼれ一つ起こしてなかった。結構雑に地面に叩きつけたりしちゃったんだけど、傷一つない。ちょっと怖いね。そんなわけで消耗品を買い込んでいったのだが……。
「あれ? なんでこんなに買うんだ?」
「えっ、だって足りないかもしれないじゃん」
僕の買い物をみて、アランが首を傾げている。女の子には色々あるんだよ。詮索禁止! その後いくつかの店で消耗品を購入していった僕らだったが、そのたびに僕は同じ質問を受けた。
どうやら男の子というのは基本荷物が少ない生き物なのだということがよくわかった一日だった。
翌日、早朝に出発した僕たちは順調に山道を上っていた。
とはいえ基本的には整備された街道のような道ではなく、獣道よりちょっとマシ程度の道だ。
方向を間違えると大変なことになるので、常に太陽の向きを確認しながら道を進む。
当然幾度か岩トカゲの襲撃も受けたので、それらは必要分だけ解体してあとは埋めてきた。ほったらかしにすると余計なものまで呼びかねないからね。
「そろそろ休憩するか」
「ほーい」
太陽の位置を見ながらそう告げてくるアランに返事をしながら腰を下ろす。
一応日陰になっている場所を選んでいるけど、それでも暑いことに変わりはない。
この空いた時間でさっきの岩トカゲの肉を軽く燻製にしよう。
今回は特に保存用とかじゃなく、お昼か夜のおかず用なので熱燻で作っていく。
買っておいたウッドチップを鍋に入れて、その上に網とお肉を載せて火にかけたらOK。
あとは休憩の間いぶしておけば、できあがるだろう。
立ち上る煙を見ながら水を飲む。いい感じにできるといいんだけどなー。
「……よしっ!」
出来上がったベーコンを取り出して、ナイフを入れてみる。うん、いい塩梅にできているみたいだ。
そのまま薄くスライスして一枚つまんで口に運ぶ。…………。
水分が多く残るやり方だから長期間保存はできないけど、その代わりジューシーさがちょうどよく残っている。
もともと鶏肉に近い感じの肉質だったから、このやり方はうまく嚙み合ったようだ。
「俺にも一口」
アランが物欲しそうにしていたのだ、また一枚切り取って口に入れてあげる。
「焼いたのと違ってまたうまいな」
最初の手料理が燻製とはなんともワイルドだけど、気に入ってくれたならそれでよし。
その後もしばらく休んだ後に再び山道へと戻っていく。
太陽が山影に隠れるころ、僕らは目当ての街のある麓まで来ることができた。
あとは森を越えてしばらく歩けば街にたどり着くことはできるけど、無理は禁物。
森の中、すこし広場のように草がはけている場所で火を焚き、野営の準備をする。
さぁ今日の晩御飯はちょっと豪勢にいこうか!
翌朝、すっきりと目が覚めた僕は先に起きて着替えを始めていたアランを見つめてそうつぶやいた。
「とりあえず、メルタも酒は禁止な」
うん、それはもう言わなくてもそのつもりだ。
なにせ記憶は万全じゃないけど、結構変なことをやらかしていた覚えはある。既にある程度思い出してその恥ずかしさに悶え狂った後だ。
お酒のふわふわ感は楽しいけど、それであんなぐだぐだになってるようじゃ当面お酒は飲めないね。
あーでも美味しい料理にはお酒をちょっとだけつけるみたいな感じで飲むならいいかな?
いやいや、ここで妥協してると絶対またどこかでやらかすような気がする。
そんなことを考えている僕を見て、アランが少し困ったような顔でため息をつく。
「夜もがっつり人を抱き枕扱いしてくれんだから、こっちはたまったもんじゃない」
「うーん、記憶にございません……」
「まぁいいけどよ、もうちょっとこう…… 考えようぜ」
「はいぃ……」
まったくもって正論である。
昨日あんだけの醜態をさらしたわけだし、ここは素直に従っておくべきだろう。
というか、この辺のことをちゃんとしておかないとこれから先色々まずいことになりそうだしね……。
それから身支度を整えて朝食を食べてから街へと繰り出していく。
今日の目的は山越えのための買い出しだ。
山道は基本的に整備されていないうえに岩トカゲみたいなのがいるので、途中で野営がし辛い。つまり上り始めたらある程度下るまでは一気に歩ききってしまわなければいけないのだ。
幸い乗り越えるだけのルートなので、先日岩トカゲを乱獲したあたりから反対側へ回っていくことができるため、体力的にはなんとかなるだろう。
問題はそこからの道のりもそれなりにあることと、道中の岩トカゲ対策、そして森での野営ぐらいだろうか。
基本的な野営道具はあるので、あとは食材の買い出しと消耗品の補充をしておけば問題ない。
あとは明日出発のために英気を養うという形でゆっくりすることになるだろう。
「さて、それじゃまずは雑貨屋だな」
「あいあい」
朝早くということもあってまだ露店も開いていないため、開いている店を探しながら街の中を歩いていく。
この街はそこまで大きくはない。その代わりに聖地としての土産物や生産物で生計を賄っているらしい。
そうやって歩いているうちに、ようやく目当てのお店をみつけて中に入っていく。
登山といっても五合目あたりでぐるっと回る形になるので、そこまで本格的な装備は必要ない。
雑貨屋のメインは主に消耗品だ。冒険と一言にいっても必要なものは結構多い。
特に着火用の木くずに油をしみ込ませたものなどは必需品といっても過言ではない。
アランは雑貨屋に併設されてる研屋に剣を出したようだ。結構岩トカゲ相手に使ってたもんね。刃こぼれくらいしているだろう。
僕のハルバードはあの後確認したけども、刃こぼれ一つ起こしてなかった。結構雑に地面に叩きつけたりしちゃったんだけど、傷一つない。ちょっと怖いね。そんなわけで消耗品を買い込んでいったのだが……。
「あれ? なんでこんなに買うんだ?」
「えっ、だって足りないかもしれないじゃん」
僕の買い物をみて、アランが首を傾げている。女の子には色々あるんだよ。詮索禁止! その後いくつかの店で消耗品を購入していった僕らだったが、そのたびに僕は同じ質問を受けた。
どうやら男の子というのは基本荷物が少ない生き物なのだということがよくわかった一日だった。
翌日、早朝に出発した僕たちは順調に山道を上っていた。
とはいえ基本的には整備された街道のような道ではなく、獣道よりちょっとマシ程度の道だ。
方向を間違えると大変なことになるので、常に太陽の向きを確認しながら道を進む。
当然幾度か岩トカゲの襲撃も受けたので、それらは必要分だけ解体してあとは埋めてきた。ほったらかしにすると余計なものまで呼びかねないからね。
「そろそろ休憩するか」
「ほーい」
太陽の位置を見ながらそう告げてくるアランに返事をしながら腰を下ろす。
一応日陰になっている場所を選んでいるけど、それでも暑いことに変わりはない。
この空いた時間でさっきの岩トカゲの肉を軽く燻製にしよう。
今回は特に保存用とかじゃなく、お昼か夜のおかず用なので熱燻で作っていく。
買っておいたウッドチップを鍋に入れて、その上に網とお肉を載せて火にかけたらOK。
あとは休憩の間いぶしておけば、できあがるだろう。
立ち上る煙を見ながら水を飲む。いい感じにできるといいんだけどなー。
「……よしっ!」
出来上がったベーコンを取り出して、ナイフを入れてみる。うん、いい塩梅にできているみたいだ。
そのまま薄くスライスして一枚つまんで口に運ぶ。…………。
水分が多く残るやり方だから長期間保存はできないけど、その代わりジューシーさがちょうどよく残っている。
もともと鶏肉に近い感じの肉質だったから、このやり方はうまく嚙み合ったようだ。
「俺にも一口」
アランが物欲しそうにしていたのだ、また一枚切り取って口に入れてあげる。
「焼いたのと違ってまたうまいな」
最初の手料理が燻製とはなんともワイルドだけど、気に入ってくれたならそれでよし。
その後もしばらく休んだ後に再び山道へと戻っていく。
太陽が山影に隠れるころ、僕らは目当ての街のある麓まで来ることができた。
あとは森を越えてしばらく歩けば街にたどり着くことはできるけど、無理は禁物。
森の中、すこし広場のように草がはけている場所で火を焚き、野営の準備をする。
さぁ今日の晩御飯はちょっと豪勢にいこうか!
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