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四章 二つ目の国
仕事はきっちりと
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「で、やっぱりこうなったか」
今僕たちの目の前に転がっているのはセリアドネの死体だ。
ただし成体の。
今回は毒スキル持ちではなかったものの、なぜかまた僕が真っ先に狙われて迎撃する羽目になった。
「こればっかりは僕何か呪われてるんじゃなかろうかって思ってきたよ」
で、さらに視線の先には3体の成体がこちらを睨みつけている。
朝ごはんの時に運が良いかもとか思ったのが悪かったのだろうか。
全部倒せれば金銭的には良いかもしれないけど、倒すとなるとなかなかに厄介だ。
「アラン、どう?」
「見た目的には毒はないと思うが……他のスキル持ってるかどうかまではわかんねーな」
「とりあえず、鱗さえどうにかできれば何とかなるよね」
「魔法でとりあえず一当てするのです」
それだけ言うとリーナが空に手を翳す。
「槍 炎を纏い 刺し貫くもの」
空に3本の煌々と燃え上がる炎の槍が浮かび上がる。
「炎の槍!!」
風切り音とともに槍がセリアドネにむけて飛翔する。その軌跡は流れ星のように見えるほどの速度だ。
そしてしばしの間を開けて衝撃波とともに爆風が押し寄せる。
「ちょっと、吹き飛ばしたら何も残らないんじゃないの!?」
「3匹同時に相手にするのは下策なのです。これで木端微塵でも一匹分は確保できてるのです」
いやまぁそりゃそうなんだけど。
襲いくる熱波を手で遮りながら、いまだ煙に覆われている着弾地点を注視する。
「それにしても完全詠唱だとすごい威力だね。これはさすがに吹き飛んだんじゃない?」
「いいや、そうでもねぇ」
あ、フラグやっちゃったかな。煙が晴れた先には胴体が吹き飛んだ2体のセリアドネと、おそらくその2体に守られたのだろう、ほぼ無傷の一体が残っていた。
「SYAGAAAAAAAAAA!!」
怒りの咆哮だろうか、天に向けてその一匹が声を上げる。びりびりと振動する鼓膜、あまりの音量に思わず耳をふさいでしまう。
「何あれ反則じゃない? っていうか魔獣でも連携とかするんだ」
「多分だが、あいつが群れの長かなんかじゃねーの」
「どういうことなのです?」
「あいつの鱗の色、他のよりちょっとくすんでるだろ。多分結構長く生きてんじゃねぇの」
アランに言われて目を凝らすようにセリアドネを見る。たしかに、目のまえで倒れているセリアドネと色がわずかに違う。
こういう観察眼が鋭いのはアランのすごいところだね。
「だったらなおさら逃してくれないよね……」
「気をつけろよ。さっきみたいにはいかねえぞ」
アランの言葉と同時に奴が体を縮める。これは防いでられないね。
「散って!」
僕の声と共に三人とも散開する。直後、セリアドネが縮めた体をばねにして僕に向かって突撃してくる。
突進を避けつつ、ハルバードを当てて斬りつけるも硬い手ごたえが返ってくるだけで有効打にならない。
やっぱりただ斬るだけじゃだめだ! 一旦距離を取り、再びセリアドネと対峙するとまた向こうから仕掛けてくる。
今度は先ほどよりも速い! 尻尾の横薙ぎの一閃を飛び下がって避け、そのまま体勢を整えて振り向きざまに全体重を乗せて後ろ足を切り付ける。
「SYAGARAAAAAAAAA!!」
ごきりという少し嫌な手ごたえと共に、足が切断された。これで飛びかかりは封じたはず。しかしその一撃の所為で余計に僕を敵視し始めている。
反撃として繰り出される前足の爪による横なぎはバックステップで回避したのだが、着地に合わせて噛みつきが来る。
その開いた口に魔法がねじ込まれ、爆発する。さらに無防備になった前足をアランが両断した。
しかしそれで攻撃が終わったわけではない。残ったほうの前足で体ごと突っ込んでくる。
それを横に飛んで避けるものの、すぐに向きを変えて再度向かってきた。
まずい、完全に狙いをつけられてしまったようだ。
「くっ……こっのぉ!!」
ハルバードを下から振り上げ、奴の顎にぶちかます。が、これは碌にダメージが通らなかった。けど隙はできた。
「アラン!」
「応よ!」
僕を敵視するあまりに視界から外れていたであろうアランが、全力で目の下側から脳天へ向けて剣を突き出す。
それが致命傷となったのか、セリアドネはそのまま倒れ伏し動かなくなった。
「なんとかなったね」
「ああいう硬ぇ相手なら魔法が一番効くな」
「それでもあの魔法の直撃食らっても無事とは思わなかったのです」
確かにそうだ。鱗もない口の中で炎の槍の爆発をくらって無事だとは思わなかった。あそこで油断しなくてよかった。
「ねぇ、これってどういうことだと思う?」
「んー、こりゃ口の浅いところで爆発してて、思ったよりダメージが通ってねぇな」
倒れ伏したセリアドネの死体の口を開けてアランが確認する。
たしかに前歯や鼻周りに焼け焦げたダメージがあるものの、口の奥の方はそこまでダメージがあるようには見受けられない。
「リーナは一応撃ち抜くつもりで放ったのです……」
うん、きっとリーナは悪くない。不思議なことは色々あるけども兎も角、みんな無事なのは良いことだ。
「とりあえずは依頼達成かな」
「おつかれさん。ほれ、解体すっか」
「お肉山盛りなのです!」
リーナは肉に喜んでせっせと皮を剥いでいる。
僕も目のまえの皮を黙々と処理し始める。
この倒した後の解体タイムって無言になっちゃうんだよねぇ。まるで蟹を食べるときみたいだ。
内臓も薬に詳しい人がいれば、その場である程度の加工ができて活用できるらしいんだけど、残念ながら僕たちにそういう知識はない。
もったいないけども、内臓はすぐ痛むのでここに放置するしかない。幸いここは前の時と違って街からそれなりに離れている場所なので、放置して狼とかがよってきても問題はない。
「お、やっぱスキル持ちだな。石あったぞ」
「やったね! それじゃさっさと戻ろうか」
「今日は何食べるですかね~♪」
僕らはこうして素材回収を終えた後、そのまま街へと戻ることにした。
「はい、これが今回の報酬になります。あとスキル石は剛体の石でしたが、どうされますか?」
「売却で」
「かしこまりました。ではしばらくお待ちくださいね」
しばらく待てば素材と石の分のお金を袋に入れて渡してくれる。今回はなかなかにいい稼ぎになった。
受付嬢のお姉さんの笑顔に見送られてギルドを出る。
外はちょうど日暮れ時、お風呂にでもはいってご飯をたべよう!
今僕たちの目の前に転がっているのはセリアドネの死体だ。
ただし成体の。
今回は毒スキル持ちではなかったものの、なぜかまた僕が真っ先に狙われて迎撃する羽目になった。
「こればっかりは僕何か呪われてるんじゃなかろうかって思ってきたよ」
で、さらに視線の先には3体の成体がこちらを睨みつけている。
朝ごはんの時に運が良いかもとか思ったのが悪かったのだろうか。
全部倒せれば金銭的には良いかもしれないけど、倒すとなるとなかなかに厄介だ。
「アラン、どう?」
「見た目的には毒はないと思うが……他のスキル持ってるかどうかまではわかんねーな」
「とりあえず、鱗さえどうにかできれば何とかなるよね」
「魔法でとりあえず一当てするのです」
それだけ言うとリーナが空に手を翳す。
「槍 炎を纏い 刺し貫くもの」
空に3本の煌々と燃え上がる炎の槍が浮かび上がる。
「炎の槍!!」
風切り音とともに槍がセリアドネにむけて飛翔する。その軌跡は流れ星のように見えるほどの速度だ。
そしてしばしの間を開けて衝撃波とともに爆風が押し寄せる。
「ちょっと、吹き飛ばしたら何も残らないんじゃないの!?」
「3匹同時に相手にするのは下策なのです。これで木端微塵でも一匹分は確保できてるのです」
いやまぁそりゃそうなんだけど。
襲いくる熱波を手で遮りながら、いまだ煙に覆われている着弾地点を注視する。
「それにしても完全詠唱だとすごい威力だね。これはさすがに吹き飛んだんじゃない?」
「いいや、そうでもねぇ」
あ、フラグやっちゃったかな。煙が晴れた先には胴体が吹き飛んだ2体のセリアドネと、おそらくその2体に守られたのだろう、ほぼ無傷の一体が残っていた。
「SYAGAAAAAAAAAA!!」
怒りの咆哮だろうか、天に向けてその一匹が声を上げる。びりびりと振動する鼓膜、あまりの音量に思わず耳をふさいでしまう。
「何あれ反則じゃない? っていうか魔獣でも連携とかするんだ」
「多分だが、あいつが群れの長かなんかじゃねーの」
「どういうことなのです?」
「あいつの鱗の色、他のよりちょっとくすんでるだろ。多分結構長く生きてんじゃねぇの」
アランに言われて目を凝らすようにセリアドネを見る。たしかに、目のまえで倒れているセリアドネと色がわずかに違う。
こういう観察眼が鋭いのはアランのすごいところだね。
「だったらなおさら逃してくれないよね……」
「気をつけろよ。さっきみたいにはいかねえぞ」
アランの言葉と同時に奴が体を縮める。これは防いでられないね。
「散って!」
僕の声と共に三人とも散開する。直後、セリアドネが縮めた体をばねにして僕に向かって突撃してくる。
突進を避けつつ、ハルバードを当てて斬りつけるも硬い手ごたえが返ってくるだけで有効打にならない。
やっぱりただ斬るだけじゃだめだ! 一旦距離を取り、再びセリアドネと対峙するとまた向こうから仕掛けてくる。
今度は先ほどよりも速い! 尻尾の横薙ぎの一閃を飛び下がって避け、そのまま体勢を整えて振り向きざまに全体重を乗せて後ろ足を切り付ける。
「SYAGARAAAAAAAAA!!」
ごきりという少し嫌な手ごたえと共に、足が切断された。これで飛びかかりは封じたはず。しかしその一撃の所為で余計に僕を敵視し始めている。
反撃として繰り出される前足の爪による横なぎはバックステップで回避したのだが、着地に合わせて噛みつきが来る。
その開いた口に魔法がねじ込まれ、爆発する。さらに無防備になった前足をアランが両断した。
しかしそれで攻撃が終わったわけではない。残ったほうの前足で体ごと突っ込んでくる。
それを横に飛んで避けるものの、すぐに向きを変えて再度向かってきた。
まずい、完全に狙いをつけられてしまったようだ。
「くっ……こっのぉ!!」
ハルバードを下から振り上げ、奴の顎にぶちかます。が、これは碌にダメージが通らなかった。けど隙はできた。
「アラン!」
「応よ!」
僕を敵視するあまりに視界から外れていたであろうアランが、全力で目の下側から脳天へ向けて剣を突き出す。
それが致命傷となったのか、セリアドネはそのまま倒れ伏し動かなくなった。
「なんとかなったね」
「ああいう硬ぇ相手なら魔法が一番効くな」
「それでもあの魔法の直撃食らっても無事とは思わなかったのです」
確かにそうだ。鱗もない口の中で炎の槍の爆発をくらって無事だとは思わなかった。あそこで油断しなくてよかった。
「ねぇ、これってどういうことだと思う?」
「んー、こりゃ口の浅いところで爆発してて、思ったよりダメージが通ってねぇな」
倒れ伏したセリアドネの死体の口を開けてアランが確認する。
たしかに前歯や鼻周りに焼け焦げたダメージがあるものの、口の奥の方はそこまでダメージがあるようには見受けられない。
「リーナは一応撃ち抜くつもりで放ったのです……」
うん、きっとリーナは悪くない。不思議なことは色々あるけども兎も角、みんな無事なのは良いことだ。
「とりあえずは依頼達成かな」
「おつかれさん。ほれ、解体すっか」
「お肉山盛りなのです!」
リーナは肉に喜んでせっせと皮を剥いでいる。
僕も目のまえの皮を黙々と処理し始める。
この倒した後の解体タイムって無言になっちゃうんだよねぇ。まるで蟹を食べるときみたいだ。
内臓も薬に詳しい人がいれば、その場である程度の加工ができて活用できるらしいんだけど、残念ながら僕たちにそういう知識はない。
もったいないけども、内臓はすぐ痛むのでここに放置するしかない。幸いここは前の時と違って街からそれなりに離れている場所なので、放置して狼とかがよってきても問題はない。
「お、やっぱスキル持ちだな。石あったぞ」
「やったね! それじゃさっさと戻ろうか」
「今日は何食べるですかね~♪」
僕らはこうして素材回収を終えた後、そのまま街へと戻ることにした。
「はい、これが今回の報酬になります。あとスキル石は剛体の石でしたが、どうされますか?」
「売却で」
「かしこまりました。ではしばらくお待ちくださいね」
しばらく待てば素材と石の分のお金を袋に入れて渡してくれる。今回はなかなかにいい稼ぎになった。
受付嬢のお姉さんの笑顔に見送られてギルドを出る。
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