機械の世界と白い鳥

堕天使あわび

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一の島

小さな魔法使い

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 「…そろそろ着くみたいだな。」
『うん』
「準備できてるか?」
『準備OK!』
「よし。」

「…着いたな。」
『うん』
着いた島は思ったよりも広かったが、一面砂に覆われ、砂漠化していた。
『暑い…』
「そうだな…。…暑いの、苦手か?」
『ちょっと苦手』
「…そうか…。…これ持っとけ。」
クオレは水の入った水筒を取り出し、ユナに渡した。
「!」
『これはクオレの分だよ?』
「別にいい。ほら、持っとけ。」
ユナは少し戸惑ったあと、水筒を受け取った。
「喉が渇いたら飲めよ。」
『うん』
ジャリジャリと音を立てながら歩いていくと、ふと違和感に気づいた。ユナやクオレよりも小さな足跡が、目の前に続いている。ずっと前のものならもう砂が吹き飛ばされているはずだ。ということは、この足跡の主はまだ近くにいるはずだ。
『何見てるの?』
「…ここに足跡がある。まだ残ってるってことは、まだ誰か近くにいるはずだ。」
『本当だ…』
しかし、近くには背の高い茂み以外、何もない。
「!…いや…待て…こんなところに茂みがあるのはおかしいな…。…まさか…。」
クオレが茂みをかき分けるとそこには、綺麗な水を湛えたオアシスがあった。
「…やっぱりな。…ユナ、来てみろ。」
「…。…‼︎」
「俺もこんなにでかいのは初めて見たな。…ん?誰かいるのか?」
クオレの見ている方向には、大きめの茂みが一つあった。すると、茂みから10歳くらいの男の子がひょいっと顔を出した。男の子はピンクと水色のオッドアイだった。
「…えっと、…誰?」
「…。…俺はクオレ。こいつはユナだ。お前は?」
「…僕はシクル。よろしくね。…君たちはなんでここにきたの?」
「それはこっちのセリフだ。お前、子供だろ?なんでここに来たんだ?目的は?」
「子供じゃないもん!…確かに子供だけどさ…そんな言わなくても良いじゃん…。」
「あ、気にしてたのか?悪い。」
「…。…別にいいよ。…で、僕の目的を聞いてたよね?…僕は、お兄ちゃんを探して旅してるんだ。」
「他に家族はいないのか?」
「いないよ。小さい頃にモンスターに襲われて、みんな死んじゃった。」
「‼︎」
「…で、その生き残りのお兄ちゃんを探してるんだ。」
「…。…俺達と一緒にくるか?」
「え、なんで急に?」
「子供が一人でいるのは危ないし、そのお兄ちゃんが見つからなかったらどうするつもりなんだ?」
「…確かに…。…じゃあ、クオレ達に着いていくよ!あ、僕、魔法が使えるんだよ?頼りにしても良いからね!」
シクルはふふんと胸を張った。
「…ああ。頼りにさせてもらう。」
クオレは少し微笑んだ。
「これからよろしくね!」
「よろしく。」
『よろしくね』
「…?なんで喋らないの?」
「…ユナは生まれつき話せないみたいなんだ。」
「あっ、ごめん…。」
『気にしてないよ』
「…優しいんだね。ありがとう。」
『うん』
「そういえばクオレ達は何が目的でここに来たの?」
「あー、それはな、…簡単にいえば、宝玉を三つ集めてユナを家に返すためだ。」
「…その宝玉っていうのがこの島にあるの?」
「ああ。」
「…へぇ…。僕も手伝うね!」
「ありがとな。」
「うん!」
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