【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一

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第一章 最弱最強の弓使い編

第6話 怒りに燃える弓使い

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《翔視点》

 ナニモン? ……ああ、今は髪方を少し変えてて、オマケにゴーグルも付けているからそりゃわかんないわな。
 それならそれで好都合だ。正体がバレて学校で絡まれるのは嫌だし。

 そんな事を考えていると、豪気の視線が俺の左手に向けられた。

「お前、まさか“弓使いアーチャー”か……?」
「そうだけど」

 そう答えると、豪気の視線が鋭くなる。

「え、ちょっと待って! ぷふっ、アーチャーって! そんなゴミ役職を真面目にやってるヤツ、初めて見たんだけどぉ。マジ冗談キツいって! きゃははははは!」

 豪気の元へ駆け寄ってきた赤毛の女性が、堪えきれずに笑い出す。

「ふん。身の程を知らないクソガキか。そんなジョブでダンジョン攻略など、自殺志願者としか思えんな」
「だよね弥彦! あたしもそう思う!」

 弥彦と呼ばれた大学生くらいの男の背中をバシバシと叩きながら、赤毛の女性はケラケラと笑う。

「ああ。お前と同じくらい、頭の中が可哀想なヤツなんだろうな、瀬奈」
「はぁ!? っざけんなこの筋肉ゴリラ! あんたこそ脳みそ全部筋肉で出来てるんじゃないわけ!?」

 息を吐くように暴言を言う弥彦に、瀬奈は食って掛かる。
 
 なんというか……豪気のいるパーティーって感じだ。
 もともと迷惑パーティーとして名を馳せていたが、ここまでヤバい連中だったとは。
 ここは関わらないように、速やかに退散するのが吉だ。
 そう思った矢先。

「くくく、ははは、あっははははは!」 

 不意に、豪気が壊れたように笑い出した。
 
「そうか、“弓使いアーチャー”か……くくっ、これは願ってもないチャンスだな」

 豪気は一歩俺の方に近づいてきて、真っ黒な笑みを浮かべた。

「昼間、クソ生意気なアーチャーに会って、ムシャクシャしてたんだ。アイツの代わりにテメェをいたぶってやらなきゃ気が済まねぇ!」

 うぇえ……。
 俺は流石に言葉を失って、ドン引きしてしまった。
 そのクソ生意気なアーチャーというのは間違い無く俺のことだろうが、問題なのは昼間のアーチャーとこの場にいるアーチャーが別人だと思って、喧嘩をふっかけてきたことだ。
 豪気は今、ムシャクシャする原因を作ったヤツとは全く関係ない人間を、憂さ晴らしのためにいたぶろうとしているのである。

「いたぶらないと気が済まないって……俺に何の関係もないよね?」

 関係は大ありだが、巻き込まれるのは嫌なので今初めて出会った体で話す。

「あるさ。テメェも“弓使いアーチャー”だ」
「……」

 無茶苦茶言ってんぞコイツ。
 ”家の近所のラーメン屋は麺大盛り無料なのに、なんでこの店じゃ金取るんだよ。同じラーメン屋なんだから、こっちも無料じゃなきゃおかしいだろ。俺は金払わねぇぞ。”
 的なトンデモ理論だ。

「えーと。他の冒険者に直接攻撃をしたら、パーティーごとタイムアタック大会失格になるんじゃなかった?」
「それは、だ。お前を攻撃しても、こっちはなんらペナルティを負わない」

 くそっ。
 こういう時だけ理論が通ってるのが、無性に腹立つ。

 確かに、ケガをする可能性のあるダンジョンにおいてはある程度自己責任で完結するため、他の冒険者とのバトルや諍いを禁止しているわけではない。
 皆、ケガを負うリスクを承知で利用規約に同意し、ダンジョン冒険者になっている。その上で、死亡する事態や大きなダメージは避けるために“生還の指輪”の装着を義務化しているのだ。

 もちろん、戦う意志のない者に一方的に攻撃を仕掛けるのはマナー違反であるため、冒険者の間では暗黙の了解で禁じられているのだが、コイツの頭に「マナー」などという言葉があるはずもない。

「だから、ここで俺がお前を排除しようとも問題ないわけだ」
「いや、でも俺にはお前の喧嘩を買う理由がな――」
「ごちゃごちゃうっせえ!!」

 ギュンと風切り音が鳴り、俺の真横を透明な刃が通り過ぎた。
 豪気が激情のままに剣を振るい、斬撃を飛ばしたのだ。
 
「俺はお前を倒さなきゃ気が済まねぇ。戦う理由なんてそれで十分だ!」

……うん。なんか決め台詞っぽく言ってるけど、言ってることはただのクズ野郎だからね?
 どうしよ。マジで戦いたくないんだけど。

 ここから脱出する方法を真剣に考え始めていた俺だったが……次の瞬間、その思考が断ち切られた。

「つーか。戦いの場としては邪魔なもんが多すぎるな。掃除しとくか」
「は?」

 俺が訝しんだ瞬間、豪気は無造作に刀を振るい、ワイバーンの亡骸を吹き飛ばす。
 そして今度は、俺の後ろで気を失っている男性冒険者を吹き飛ばした。
 その一撃で、ダメージ許容量を超えたらしく、男性は救護室に強制転送される。

「んなっ!?」
「はぁ~、ゴミが消えてせいせいしたぜ」

 呆気にとられる俺の前で、豪気は清々しい表情で準備運動を始める。
 その姿を見て、俺の中にある何かがぷつんと切れた。

「おい。今のやって、なんとも思わないのかよ」
「あ? なんの話だ」
「気を失ってる人に攻撃したことだよ!」
「ああ。動けないゴミをいるべき場所に送り返してやっただけだろ? 今頃救護室でぐっすりだろうぜ」
「っ!!」

 俺は唇を噛みしめ、拳をわなわなと振るわせる。

「おいおい。なに怒ってんだ? どうせ死にゃしねぇんだからいいだろ」
「……ほんとに、そう思ってんのか」
「当たり前だろ」
「そうか……わかった」
「あ?」

 俺は矢筒から矢を抜いて、弓につがえた。

「望み通り、お前と戦ってやるよ」
「はっ! バカがよぉ。こっちは最初っからそのつもりだわ」

 豪気は嗜虐的な表情を浮かべ、舌舐めずりする。

「きゃは! なになに? 面白いことになってきたじゃん! 怒ったクソ雑魚ジョブの勘違い主人公くん(笑)が、勇者に一撃で葬り去られる展開ね!」
「ふん。さっさと終わらせてゴールするぞ。時間が惜しい」

 外野がなにやら言っているが、それも俺の耳には届かない。

「いくぜオラァアアアアアアアアアア!!」

 雄叫びを上げ、突撃してくる豪気。
 そんな彼に狙いを定め、俺は迷わず弓を引き絞った。
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