最弱ジョブ【弓使い】の俺、うっかり迷惑Sランクパーティーをボコしてしまう

果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!

文字の大きさ
60 / 136
第三章 《ハンティング祭》の騒乱編

第59話 恋バナ

《三人称視点》

「な、なにその「あー、やっぱりかぁ~」的な顔! 言っとくけど、違うからね! ほんっっっとうに、そんなんじゃないし!!」
「うん、わかってる」

 図星を突かれて(なお、本人は恋心を認めたくないらしいが)、あたふたする潮江かや。
 半べそかいて反論する彼女としては、面白くない。
 まるで、我が子の成長を見守る母親みたいな表情で、うんうん頷いている高嶺乃花に、いいように誘導されている気がしてならないのだ。

(何か、言い負かす手はないかな……!)

 別に高嶺乃花に恨みなどないが、まるでこちらがあのバカのことを、す、すす、好きなどと勘違いされたままなのが癪なのだ。
 ちょっと考えた潮江は、やがてあることに思い至る。

「そ、そういうあんたはどうなの?」
「私? 私は別に――」
のこと、好きなんでしょ?」
「……え」

 流れで誤魔化そうとした高嶺乃花は、しかし言葉に詰まる。
 それを好奇と、潮江かやが反撃に転じた。

「最近、ちょっと変だとは思ってた。高嶺の花が、女子みたいな男子と仲よさそうに話してたっていう噂も、飛び交ってたし。なんかさっき、翔のこと渾名で呼びかけたような気もするし」
「え、あ……う。そ、それは……」
「そもそも、英次と翔っていう男子2人に混じって、学校のアイドルがついて来てる時点で……そーゆー特別な関係だってのは確定じゃない?」
「~~~~っ」

 高嶺乃花は言い返そうとして何も言えないまま、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
 完全敗北である。
 実は、高嶺乃花。チョーゼツ陽キャギャルこと涼城真美に振り回されていることからなんとなくわかるように、恋愛についてはチョー奥手なのである。

 それこそ、テンパりまくっていた潮江かやよりも。

 学校のアイドルだし、中等部の頃からモテていた彼女。
 放課後体育館裏に~というシチュエーションを何度も経験しておきながら、なんでこんなに免疫が弱いかなど、言うまでもない。

 そもそも、彼女が自分を磨いて可愛くなろうと思ったきっかけは、なんだったか?
告白した誰かが、その0.2秒後には「ごめんなさい」とフラれている電光石火の早技。
今まで撃沈した男子は数知れず。
そのあまりのガードの堅さから、トップクラスの人気を誇りながら「夕焼けの体育館裏に君臨する女帝」とまで陰で唄われるようになったのはなぜか。

言わずもがな、“好きな人がいるから”である。
つまり、彼女は最初の最初から、「みんなのことは大好きだけど、恋愛的な意味で惚れ込んでいるのは最初からあの人だけよ」状態なのだ。
純粋そうな見た目と性格ながら、意外と愛が重い女の子なのであった。

「あの、その~……わかっちゃう?」

 人差し指の指先を付き合わせながら、高嶺乃花はおずおずと問いかける。

「……まあ。友達いなかったあたしが気付いたくらいだし。たぶんわかりやすいんじゃないかな?」
「うぅ」
「まあでも、それくらいアピールしてった方がいいんじゃない? アイツのことはよく知らんけど、相当なお人好しでしょ? そのくせハーレム主人公ばりに鈍感そうだから、アピール続けてった方がいいと思うよ。それに……正体ばれちゃったから、ライバル増えるかもだし」
「っっ!」

 サッと、乃花が青ざめた。
 そう。息吹翔の正体は、もうバレてしまっている。
 今をときめく有名人。幼馴染み属性で一歩リード、などと言っている暇はないのである。

 高嶺乃花は覚悟を決めたように、ガシッと潮江かやの両手を掴むと、勢いよく言った。

「お互い、頑張ろうね!」
「うぇ!? あ、あああ、あたしは別に、関係にゃいし? す、好きなようにやればいいんじゃない? あ、あたしは別に、巻き込まれる理由無いけど、ね?」

 ――そんな感じで、ちょっと元気になった潮江かやは、休憩を終えてホールに戻る。
 乃花は、そもそもお手洗いを借りに来たのでここで一旦お別れだ。

 ホールに戻った潮江を見て、店長は軽く手招きをする。

「かやっち~。復帰早々だけど、デザート七番テーブルに運んでくれない?」
「!」
「あ。諸事情でちょっと避けてるんだっけ。ごめんねぇ、無理そうなら他の子に――」
「いえ、行きます」
「……そう? 無理しちゃダメよぉ~」

 潮江かやは、コーヒーゼリーやSサイズのストロベリーパフェが乗ったトレイを持って、猫の尻尾を揺らしつつ七番テーブルへ向かう。
 ――なんで、ただ届けるだけなのにこんな心臓がバクバクしているのかわからない。なんなら、心が軽くなったはずの今の方が、さっきより緊張している。

「お、お待たせしました……にゃん」

 なぜだかわからないけど。本当になぜだがわからないけども、顔から火を噴き出しそうになりながら、頑張っていつも通りに振る舞う。

 席にいるのは、トイレに行った乃花を除いた2人。
 息吹翔と八代英次だ。

「デザートをお持ちしました、にゃん。ごゆっくりどうぞ……」
「おー、潮江じゃん。サンキューな」
「ありがとう」

 英次と翔は礼を言いつつ、3人分のデザートを受け取る。
 と、英次はなぜかまじまじと潮江を見て――

「う~ん、やっぱ、めっちゃ可愛いな」
「~~っ!!」

 潮江の心臓が跳ね上がる。
 それこそ借りてきた猫のように大人しくなって、顔から湯気を出していた。
 ――が、あくまで褒めた人間は英次である。
 「可愛い」と言う感想を言った気持ちには確かに裏表など存在しないが、それゆえに、欲望に正直なのだ。

 具体的には――

「今のクールビューティーにゃんこも捨てがたいが、最初に見せてきた萌えキャラだったら、その可愛い格好が更に映えると思うぞ!」
「……あ?」

 びきりと、潮江の額に青筋が立つ。
 そうとは気付かない英次は、デリカシーを母親の胎内に忘れてきたまま、発言を続行する。

「具体的にはそう! 尻尾を握ったら「にゃん☆ 尻尾を触るのはメッ、だにゃん」的な感じでちょっと恥じらい可愛い方向で――」
「フシャーッ!」
「うわっ! い、威嚇系にゃんこになった!? いや待てよ。お前の場合、そういうツンデレ系にゃんこが一番似合うんじゃね? その方が刺激が強くて俺的にはある意味ポイント高い……って、あのー? 潮江……さん? なんで無言のままテーブルにある唐辛子の小瓶をわしづかみにしていらっしゃる?」

 思わず敬語になってしまう英次の前で、ツンデレにゃんこ(ツン度100%)の潮江かやは、額に怒りマークを貼り付けたまま、

「刺激を求めていらっしゃるようなので、お客様のいちごパフェに唐辛子ぶっかけて、甘辛~く仕上げてあげますにゃん☆」
「やめてお願いおよしになって! 甘辛の定義それ絶対間違ってる!! ただのカプサイシンパフェになるからやめてぇええええええっ!!」

 ――と、そんなバカみたいなやり取りを。
 向かいに座る翔は苦笑いしながら眺めていて。

「はぁ~……あの2人、その気になれば付き合えそうなのに、お互いすれ違ったまま3年間を終えそう」

 トイレから戻ってきた乃花が、遠巻きに呆れつつ眺めて、そんな言葉を口にしたのだった。
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。