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第四章 大人気ダンチューバー、南あさり編
第76話 南あさりの参加が決まったワケ
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《三人称視点》
「全機撃墜! いぇ~い!」
魔杖を持ったまま、梅雨があさりの方へ駆けて行く。
「い、いえーい」
少し戸惑いつつ両手を挙げたあさりへ、梅雨はダイブするかのようにハイタッチをかました。
「熊猫さんも、いぇ~い!」
「いぇ~い」
少し緩慢な所作で両手を掲げた熊猫へ、梅雨は思い切り両手をたたき付ける。
ダンチューバーは、いろいろと活動することがある。
人気が低い新人だと、ダンジョン攻略で撮った映像を切り抜いて、ネットに流したりする程度だが。
ある程度人気になると、生配信を行うようになる。
あさり達のように、事務所に所属すると知名度や人気は一気に跳ね上がる感じだ。
基本的に、事務所に所属する者達は9割が、元々ダンジョン配信者としての人気が高く、事務所からのオファーを受けた者達となる。
事務所に所属すると、これまで個人で配信していた者達は、任意でスタッフやカメラマンを雇うことができ、攻略している様子を専属のカメラマンに撮って貰って、スタッフに編集・ダンチューブに投稿して貰う形となるのだ。
だから、事務所に所属しているダンチューバーの中には、顔出ししている者が圧倒的に多い。
更に言えば、人気ダンチューバー同士によるコラボ配信は高い人気を誇り、今、南あさりの個人チャンネルでの同接人数は、脅威の5万を超えていた。
《ナイス連携!》
《相変わらずレイピアの扱い上手いよな。剣道とかやってるんか》
《推しと推しと推しがコラボとか、明日は地軸が反転するな》
《我が生涯に一片の悔い無し》
《熊猫ちゃん、今日もなかなか際どい衣装を……ごちそうさまです》
《あんな修道女いたら、煩悩捨てきれんてw》
《梅雨さんの全力ハイタッチかわよ》
チャット欄ももの凄い速度で更新され、盛り上がっている。
――が、いつまでも配信しているわけにはいかない。
「今日は、ここまでっすかね~」
梅雨が、う~んと伸びをしながらそんな風に答える。
「そうですね~、もうそろそろ四時半になりますし。皆さんとは、お別れです」
十字架《ロザリオ》を手に握りつつ、聖女コスの熊猫はそんな風に呟く。
「そうだね。じゃあ、名残惜しいけど……みんな、ここまで。お疲れ様でした~」
あさりは、奥にいるカメラマンが持つカメラの方を向いて、手を振る。
《GG》
《お疲れ~》
《お疲れ様でした~》
《後で切り抜き見よ》
「……はい、OKです。お疲れ様でした」
カメラマンの声に、3人は一斉に方をなで下ろす。
なんだかんだ、撮影とは疲れるものなのだろう。
「うはぁ~終わったぁ! お疲れ様っした!」
「お疲れ様~」
「お、お疲れ様です」
三者三様に言葉を交わし、健闘(?)をたたえ合う。
ここで、いつもなら少し雑談をして解散になる流れだが――今日は少し違った。
「あの~あさりさん。今日、実は私と梅雨さんでプロ冒険者の方々と食事会をする予定がありまして……よかったら、一緒に参加しませんか?」
「え?」
熊猫の誘いに、一瞬逡巡する様子を見せるあさり。
しかし――
「ごめんなさい。魅力的なお話ですが、遠慮させていただきます」
あさりは、すぐに断った。
なんてことはない。彼女自身、昔食事会に参加したら相手の男子全員から連絡先とかいろいろ聞かれて困った経験を持つ。
正直、そういうのはもうウンザリなのだ。
「そうですか。残念ですねぇ、せっかく例の凄腕アーチャーさんが来るというのに」
「はい。申し訳……って、え?」
あさりは、ぴくりと眉を動かす。
「例のアーチャー? それって……もしかして、矢羽翔さんのことでは?」
「ええ、そうです。例の、可愛らしい殿方ですけれど」
ちなみに、熊猫がそう答えた通り、既に翔は「男子」として公式情報が出ている。
全ては、いろんな誤解を解くために。
翔本人は、「これでもう、女子と間違われたりしないぞ!」と一安心しているのだが……彼は知らない。情報が解禁された日、トイッターのトレンドに「男の娘《こ》」というワードが溢れかえったことを。
話が少々脱線してしまったが。
大事なことなので二回言おう。
彼女は、食事会に行ったら男子にプロポーズされまくって萎えちゃった感じの人である。
故に今回も、いくら相手が今をときめく有名人とはいえ――
「行きます」
――参加を即決した。
「「えっ!」」
てっきり、これでも靡かないと思っていた熊猫と梅雨は、互いに顔を見合わせて首を傾げる。
「本当に? 来てくださる、と?」
「はい! 翔さんが来るならば話は別です! たとえ地球が滅んでも会いに行きます!」
「え? あ、うん……そう、なんだ」
少し勢いに付いていけない梅雨が、曖昧に返事をし、
「なるほど。流行の転生? をしてでも、絶対に会いに行かれる覚悟なのですね? 美しい。実に美しい、愛と決意の形なんでしょう。主はきっと、あなたを矢羽さんと会わせてくださるはず……!」
感極まったように、わざとらしく聖女を演じる熊猫パンダ。
が、この残念聖女。キリスト教では、死んだら「最後の審判」を経て魂が天国へと誘われる。死んだらキリストの元へ行き安らかに過ごす、と信じられていることをご存知ないらしい。
まあ、要するに。ラノベによくある輪廻転生は行われないということなのだ。
それがわかっていない辺り、やはりちゃんと形だけのコスプレ聖女である。
「とにかく、あさりさんも参加してくれるってことっすね!」
「はい! ご迷惑でなければ、是非! あ、迷惑だったら、私だけ隣の席で食べてるんで、お構いなく!」
「そ、それは怖いから、やめて」
なぜか妙に食い気味のあさりに気圧され、若干脂汗を垂らしながら参加を了承する梅雨。
こんな感じで、半ば強引にあさりの参加が決まったのである。
「全機撃墜! いぇ~い!」
魔杖を持ったまま、梅雨があさりの方へ駆けて行く。
「い、いえーい」
少し戸惑いつつ両手を挙げたあさりへ、梅雨はダイブするかのようにハイタッチをかました。
「熊猫さんも、いぇ~い!」
「いぇ~い」
少し緩慢な所作で両手を掲げた熊猫へ、梅雨は思い切り両手をたたき付ける。
ダンチューバーは、いろいろと活動することがある。
人気が低い新人だと、ダンジョン攻略で撮った映像を切り抜いて、ネットに流したりする程度だが。
ある程度人気になると、生配信を行うようになる。
あさり達のように、事務所に所属すると知名度や人気は一気に跳ね上がる感じだ。
基本的に、事務所に所属する者達は9割が、元々ダンジョン配信者としての人気が高く、事務所からのオファーを受けた者達となる。
事務所に所属すると、これまで個人で配信していた者達は、任意でスタッフやカメラマンを雇うことができ、攻略している様子を専属のカメラマンに撮って貰って、スタッフに編集・ダンチューブに投稿して貰う形となるのだ。
だから、事務所に所属しているダンチューバーの中には、顔出ししている者が圧倒的に多い。
更に言えば、人気ダンチューバー同士によるコラボ配信は高い人気を誇り、今、南あさりの個人チャンネルでの同接人数は、脅威の5万を超えていた。
《ナイス連携!》
《相変わらずレイピアの扱い上手いよな。剣道とかやってるんか》
《推しと推しと推しがコラボとか、明日は地軸が反転するな》
《我が生涯に一片の悔い無し》
《熊猫ちゃん、今日もなかなか際どい衣装を……ごちそうさまです》
《あんな修道女いたら、煩悩捨てきれんてw》
《梅雨さんの全力ハイタッチかわよ》
チャット欄ももの凄い速度で更新され、盛り上がっている。
――が、いつまでも配信しているわけにはいかない。
「今日は、ここまでっすかね~」
梅雨が、う~んと伸びをしながらそんな風に答える。
「そうですね~、もうそろそろ四時半になりますし。皆さんとは、お別れです」
十字架《ロザリオ》を手に握りつつ、聖女コスの熊猫はそんな風に呟く。
「そうだね。じゃあ、名残惜しいけど……みんな、ここまで。お疲れ様でした~」
あさりは、奥にいるカメラマンが持つカメラの方を向いて、手を振る。
《GG》
《お疲れ~》
《お疲れ様でした~》
《後で切り抜き見よ》
「……はい、OKです。お疲れ様でした」
カメラマンの声に、3人は一斉に方をなで下ろす。
なんだかんだ、撮影とは疲れるものなのだろう。
「うはぁ~終わったぁ! お疲れ様っした!」
「お疲れ様~」
「お、お疲れ様です」
三者三様に言葉を交わし、健闘(?)をたたえ合う。
ここで、いつもなら少し雑談をして解散になる流れだが――今日は少し違った。
「あの~あさりさん。今日、実は私と梅雨さんでプロ冒険者の方々と食事会をする予定がありまして……よかったら、一緒に参加しませんか?」
「え?」
熊猫の誘いに、一瞬逡巡する様子を見せるあさり。
しかし――
「ごめんなさい。魅力的なお話ですが、遠慮させていただきます」
あさりは、すぐに断った。
なんてことはない。彼女自身、昔食事会に参加したら相手の男子全員から連絡先とかいろいろ聞かれて困った経験を持つ。
正直、そういうのはもうウンザリなのだ。
「そうですか。残念ですねぇ、せっかく例の凄腕アーチャーさんが来るというのに」
「はい。申し訳……って、え?」
あさりは、ぴくりと眉を動かす。
「例のアーチャー? それって……もしかして、矢羽翔さんのことでは?」
「ええ、そうです。例の、可愛らしい殿方ですけれど」
ちなみに、熊猫がそう答えた通り、既に翔は「男子」として公式情報が出ている。
全ては、いろんな誤解を解くために。
翔本人は、「これでもう、女子と間違われたりしないぞ!」と一安心しているのだが……彼は知らない。情報が解禁された日、トイッターのトレンドに「男の娘《こ》」というワードが溢れかえったことを。
話が少々脱線してしまったが。
大事なことなので二回言おう。
彼女は、食事会に行ったら男子にプロポーズされまくって萎えちゃった感じの人である。
故に今回も、いくら相手が今をときめく有名人とはいえ――
「行きます」
――参加を即決した。
「「えっ!」」
てっきり、これでも靡かないと思っていた熊猫と梅雨は、互いに顔を見合わせて首を傾げる。
「本当に? 来てくださる、と?」
「はい! 翔さんが来るならば話は別です! たとえ地球が滅んでも会いに行きます!」
「え? あ、うん……そう、なんだ」
少し勢いに付いていけない梅雨が、曖昧に返事をし、
「なるほど。流行の転生? をしてでも、絶対に会いに行かれる覚悟なのですね? 美しい。実に美しい、愛と決意の形なんでしょう。主はきっと、あなたを矢羽さんと会わせてくださるはず……!」
感極まったように、わざとらしく聖女を演じる熊猫パンダ。
が、この残念聖女。キリスト教では、死んだら「最後の審判」を経て魂が天国へと誘われる。死んだらキリストの元へ行き安らかに過ごす、と信じられていることをご存知ないらしい。
まあ、要するに。ラノベによくある輪廻転生は行われないということなのだ。
それがわかっていない辺り、やはりちゃんと形だけのコスプレ聖女である。
「とにかく、あさりさんも参加してくれるってことっすね!」
「はい! ご迷惑でなければ、是非! あ、迷惑だったら、私だけ隣の席で食べてるんで、お構いなく!」
「そ、それは怖いから、やめて」
なぜか妙に食い気味のあさりに気圧され、若干脂汗を垂らしながら参加を了承する梅雨。
こんな感じで、半ば強引にあさりの参加が決まったのである。
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