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第四章 大人気ダンチューバー、南あさり編
第93話 ドラゴン・キラー
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チャット欄が大盛り上がりなのは、当然知っているはずもなく。
俺とあさりさんは、目の前に陣取るドラゴンと対峙する。
――なんか、心無しが距離を置かれた気がする。
いや、あさりさんではなくドラゴンに。
解せぬ。
『ぐ、グゥアアアアアアアアアアアアァッ!』
ドラゴンは(なぜか少し怯えの混じった)威嚇の声を上げる。
それから、翼を大きくはためかせて、突風を飛ばしてきた。
狙う先は、あさりさん――ではなく俺。
基本的に、一対多数の戦闘では、まず潰しやすい人間から倒して、頭数を減らしていくのが定石のはず。
しかし、それをしなかったのはなぜだ。何か、定石通りに対処することを捨ててでも、早急に対処しなければいけない案件でもあるというのか?
「まあ、俺の方に攻撃してくれるなら好都合かな」
あさりさんに攻撃が向いても対処はするが、どうせなら真正面から俺を狙ってくれた方が当然対処もしやすい。
「“ウィンド・インパクト・アロー”」
こちらも風属性の魔法矢で対抗する。
逆巻く突風の壁が、迫り来る暴乱の嵐を受け止める。
突風と突風がぶつかり合い、余波が逃げ場を求めて荒れ狂う――ということはなく、ちゃんと計算通り互いに食われて消滅した。
『グゥァッ!?』
ドラゴンのくぐもった驚嘆の声が聞こえる。
大袈裟だな。単に風を受け止めると、あさりさんの方へ余波が行ってしまう可能性があるから、敵の風攻撃の回転速度にこちらの攻撃を合わせて、対消滅させただけの話だ。
「あさりさん、今のうちに!」
「は、はい! ……あ、あれ? 最初は私が囮のはずだったのに……あれれれ?」
小首を傾げながら、ドラゴンに距離を詰めるあさりさん。
そのまま一気に飛び上がり、腰に佩いたレイピアを抜いて一閃。
慌ててドラゴンが対処しようとするが、俺の方に気を取られすぎたのか、回避が間に合わずに羽の付け根を斬り飛ばされていた。
『グォオオッ!!』
飛ぶ力を失ったドラゴンは苦悶の声を上げ、地面へ落ちてくる。
これは――配信中ということもあるし、少しそれっぽく演技した方がいいだろうか?
「ははは! 驕ったな空の覇者よ! 無様に地面を這いずり回るだけの、飛べない竜など、土の竜と書いてただの土竜だ!」
「え? そのキャラなんですか? あと、土の竜ってそれただの土竜《もぐら》のことですけど」
俺のすぐ横に着地したあさりさんは、ジト目でツッコミを入れてくる。
――あーと、たぶん七禍のキャラがうつったっぽい?
「ま、まあとにかく! 畳みかけるよ!」
「……今、無理矢理話題を逸らしましたよね?」
あさりさんはそう言いつつも、再びレイピアを構え治す。
危険を察知したのだろう。
もぐらに降格したドラゴンさんは、再び攻撃態勢に移る。
足を踏ん張り、まるで砲台のような体制を取って、二本の禍々しい角の先を、俺達の方へ向けてくる。
角の先が青白く帯電し、雷撃を放とうとして――
「悪いけど、二発目を喰らうつもりはない」
俺は、“硬質化”のスキルを鏃に施し、後端には爆発のスキルを施した特殊な矢を二本、弓につがえてギリギリと弦を捻る。
「“ツイン・スパイラル・アロー”」
それは、毒の魔王の硬い核をぶち抜いたものと同じ。
ただし、今回は二発同時発射だ。
凄まじい回転力を加えられた鋼鉄より遙かに硬い矢が、爆発スキルの効果で凄まじい速度で飛んでいき――
バキィ! と、凄まじい音と共に、今まさに紫電を放とうとしていたドラゴンの角を根元から砕いた。
それを好機と、あさりさんは大きく一歩踏み込んで肉薄する。
手にしたレイピアを鋭く突き出す格好で迫るあさりさん。
迎え撃つべく、ドラゴンはばかりと口を開いて――
「それを待っていました!!」
そう叫ぶなり、あさりさんは一気に速度を増す。
前衛職である“剣士”が、特に重宝するスキル“加速”だ。
瞬間的に上がった速度に身を任せ、あさりさんの身体が一瞬でドラゴンの正面に迫る。
なるほど。
ドラゴンの体は鱗で覆われていて刃が通らない。
だから、あえて口を開けさせることを選んだわけか。どんなに外皮が硬くとも、口の中は無防備だから。
「たあっ!」
掛け声と共に、銀光が閃く。
レイピアはドラゴンの喉元を深く切り裂き、致命傷を負わせた。
光の粒子になって、ゆっくりと形が崩れていくドラゴン。
ここに、VSドラゴン戦は決着した。
俺とあさりさんは、目の前に陣取るドラゴンと対峙する。
――なんか、心無しが距離を置かれた気がする。
いや、あさりさんではなくドラゴンに。
解せぬ。
『ぐ、グゥアアアアアアアアアアアアァッ!』
ドラゴンは(なぜか少し怯えの混じった)威嚇の声を上げる。
それから、翼を大きくはためかせて、突風を飛ばしてきた。
狙う先は、あさりさん――ではなく俺。
基本的に、一対多数の戦闘では、まず潰しやすい人間から倒して、頭数を減らしていくのが定石のはず。
しかし、それをしなかったのはなぜだ。何か、定石通りに対処することを捨ててでも、早急に対処しなければいけない案件でもあるというのか?
「まあ、俺の方に攻撃してくれるなら好都合かな」
あさりさんに攻撃が向いても対処はするが、どうせなら真正面から俺を狙ってくれた方が当然対処もしやすい。
「“ウィンド・インパクト・アロー”」
こちらも風属性の魔法矢で対抗する。
逆巻く突風の壁が、迫り来る暴乱の嵐を受け止める。
突風と突風がぶつかり合い、余波が逃げ場を求めて荒れ狂う――ということはなく、ちゃんと計算通り互いに食われて消滅した。
『グゥァッ!?』
ドラゴンのくぐもった驚嘆の声が聞こえる。
大袈裟だな。単に風を受け止めると、あさりさんの方へ余波が行ってしまう可能性があるから、敵の風攻撃の回転速度にこちらの攻撃を合わせて、対消滅させただけの話だ。
「あさりさん、今のうちに!」
「は、はい! ……あ、あれ? 最初は私が囮のはずだったのに……あれれれ?」
小首を傾げながら、ドラゴンに距離を詰めるあさりさん。
そのまま一気に飛び上がり、腰に佩いたレイピアを抜いて一閃。
慌ててドラゴンが対処しようとするが、俺の方に気を取られすぎたのか、回避が間に合わずに羽の付け根を斬り飛ばされていた。
『グォオオッ!!』
飛ぶ力を失ったドラゴンは苦悶の声を上げ、地面へ落ちてくる。
これは――配信中ということもあるし、少しそれっぽく演技した方がいいだろうか?
「ははは! 驕ったな空の覇者よ! 無様に地面を這いずり回るだけの、飛べない竜など、土の竜と書いてただの土竜だ!」
「え? そのキャラなんですか? あと、土の竜ってそれただの土竜《もぐら》のことですけど」
俺のすぐ横に着地したあさりさんは、ジト目でツッコミを入れてくる。
――あーと、たぶん七禍のキャラがうつったっぽい?
「ま、まあとにかく! 畳みかけるよ!」
「……今、無理矢理話題を逸らしましたよね?」
あさりさんはそう言いつつも、再びレイピアを構え治す。
危険を察知したのだろう。
もぐらに降格したドラゴンさんは、再び攻撃態勢に移る。
足を踏ん張り、まるで砲台のような体制を取って、二本の禍々しい角の先を、俺達の方へ向けてくる。
角の先が青白く帯電し、雷撃を放とうとして――
「悪いけど、二発目を喰らうつもりはない」
俺は、“硬質化”のスキルを鏃に施し、後端には爆発のスキルを施した特殊な矢を二本、弓につがえてギリギリと弦を捻る。
「“ツイン・スパイラル・アロー”」
それは、毒の魔王の硬い核をぶち抜いたものと同じ。
ただし、今回は二発同時発射だ。
凄まじい回転力を加えられた鋼鉄より遙かに硬い矢が、爆発スキルの効果で凄まじい速度で飛んでいき――
バキィ! と、凄まじい音と共に、今まさに紫電を放とうとしていたドラゴンの角を根元から砕いた。
それを好機と、あさりさんは大きく一歩踏み込んで肉薄する。
手にしたレイピアを鋭く突き出す格好で迫るあさりさん。
迎え撃つべく、ドラゴンはばかりと口を開いて――
「それを待っていました!!」
そう叫ぶなり、あさりさんは一気に速度を増す。
前衛職である“剣士”が、特に重宝するスキル“加速”だ。
瞬間的に上がった速度に身を任せ、あさりさんの身体が一瞬でドラゴンの正面に迫る。
なるほど。
ドラゴンの体は鱗で覆われていて刃が通らない。
だから、あえて口を開けさせることを選んだわけか。どんなに外皮が硬くとも、口の中は無防備だから。
「たあっ!」
掛け声と共に、銀光が閃く。
レイピアはドラゴンの喉元を深く切り裂き、致命傷を負わせた。
光の粒子になって、ゆっくりと形が崩れていくドラゴン。
ここに、VSドラゴン戦は決着した。
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