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第五章 『ダンジョン・ウォーターパーク』の光と影編
第117話 同行の誘いⅡ
――その日の放課後。
俺は、学校帰りにとある喫茶店へと立ち寄っていた。
もちろん、一人で優雅にティータイム――というわけではない。窓際の席に座る俺の正面には、乃花と真美さんが座っていた。
「いきなり呼び出して申し訳ない」
開口一番、俺は2人に軽く頭を下げた。
昼休みに、2人のPINEへ今日の放課後話がしたいという旨を送っていたのだ。
「いいよ。それで、私らに話ってなに?」
オレンジジュースをストローで吸いつつ、真美さんが問いかけてくる。
あまり時間をとらせるわけにもいかないから、ここは手短にいこう。今日は真美さんの所属するサッカー部(所属はサッカー部だが、実際にはマネージャーをしている)が休みの日なので、こうして無理矢理予定を入れたのも少し憚られるのだ。
余談だが、俺と乃花は部活に入っていない。
部活動見学で弓道部に行ったあと、乃花と一悶着あってから顔を出しづらくなり、うやむやにしているうちに本登録期間まで過ぎてしまったのだ。
それでも、俺の方はたまに弓道部の顧問に、指導をお願いされたりして弓道場に足を運ぶこともあるのだが。
「今日呼び出したのは、ちょっとした遊びの誘いがあって」
「遊び?」
乃花がきょとんと小首を傾げる。
「うん。実は――」
俺は、英次にしたことと全く同じ説明を2人に聞かせた。
ちなみに、英次(と、たぶん潮江さんも)が来ることも伝えてある。
「――てわけで、よかったら2人も『ダンジョン・ウォーターパーク』に来ない?」
「う~ん……誘ってくれるのは嬉しいんだけど」
遠慮がちに頬を掻きながら、乃花が呟く。
「そこって、確か予約もなかなかとれないとかいう大人気レジャー施設だよね? そんな場所に、何もしてない私なんかがお呼ばれしてもいいのかな?」
「いや謙虚すぎるでしょ乃花!」
クワッと目を見開いて、真美さんが乃花を凝視した。
「で、でも真美ちゃん――」
「翔君、私と乃花、両名参加ということでどうかよろしくお願いします!」
「お、おう……」
気圧される俺をよそに、乃花が「ちょっと真美ちゃん、なに勝手に!」と抗議している。
が、真美さんは乃花の肩を掴み、ぐいっと引きよせると、何やら内緒話を始めた。
「(いい? よく聞いて乃花。これはチャンスよ!)」
「(ちゃ、チャンスってなんの?)」
「(バカ! そんなのこの朴念仁をオとすチャンスに決まっているでしょ!)」
真美さんが、鋭い目を俺に向けてくる。
それに会わせて乃花があたふたとした様子で、俺と真美さんを交互に見つめていた。
……一体、何を話してるんだ?
「(お、オとすって、そんなこと無理だよ)」
「(いーやイケる! いい乃花、よく考えて。『ダンジョン・ウォーターパーク』だよ! 水の都だよ! もはやベネツィアだよ!?)」
「(ごめんそれはちょっとよくわかんない、たぶんベネツィアとはいろいろ違うと思う)」
「(細かいことはいいの! 今重要なのは、水がある場所ってことだよ! つまり――水着で悩殺するのよ!)」
「うぇえッ!?」
乃花がいきなり飛び上がって素っ頓狂な叫び声を出した。
慌てて口を手で覆った乃花が、再び真美さんの耳元に口をよせる。
「(の、悩殺ってそんなハレンチな……)」
「(水着なんだからハレンチもクソもないでしょ! いい? あんたの乳の大きさと形は私が保証する! パルテノン神殿も裸足で逃げ出す黄金比! もはやSSランクの美乳だよ! あんたの乳より凄い乳があれば私の前にもってこいって感じ!)」
「(やめてやめて! ナチュラルにセクハラ発言しないでぇええええ!)」
……なんか乃花が恥ずかしがってる。
何を吹き込まれてんだ、一体。
コーヒーを飲みながら動向を見守る俺の前で、2人のやり取りは続く――
「(まあとにかく、あんたが水着姿になれば、普段と違うギャップに、あの朴念仁も動揺するはず。そこであんたが頑張るんだよ!)」
「(うぅ……でも)」
「(大丈夫だって、私がサポートするから。それに――あんた、このままでいいわけ?)」
ぴくりと、乃花の肩が跳ねた。
「(前聞いた話じゃ、翔君の義妹の大人気ダンチューバー、お兄ちゃんのこと溺愛してるんでしょ?)」
「そ、それは……まあ、きょうだ――」
「兄妹だしって言うのは理由にならないよ。だって、義兄妹でしょ? 周りの目とか良識は度外視すると、結婚できちゃうんだよ?」
「(~~っ!! ……ま、まずいね)」
「(うん、かなりマズいと思うよ)」
「(真美ちゃん、私……ちょっと身体張ってみる!)」
「(よしその息だ。流石は我が親友だね)」
俺の見ている前で、さっきまで真剣な面持ちだった真美さんが急に笑顔になり。
代わりに、乃花がいつになく真剣な表情で俺へ向き直った。
「かっくん。私も連れてって貰っていいですか?」
「ああ、もちろん大歓迎だ」
「ありがとう。そして、不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
そう言って、乃花は深々と頭を下げた。
――なんで敬語なんだ。
そして、なんで告白して付き合うときの常套句みたいなこと言ってるんだ。
疑問は尽きないが、ともかく。これで、2人の参加が決定した。
俺は、学校帰りにとある喫茶店へと立ち寄っていた。
もちろん、一人で優雅にティータイム――というわけではない。窓際の席に座る俺の正面には、乃花と真美さんが座っていた。
「いきなり呼び出して申し訳ない」
開口一番、俺は2人に軽く頭を下げた。
昼休みに、2人のPINEへ今日の放課後話がしたいという旨を送っていたのだ。
「いいよ。それで、私らに話ってなに?」
オレンジジュースをストローで吸いつつ、真美さんが問いかけてくる。
あまり時間をとらせるわけにもいかないから、ここは手短にいこう。今日は真美さんの所属するサッカー部(所属はサッカー部だが、実際にはマネージャーをしている)が休みの日なので、こうして無理矢理予定を入れたのも少し憚られるのだ。
余談だが、俺と乃花は部活に入っていない。
部活動見学で弓道部に行ったあと、乃花と一悶着あってから顔を出しづらくなり、うやむやにしているうちに本登録期間まで過ぎてしまったのだ。
それでも、俺の方はたまに弓道部の顧問に、指導をお願いされたりして弓道場に足を運ぶこともあるのだが。
「今日呼び出したのは、ちょっとした遊びの誘いがあって」
「遊び?」
乃花がきょとんと小首を傾げる。
「うん。実は――」
俺は、英次にしたことと全く同じ説明を2人に聞かせた。
ちなみに、英次(と、たぶん潮江さんも)が来ることも伝えてある。
「――てわけで、よかったら2人も『ダンジョン・ウォーターパーク』に来ない?」
「う~ん……誘ってくれるのは嬉しいんだけど」
遠慮がちに頬を掻きながら、乃花が呟く。
「そこって、確か予約もなかなかとれないとかいう大人気レジャー施設だよね? そんな場所に、何もしてない私なんかがお呼ばれしてもいいのかな?」
「いや謙虚すぎるでしょ乃花!」
クワッと目を見開いて、真美さんが乃花を凝視した。
「で、でも真美ちゃん――」
「翔君、私と乃花、両名参加ということでどうかよろしくお願いします!」
「お、おう……」
気圧される俺をよそに、乃花が「ちょっと真美ちゃん、なに勝手に!」と抗議している。
が、真美さんは乃花の肩を掴み、ぐいっと引きよせると、何やら内緒話を始めた。
「(いい? よく聞いて乃花。これはチャンスよ!)」
「(ちゃ、チャンスってなんの?)」
「(バカ! そんなのこの朴念仁をオとすチャンスに決まっているでしょ!)」
真美さんが、鋭い目を俺に向けてくる。
それに会わせて乃花があたふたとした様子で、俺と真美さんを交互に見つめていた。
……一体、何を話してるんだ?
「(お、オとすって、そんなこと無理だよ)」
「(いーやイケる! いい乃花、よく考えて。『ダンジョン・ウォーターパーク』だよ! 水の都だよ! もはやベネツィアだよ!?)」
「(ごめんそれはちょっとよくわかんない、たぶんベネツィアとはいろいろ違うと思う)」
「(細かいことはいいの! 今重要なのは、水がある場所ってことだよ! つまり――水着で悩殺するのよ!)」
「うぇえッ!?」
乃花がいきなり飛び上がって素っ頓狂な叫び声を出した。
慌てて口を手で覆った乃花が、再び真美さんの耳元に口をよせる。
「(の、悩殺ってそんなハレンチな……)」
「(水着なんだからハレンチもクソもないでしょ! いい? あんたの乳の大きさと形は私が保証する! パルテノン神殿も裸足で逃げ出す黄金比! もはやSSランクの美乳だよ! あんたの乳より凄い乳があれば私の前にもってこいって感じ!)」
「(やめてやめて! ナチュラルにセクハラ発言しないでぇええええ!)」
……なんか乃花が恥ずかしがってる。
何を吹き込まれてんだ、一体。
コーヒーを飲みながら動向を見守る俺の前で、2人のやり取りは続く――
「(まあとにかく、あんたが水着姿になれば、普段と違うギャップに、あの朴念仁も動揺するはず。そこであんたが頑張るんだよ!)」
「(うぅ……でも)」
「(大丈夫だって、私がサポートするから。それに――あんた、このままでいいわけ?)」
ぴくりと、乃花の肩が跳ねた。
「(前聞いた話じゃ、翔君の義妹の大人気ダンチューバー、お兄ちゃんのこと溺愛してるんでしょ?)」
「そ、それは……まあ、きょうだ――」
「兄妹だしって言うのは理由にならないよ。だって、義兄妹でしょ? 周りの目とか良識は度外視すると、結婚できちゃうんだよ?」
「(~~っ!! ……ま、まずいね)」
「(うん、かなりマズいと思うよ)」
「(真美ちゃん、私……ちょっと身体張ってみる!)」
「(よしその息だ。流石は我が親友だね)」
俺の見ている前で、さっきまで真剣な面持ちだった真美さんが急に笑顔になり。
代わりに、乃花がいつになく真剣な表情で俺へ向き直った。
「かっくん。私も連れてって貰っていいですか?」
「ああ、もちろん大歓迎だ」
「ありがとう。そして、不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
そう言って、乃花は深々と頭を下げた。
――なんで敬語なんだ。
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