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第五章 『ダンジョン・ウォーターパーク』の光と影編
第118話 同行の誘いⅢ
《三人称視点》
――また、その日の夜。
ここは、とある青年の私室だ。
壁際には本棚がずらりと並び、ミステリーを始め、ラブコメやライトノベル、果ては漫画など、乱読派を思わせる様々なジャンルの本で埋められている読書家の部屋と言った感じ。
そんな部屋の片隅。
風呂上がりで火照った顔を扇ぎつつ、1人の青年がベッドに座って本を読んで呼んでいた。
青年の名は、白爪直人。本名、白川直人。
現在Sランク冒険者で、プロの冒険者としても活動している青年である。
と、読書に耽っていた彼の傍らに置かれていたスマホが、不意に振動する。
本にしおりを挟んで視線をずらした直人の目に飛び込んできたのは、「矢羽翔」の文字。
最近、知り合いになったプロの冒険者だった。
「はい、もしもし」
『もしもし。夜分にごめんな』
電話にでた直人の耳に、申し訳なさそうにする翔の声が飛び込んでくる。
「構いませんよ。どうされました?」
『いや、実はさ。昨日寺島さんに呼び出されて――』
直人は、終始真剣に翔の話を聞いていた。
こういうとき、本を片手間に読まずにちゃんと対応をするのも、直人の誠実なところなのだが――本人にはあまり自覚がない。
「なるほど、僕達を誘ってくださるわけですね?」
『うん。君達には日頃お世話になってるし、是非とも誘いたいなって。それに、プロ冒険者である俺が誘われたのは、宣伝の目的だから。他にもプロ冒険者がいるのは、宣伝効果倍増になるのかなって思って……遊びの誘いなのに、利益の話をしてなんだか申し訳ないけど』
「構いませんよ。そもそもが、お仕事で誘いを受けたのでしょうし」
直人は屈託なく笑って応じる。
「でも、矢羽くんの前では、僕なんて霞んでしまうでしょうけども」
『そんな……謙遜しすぎだし、俺を買いかぶりすぎだって』
「いいえ、そんなことはありませんよ」
電話越しで見えるはずもないが、首を横に振って直人は否定する。
「正直、僕も浮かれていました。そこそこ強いつもりでいましたから。他の冒険者のピンチを救ったことも、何度かありましたし……でも、僕より年下で、しかも最弱ジョブと唄われる“弓使い”で、Sランクパーティーを壊滅させるような実力者がいると知って、本当に驚きました」
『ああ~……そういえば、そんなこともあったな』
電話越しに、翔の苦笑いを含んだ声色が聞こえる。
直人は自嘲気味に笑みを浮かべて、言葉を続けた。
「矢羽くんはご存じですか? 今、数ある役職《ジョブ》の比率が、どうなっているかを。今、“弓使いの人数が凄いことになってるんですよ」
『さあ……あんまり興味なくて、見てないから。一年前見たときは、確か不人気職の“弓使い”は、全体の0,03%くらいだったと思うけど』
「そうですね。一年前までは確かにそうでした。でも、今や“弓使い”の比率は全冒険者の31%。今までは、33%の“魔術師”がトップでしたが、27%まで低迷して、今や“弓使い”がトップの人気を誇ってるんです」
『……マジで?』
「マジです」
言いながら、直人は思う。
(この人、本当に自己評価が低いんですね……謙遜は美徳ですが、彼ほどの影響力なら、もう少し有頂天になってもいいものを)
しかし、同時にその飾らない感じが、直人には心地良かった。
それが、自分の実力を必要以上に誇示しないという点が、彼自身の気概とよく似ているからだということに、残念ながらこの自己評価低いマン二号は気付いていない。
『ま、まあとにかく……』
ごほんと咳払いをして、翔が強引に話を戻す。
『直人達にも、是非来て欲しいんだけど、大丈夫かな?』
「僕は大歓迎です。むしろ、誘ってくれて感謝しかないという感じですし」
『そっか。よかった。あともう一人の方は――』
「連絡がまだでしたら、僕の方から誘っておきますよ」
『そう? じゃあ、お願いしてもいいかな』
「はい。それでは、また。お休みなさい」
『お休み』
電話を切った直人は、今度はPINEの連絡先をスクロールしてとある人物の欄をタップする。
それから、すぐに受話器型のマークを押して、電話をかけた。
――また、その日の夜。
ここは、とある青年の私室だ。
壁際には本棚がずらりと並び、ミステリーを始め、ラブコメやライトノベル、果ては漫画など、乱読派を思わせる様々なジャンルの本で埋められている読書家の部屋と言った感じ。
そんな部屋の片隅。
風呂上がりで火照った顔を扇ぎつつ、1人の青年がベッドに座って本を読んで呼んでいた。
青年の名は、白爪直人。本名、白川直人。
現在Sランク冒険者で、プロの冒険者としても活動している青年である。
と、読書に耽っていた彼の傍らに置かれていたスマホが、不意に振動する。
本にしおりを挟んで視線をずらした直人の目に飛び込んできたのは、「矢羽翔」の文字。
最近、知り合いになったプロの冒険者だった。
「はい、もしもし」
『もしもし。夜分にごめんな』
電話にでた直人の耳に、申し訳なさそうにする翔の声が飛び込んでくる。
「構いませんよ。どうされました?」
『いや、実はさ。昨日寺島さんに呼び出されて――』
直人は、終始真剣に翔の話を聞いていた。
こういうとき、本を片手間に読まずにちゃんと対応をするのも、直人の誠実なところなのだが――本人にはあまり自覚がない。
「なるほど、僕達を誘ってくださるわけですね?」
『うん。君達には日頃お世話になってるし、是非とも誘いたいなって。それに、プロ冒険者である俺が誘われたのは、宣伝の目的だから。他にもプロ冒険者がいるのは、宣伝効果倍増になるのかなって思って……遊びの誘いなのに、利益の話をしてなんだか申し訳ないけど』
「構いませんよ。そもそもが、お仕事で誘いを受けたのでしょうし」
直人は屈託なく笑って応じる。
「でも、矢羽くんの前では、僕なんて霞んでしまうでしょうけども」
『そんな……謙遜しすぎだし、俺を買いかぶりすぎだって』
「いいえ、そんなことはありませんよ」
電話越しで見えるはずもないが、首を横に振って直人は否定する。
「正直、僕も浮かれていました。そこそこ強いつもりでいましたから。他の冒険者のピンチを救ったことも、何度かありましたし……でも、僕より年下で、しかも最弱ジョブと唄われる“弓使い”で、Sランクパーティーを壊滅させるような実力者がいると知って、本当に驚きました」
『ああ~……そういえば、そんなこともあったな』
電話越しに、翔の苦笑いを含んだ声色が聞こえる。
直人は自嘲気味に笑みを浮かべて、言葉を続けた。
「矢羽くんはご存じですか? 今、数ある役職《ジョブ》の比率が、どうなっているかを。今、“弓使いの人数が凄いことになってるんですよ」
『さあ……あんまり興味なくて、見てないから。一年前見たときは、確か不人気職の“弓使い”は、全体の0,03%くらいだったと思うけど』
「そうですね。一年前までは確かにそうでした。でも、今や“弓使い”の比率は全冒険者の31%。今までは、33%の“魔術師”がトップでしたが、27%まで低迷して、今や“弓使い”がトップの人気を誇ってるんです」
『……マジで?』
「マジです」
言いながら、直人は思う。
(この人、本当に自己評価が低いんですね……謙遜は美徳ですが、彼ほどの影響力なら、もう少し有頂天になってもいいものを)
しかし、同時にその飾らない感じが、直人には心地良かった。
それが、自分の実力を必要以上に誇示しないという点が、彼自身の気概とよく似ているからだということに、残念ながらこの自己評価低いマン二号は気付いていない。
『ま、まあとにかく……』
ごほんと咳払いをして、翔が強引に話を戻す。
『直人達にも、是非来て欲しいんだけど、大丈夫かな?』
「僕は大歓迎です。むしろ、誘ってくれて感謝しかないという感じですし」
『そっか。よかった。あともう一人の方は――』
「連絡がまだでしたら、僕の方から誘っておきますよ」
『そう? じゃあ、お願いしてもいいかな』
「はい。それでは、また。お休みなさい」
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それから、すぐに受話器型のマークを押して、電話をかけた。
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