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第2章 人魚姫の涙、因縁の対峙
第17話 衝撃の真相
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龍の翼をはためかせ、思いっきり水を掻いて上昇する。
水の中で魅了の歌が聞こえないからか、それとも何か別の要因があるのかわからないが、さっきよりも身体が動く。
――いけぇえええええええ!
僕は、力の限り水を押して水面へ向かって加速し――弾丸のように空へ向かって飛び出した。
射線上には、人魚と縄のような形状になった水で手足を縛られたシャルの姿があった。
「そんなっ!? 私の魅了を解いた――!?」
信じられないものを見たかのように、人魚の目が見開かれる。
そのせいで、行動が遅れた。
僕を迎撃するのが、ほんのワンテンポ遅れる。
「ぁあああああああああああああっ!」
勢いのままに、僕は人魚の身体へ思いっきり体当たりをぶつけた。
「――っぐ!」
初めてのクリーンヒット。
人魚の身体がぐらりと傾ぎ、同時にシャルを縛り付けていた水の縄が揺らいで、独りでに解ける。
「シャル!」
「だ、旦那様!」
僕はシャルの身体を空中で横抱きに抱えると、そのまま水面に浮いている橋の残骸の上に着地した。
足場としては不安定だけど、戦えないこともない――か? いや、やはり厳しい。
横抱きに抱えたシャルは、意識こそはっきりしているものの、まだ《|蠱惑之美声ローレライ》とやらのダメージが抜けきっていないらしく、戦闘は困難と思われた。
かくいう僕も、身体はなんとか動く者の、まだ倦怠感は残っているし、何より万全な状態ですら相手に圧倒されたのだ。
今のはたまたま不意打ちが功を奏しただけ。次は――ない。
「やられたわ。まさか、《蠱惑之美声ローレライ》が効かないなんて。まさか、状態異常を無効化するレアアイテムでも持っているのかしら?」
先程の体当たりのダメージからか、どこかフラフラとしながら水の上をゆっくりと渡ってくる人魚は、忌々しそうに呟く。
「……いえ。さっきは、まともに喰らって抵抗すらできずに水に沈んでいった。ちゃんと効果は通っているはず。だとすれば――」
人魚は、俺の顔を凝視する。
少し怒っているような、拗ねているような――そんな表情。
え? 僕なんかした? あ……しましたね、体当たり。
ところが、彼女が怒っているのは少し違う方向だったらしい。
「人魚の固有スキル《|蠱惑之美声ローレライ》は、決まれば100%相手を行動不能にする最強の状態異常だけど……状態異常無効化や軽減のアイテムの所持以外で突破することもある。ただ、条件がとんでもなくシビア」
そこまで言って、人魚は僕の腕の中にいるシャルをちらりと見た。
「人魚の蠱惑的な美声よりも魅力を感じる存在があった場合、《|蠱惑之美声ローレライ》の効きが薄くなる。……ほんと、妬けちゃうわね。私よりも、そんなちんちくりんな小娘の方がいいだなんて」
「なっ! そうなのかの、ご主人様!」
なぜかシャルが目をキラキラさせて、首の後ろに手を回してくる。
えー。そう言われてみれば、シャルのことを考えていたら、身体が動くようになったような気もするけど……恥ずかしいから言うのやめておこう。
あーもう。シャルも頭を擦りつけてくるな。角が痛い。
「よくもまあ、私の前でイチャイチャできるわね? 貴方たちは逃がさないわよ」
「――っ!」
ぞくりと、背筋を怖気が駆け上る。
逃げられない。そう直感で悟る。
一体どうすればいいんだ?
僕の額を、汗の珠が一筋通った――その直後、
人魚は、何か聞き捨てならないことを言った。
「いつもいつも、私の娘を勝手に外に連れ出して! 今日はただじゃおかないわよ!!」
……ん?
水の中で魅了の歌が聞こえないからか、それとも何か別の要因があるのかわからないが、さっきよりも身体が動く。
――いけぇえええええええ!
僕は、力の限り水を押して水面へ向かって加速し――弾丸のように空へ向かって飛び出した。
射線上には、人魚と縄のような形状になった水で手足を縛られたシャルの姿があった。
「そんなっ!? 私の魅了を解いた――!?」
信じられないものを見たかのように、人魚の目が見開かれる。
そのせいで、行動が遅れた。
僕を迎撃するのが、ほんのワンテンポ遅れる。
「ぁあああああああああああああっ!」
勢いのままに、僕は人魚の身体へ思いっきり体当たりをぶつけた。
「――っぐ!」
初めてのクリーンヒット。
人魚の身体がぐらりと傾ぎ、同時にシャルを縛り付けていた水の縄が揺らいで、独りでに解ける。
「シャル!」
「だ、旦那様!」
僕はシャルの身体を空中で横抱きに抱えると、そのまま水面に浮いている橋の残骸の上に着地した。
足場としては不安定だけど、戦えないこともない――か? いや、やはり厳しい。
横抱きに抱えたシャルは、意識こそはっきりしているものの、まだ《|蠱惑之美声ローレライ》とやらのダメージが抜けきっていないらしく、戦闘は困難と思われた。
かくいう僕も、身体はなんとか動く者の、まだ倦怠感は残っているし、何より万全な状態ですら相手に圧倒されたのだ。
今のはたまたま不意打ちが功を奏しただけ。次は――ない。
「やられたわ。まさか、《蠱惑之美声ローレライ》が効かないなんて。まさか、状態異常を無効化するレアアイテムでも持っているのかしら?」
先程の体当たりのダメージからか、どこかフラフラとしながら水の上をゆっくりと渡ってくる人魚は、忌々しそうに呟く。
「……いえ。さっきは、まともに喰らって抵抗すらできずに水に沈んでいった。ちゃんと効果は通っているはず。だとすれば――」
人魚は、俺の顔を凝視する。
少し怒っているような、拗ねているような――そんな表情。
え? 僕なんかした? あ……しましたね、体当たり。
ところが、彼女が怒っているのは少し違う方向だったらしい。
「人魚の固有スキル《|蠱惑之美声ローレライ》は、決まれば100%相手を行動不能にする最強の状態異常だけど……状態異常無効化や軽減のアイテムの所持以外で突破することもある。ただ、条件がとんでもなくシビア」
そこまで言って、人魚は僕の腕の中にいるシャルをちらりと見た。
「人魚の蠱惑的な美声よりも魅力を感じる存在があった場合、《|蠱惑之美声ローレライ》の効きが薄くなる。……ほんと、妬けちゃうわね。私よりも、そんなちんちくりんな小娘の方がいいだなんて」
「なっ! そうなのかの、ご主人様!」
なぜかシャルが目をキラキラさせて、首の後ろに手を回してくる。
えー。そう言われてみれば、シャルのことを考えていたら、身体が動くようになったような気もするけど……恥ずかしいから言うのやめておこう。
あーもう。シャルも頭を擦りつけてくるな。角が痛い。
「よくもまあ、私の前でイチャイチャできるわね? 貴方たちは逃がさないわよ」
「――っ!」
ぞくりと、背筋を怖気が駆け上る。
逃げられない。そう直感で悟る。
一体どうすればいいんだ?
僕の額を、汗の珠が一筋通った――その直後、
人魚は、何か聞き捨てならないことを言った。
「いつもいつも、私の娘を勝手に外に連れ出して! 今日はただじゃおかないわよ!!」
……ん?
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