愛する彼女と別れて2分が経った

風@

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君と付き合って2分が経った

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 君と付き合って2分が経った。帰り際に告白したもんだから、夜の寒空を1人歩いたが、画面の向こうにいる君に思いを馳せていてから、寂しくなんてなかった。

 君と付き合って10分が経った。今は電車に乗っている。クリスマスという日に君に告白して、それが成功するなんて夢にも思ってなかった。電車に揺られてたせいか、心も落ち着かない様子で揺れていた。

 君と付き合って1時間が経った。家に着いてまずやったのは、夢かどうかの確認だ。寒さで鈍った痛覚でもはっきり痛みがわかるように頬をつねった。少し涙が出たが、どうやら現実らしい。僕は君と付き合っているらしい。

 君と付き合って1日が経った。昨日の今日だがまたデートをした。だけど昨日の僕たちと今日の僕らはまるで違う。初めて誰かと繋いだ手は冬を忘れるくらい温かかった。でもその温かさは冬だからこそ味わえたものだ。君と結ばれたこの季節が、永遠に続けば良いと思った。

 君と付き合って3ヶ月が経った。水族館の帰り、誰も居ないことを確認して、街灯の下でキスをした。

 君と付き合って半年が経った。最初の頃のような激烈な愛は溶けてしまったが、ある意味では安定感のある恋が実っていた。

 君と付き合って1年が経った。君と初めて夜を明かした。あの時ほど君を愛した時間はない。僕の思いは強くなるばっかだ。

 君と付き合って1年と3ヶ月が経った。君の様子の変化に僕は気がついていた。どこか遠くを見ているような、別の何かに思いを馳せているような気がした。疑ってばかりだから、自分の思いすら真実かどうかわからなくなってしまった。

 君と付き合って1年半が経った。僕らはもう惰性で関係を続けていた。僕は一絞りの勇気を出せなかったし、君も君で曖昧な距離感を保っていた。もう時間の問題かなと思っていた。

 君と付き合って2年が経った。君の浮気の決定的な証拠を得てしまった。それを見て見ぬふりをするのは、流石にできなかった。でも既に僕らの愛は萎んでいた。粗熱が取れるのを待つコンロの上の鍋だった。僕らはあっさり別れた。僕たちはそれぞれ別の方角へ歩き始めた。

 愛する彼女と別れて1分が経った。冷めていた愛なのに視界が滲む理由はわからないけど、溢れ出る涙を掬い上げるように拭いた。
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