異世界転移ノ魔術師々

両翼視前

文字の大きさ
10 / 20
第二襲 災炎嵐龍編

永炎焔翔鳳 ――エターナル・フェニックス――

しおりを挟む
 キリエの目の前で【永炎焔翔鳳エターナル・フェニックス】が発動される。

 今の私ならどう押し返せる……?

 フェニックスのような形をした当たったら消えないだろう炎を目の当たりにして、精神を統一するために目を閉じた――。


 現実世界の思い出が甦る――こんな私でもおばあちゃんが誕生日ケーキを買ってくれた。

 本当のママ、パパには祝って貰えなかった悲しい思い出。それでも、おばあちゃんがケーキを買ってきてくれて必死に祝ってくれた。

 おばあちゃんと一緒にロウソクの火をありったけの息で消そうとした。でも、なかなか消えずに二人で困っていた。

 窓からやさしい風が流れ込む――全てのロウソクを消していってしまった。

 当時の私だったら悲しかったけど、今、思えば友達かぜが消してくれたんだと思う。

 そんな消えない癒えない嫌な思い出――死んで忘れたくないっ!


 ――私は¨眼¨を開けた。

「これでおしまいね――楽しかったわ!」
 仮面の女は笑い続ける。

 旋風刃せんぷうじんを相手に突き刺すような構えを取る。

「魔術発動ッ! 【旋風せんぷうまい】ッ!」

 刀の刃を風に溶けるように自然に溶かすと、周囲に8本の風の刃が展開される。

まわれッ! かぜやいばッ!」
 風の刃が紅く燃え盛る消えない炎を消し飛ばそうと廻り始めた。


 ――ぶつかり合う風の刃とエターナル・フェニックス。


 圧倒的な魔力量に押されていた。風が熱を纏い、返せなかった炎が大きな火の粉となり横切った。

 身体の頭から足先まで熱い。気を許せば、炎に焼き殺されてしまう。

 でも、まだ力を出せる。

 ――――出せるはず!

「もっと舞えッ! 【旋風の舞】ッ!」

 残り僅かな魔力を解放しようと声が枯れるくらいに叫んだ。

 叫べば枯れそうな魔力もまだ振り絞れると信じて、まだまだキリエは出し切れる!
 あの仮面の女なんかに絶対に負けない!
 負けたくないっ!

 ――8本の風の刃が64本に。
 ――64の風の刃が4096本に。

 徐々に細かく2乗になるように分裂していく。

 ――気づかない内に16777216枚まで風の刃は分裂した。

 見えない風の刃がキリエを轟轟と燃え続ける炎から守ろうと廻転かいてんする。

「吹き飛ばせッ……! キリエの魔力ッ……!」

 目から、口から、あらゆるところから血が出始めていた。今までにないくらいに魔力を使いすぎてる自覚はある。
 声でも出さなければ痛みも我慢出来ないし、魔力も使い切れない。

 全身のありとあらゆる魔力が刃のない刀に集まり、廻り続ける風の刃に流れていく。

 それでも――ここで死んだら村の仲間たちに申し訳ない気持ちでいっぱいになるから。

 それに――また会って関わってみたい仲間たちがこんなキリエにも出来たから)

「だから……」

「――――ッ!」
 仮面の女の顔が歪んだ気がする。まさか押し返されるだろうとは思わないだろう。
 そのまさかをこれから――やってやる。

「だから……! 死ぬわけにいかないんだァァァアアアア!」

 キリエの心からの叫びに、細い腕から流れ続ける魔力に応じるように風の刃が強くなる――強固に、吹き飛ばそうと廻転力が上がり続ける。



 ――消えない炎を纏ったフェニックスは風の刃に切り刻まれ、熱風の竜巻となって押し返した。


 直撃――仮面の女は何食わぬ顔だが立っている側の壁が吹き飛ばされるように崩壊していく。

「はぁ……、はぁ……」
 全力を出し尽くしたキリエに魔力も、立つ気力も残っていなかった。

 竜巻が吹きやむとその場で崩れるキリエ――全身がきしむように痛く、呼吸するだけで苦しい。
 体温はさっきと変わらずに熱いままだから余計に。

 魔力の維持が出来なくなったため旋風刃は刀の刃が戻ると消滅してしまった。

「これで――傷つけたつもり? 私――炎なら効かないのよ」
 仮面の女は何食わぬ顔で立っていた。

「でも……、風なら受けるはず……!」
「――えっ……?」
 仮面の女の肌に亀裂が入る。初めてこの女に入れた切り傷だ。

「コイツ――殺してやる!」
 怒り狂いながら2刀を持ち直してこちらに向かってくる――ようやく艶やかな笑顔を引きはがすことができた。

 ふと、上から窓ガラスが割れる音がする。

「かっこつけて現れるから……」

 ようやく来てくれたかと安心する――虹色に光る綺麗な髪の自称“幼女”のヴェールが脚を痛そうに隣に立っていた。

「キリエン、待たせた!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜

来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。 自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。 「お前は俺の番だ」 番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。 一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。 執着と守護。すれ違いと絆。 ――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。 甘さ控えめ、でも確かに溺愛。 異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

処理中です...