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ウェポンチューン
しおりを挟む「へへへ、良いねェ
久々に見たぜ?…あんな表情を出来る奴…」
イシカワは工房内でそう呟きながら目の前のテーブルの上へ置かれたロングソードを見つめる
「弄ってやるかァ…俺の今までの経験を全てつぎ込んで
最高の一振りに仕上げてやる…」
とは言ったものの
イシカワは同時にそれをすぐにはできない、と言うこともわかっていた
(アイツが鉄の声を聞けるようになったのはまだ昨日今日の話だからな…
こりゃチューニングにも段階を踏んだ方が良さそうだ…)
そこでイシカワが選んだのは段階を踏んでステップを進める毎に少しずつ過激に弄っていこうと言うものだ
(今回は…まだ焼き直しと研ぎ直しの殆どリフレッシュメニューだな
でも余分な部分は削ぎ落としてダイエットと元の切れ味より上がる副産物付きだ)
今回はまだ頃合いでは無いため
考えているのは焼き直しと研ぎ直し、つまりは剣の鍛え直しである
「んじゃ…始めるか」
ロングソードのグリップを外して剣芯の確認をする
「ん、多小の錆はついてるものの
腐ってるわけじゃねェ…」
呟きながら、イシカワは脳内で完成までの工程を描きながら
作業を開始した
◆
「アンドリュー!お前のお客サンが来てるぞ」
翌朝、宿屋で自身の借りてる部屋に同じく別部屋を借りてる冒険者友達からそう言われた
「ん…?お客サン?」
「イシカワってオッサンなんだけど」
「マジで!?」
寝起きだった為、多少不機嫌そうに友人を半目開きの寝ぼけた目で軽く睨んだものの
その友人から客は自身の武器を預けてる相手だと知らされると飛び起きて着替え始める
「んで?あのオッサンはなんなのヨ?」
「あ?ああ、俺の武器預けてるトコ」
友人の疑問に答えるそう答えたアンドリューは
軽く着てる服のシワを伸ばしながらそういった
「預けてるって…ウェポンチューンとか言うのだろ?
ずいぶんと胡散臭いオッサンだったし、本当に信用できるのか?」
「大丈夫だヨ
多分、今の俺からしたら鍛冶師の中で一番信用できる人だからサ」
少し心配と言いたげな友人にアンドリューはその言葉だけ残して下へ降りていった
「___おう、来たか」
宿の1階へ降りると、階段付近の通路で待っていたイシカワに声を掛けられた
「随分と早かったですね、もう少し掛かるもんだと思ったのですが…」
「ま、一気にトビキリなモンに仕上げても扱いきれねェと思ってナ
様子見として一通りのリフレッシュメニューとダイエットさせといた
詳しく振り分けるならステージ1ってトコロか」
預けてまだ一日しか経っていない物の、その仕事の早さと訳をアンドリューに説明しながら
イシカワは持ってきていたロングソードをアンドリューに渡した
「これで様子を見てみろ
そうだな…、三日でいい
三日この状態で使って俺のところに持って来な」
「アタリを確認するって訳ですか?」
アンドリューの質問に対し、イシカワは肯定の意を持って首を縦に振った
「あぁ、アタリ次第で今後の仕様を変えていこうと思ってる」
「わかりました…ではまた」
「あぁ、またナ」
アタリ次第で仕様を変える
つまりこのまま現状維持もあり得るし、とんでもなくステップアップするかも知れない
だがイシカワとアンドリューの二人にはこのままで終わらないだろうと言う確信あった
そしてそんな確信があったからこそ
答えを早く出すべくアンドリューは話をそこそこにイシカワと別れを切り出す
当のイシカワも、その意図に気づいていた。
◆
「んで、もう返ってきたんだな」
部屋に戻ってすぐ、ロングソードを抱えたアンドリューに友人はそう話しかけた
「やっぱ騙されたんじゃねぇの?」
「…いや、これ見てもそんなこと言えるか?」
冗談混じりにからかう友人に
アンドリューは静かにロングソードを鞘から抜き出した。
「ッ!?これは…!」
そのロングソードの剣身を見た友人は思わず押し黙る
不純物の一切を取り払ったロングソードはまるで鏡の如く辺りの風景を反射し
若干丸みを帯びていた刃先は針の先程に鋭く
ダイエットと言う名の通り芯の厚みが数㎜であるが薄くなっていた。
「イシカワさん曰くこれでステージ1
つまりチューンの入り口だ
…これで入り口なんだぜ…?」
アンドリューは震える声と体を抑えながらそう呟く
だが抑えきれないのかその表情は歓喜に満ちていた
「震えるよ、僅か一日で仕上げてきたのもそうだけど
リフレッシュとダイエットでこれだもんナ」
そしてロングソードに太陽の光を当て、色んな角度から眺めているアンドリューに友人も口を開く
「それじゃ…早速言ってみるかヨ?
クエストに…」
◆
____近くの森_____
木々の葉が日射しを遮り薄暗い森の中にアンドリューとその友人二名の姿があった。
そしてそれに対峙してるのは
「オークか…強すぎず弱すぎず
仕上がりを確認するには持ってこいか…?」
三体のオーク、通常種が立ちはだかっていた
オークは二足歩行の豚人間でその平均体長は約2m程。
170後半程度のアンドリューとその友人には意外と大きく移るのだが、中堅に位置する彼らには苦なく倒せる魔物だ
「それじゃ、確かめさせて貰おうか!」
「アンドリュー…一撃目頼むぞ!」
ロングソードを握り直し軽く笑みを浮かべるアンドリューに友人はそう言って指示を出す
そしてその指示を聞いたアンドリューは「わかった」といわんばかりに首を縦に大きく振ってオークに飛びかかる
「セィッ!!」
「ブギィッ!?」
飛びかかり一気に肉薄したアンドリューは三体の内一番右端の個体にすれ違い様に今までようにロングソードを振るった。
_____ズッ
「!?」
振るったロングソードは軽く抵抗を感じさせずオークの腹を切り裂いた。
(凄い…まだ一発目の仕上がりなのに…
まるで手の内に入り込んで馴染むようなこの感覚……)
アンドリューの口元が弥が上にもつり上がってしまう
「いける…これなら命を預けて振るって行けるッ!!」
剣のグリップを握り締め、アンドリューは他の個体へ立ち向かうべく振り返る
先程の一撃で一体は絶命していた。
残りは二体で友人と交戦中。
「しゃァッ!」
二体の内こちらに背を向けて戦ってる個体のオークにアンドリューは飛びかかり
うなじへ一閃を浴びせる
___ガッ_____
「ッ!…ここまでか」
若干引っ掛かったがそのままオークの首を撥ね飛ばすことができた。
とはいえ、アンドリューの直感が今の段階ではオーク級の首を跳ねるのは剣を痛めてしまうと告げていた
基本、生き物の骨で一番固いところは首の部分であり
今までの剣なら跳ねるどころか逆に刃が歪んでしまっていただろう
(前よりグッと良くなってるけど
無茶はしちゃいけないな…)
剣に付着したオークの血を振り払いながら鞘に納め
アンドリューが友人側へと振り返る頃にはオークの討伐は終わりを告げていた。
◆
「けっこう良い感じなんじゃないのか?」
オーク討伐終了後、様子見も済み討伐証明部位を切り取ってからの帰りの中
友人はアンドリューへ向かって言った
「あぁ、良い感じだな
思った動きが出来るんだ…
少し耐久性が追い付いてないけど」
「それを含めてこれから煮詰めてくんだろ?
ならノビシロもあるわけだ?」
「まぁナ」
軽く会話を交え、お互いに笑い合う
長く付き合いのある二人は相応に仲が良かった
「んで?今の段階で結局いくら使ったんだ?」
「…それが取られてないんだよな」
「は?」
一発目から相当な完成度を見せたイシカワチューンのロングソード
だが価格を聞いた友人はアンドリューから返ってきた言葉に固まってしまった。
「え?取られてないって…タダ?」
「そう、タダ
なんかイシカワさんが【お前の気持ちに俺の技術すべてを注ぎ込む、だからこのまま選択の意味を履き違えずに振るい続けてくれ
そうすりゃ金なんて要らねぇヨ】って」
アンドリューの話すイシカワの言葉に黙ったままの友人は首を横に軽く振って
気まずそうに口を開いた
「大丈夫か…?ソレ?
スッゲェ怪しいゾ…危なくね?」
「ねー(笑)ひょっとしたらスゲェ危ねェかも…
…でも俺は信じるヨ
会って直ぐだけどサ…イシカワさんって一人のチューナーをナ…」
心底心配だと言いたげな友人に
軽く笑いながら、それでもアンドリューは大丈夫だと言った。
◆◇◆◇
▪️鉄のロングソード(チューンナップステージ1)
内容
・焼き直しリフレッシュ化
・刃先鏡面加工
・剣芯肉抜き(数㎜)
◆◇◆◇
_____________________◆
あとがき
どうも皆さんお久しぶりです。
拝啓の方が行き詰まりまくり、こちらの更新も遅れに遅れて約2か月ぶりの投稿になります。
さっさと拝啓書けよと言う声が刺さりそうですが、詰まってるものはどうしても書けないのでもう少々お待ちください。
今現在2000文字位まではできてるのでもうちょっとで投稿出来そうなので!
ではあまり長くなるといけないのでこの辺で失礼…
_____________________◆
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