蒼の騎士

四月 深欲

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出立

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ヨミと戦場で会い同居する約束をしてからはや2日。
自分と彼女は今列車に揺られている。

「車内サービスです」

誰かがドア越しに話しかけてくる。

「どうぞ」

自分は座ったまま手を目一杯伸ばし、スライド式の無骨な扉を開ける。

「すみませんわざわざ」

と、一礼。

「いえいえ」

扉を開けるといかにもウェイターといった格好のいい赤い服を着た20代くらいの青年がお菓子等が乗ったテーブルカートを止めて立っていた。

「何にいたします?」

と青年は言う。
それを聞いた俺は横で分厚い本を読んでいるヨミに聞く。

「ヨミは何がいい?」

「アップルティーとチョコレート、あとチップスがいい」

ヨミは本から目を離さず即答。

「承知致しました。旦那様は何がよろしいでしょうか?」

しばしテーブルカートに乗った物を見つめて考える。
ガムやキャンディーなど色々あり、全部美味しそうだ。

「じゃあ、そのマドレーヌとダックワーズとダージリンティーで」

「承知致しました」

青年は大きなポットに入った熱湯を別の小さいティーポットに注ぐ。
2つ用意されたティーポットに熱湯を注いだ後、アップルティーとダージリンの葉の入った缶を開けそれぞれ別のティーポットに入れる。
角砂糖の入ったビンを取り出し2つのティーポットと2つのカップと2人分のお菓子の乗った四角いトレイの上に置く。

「お済みの場合はコールしていただけますと回収に参りますので」

「ありがとうございます」

青年は、お菓子とティーの乗ったトレイを置いた後、大きなポットを元の位置に戻しゆっくりと後ろにさがる。

「引き続き旅をお楽しみください、では失礼いたしました」

静かに扉を閉めて消えた青年に一瞬だけ「お代は?」と言おうとしてしまい苦笑いする。
この列車は軍の物なのだから俺は払わなくていいのだったな、たしか。

トレイに乗った自分のダージリンティーを手元に置き、ヨミのお菓子の袋を開けてやる。

そういえば。

「それにしても俺達は何故戦場を抜け出せたんだ?」

ふと疑問に思った事を口に出す。

「あの戦場は私達が殺した化物で最後だったの、後は死鳥の処理だけだから私達抜きでも対処出来る」

間を開けて出た答えに、そうかとうなずき、追加の疑問を口に出す。

「じゃあこのV.I.P.待遇は何だ?」

「私達が偉いから」

そうだったか?
と思い自分の立場を思い出す。

「私達国家の主戦力だからかなり偉い、知らなかったの?」

へー

「いや、興味なかったから全然」

頭をポリポリ掻きながら言う俺にたいし彼女は「あり得ない」と言うかのような顔をしたあと。

「じゃあ授与式の時どうしたの?」

「禍津級と戦ってた」

俺の答えにヨミは頭を抱える。

「あー、仕方ない」

1年前、市街地に突如出現した禍津級。
俺を含めた10人の対禍津級特例討伐部隊が市街地に着いた時には住民の半数余りを食い荒らし、自らの糧としていた。
2日に渡る殺し合いの末、市民の犠牲は出たが何とか討伐出来たのだ。
が、結局完全に消滅させる事は出来ずに封印する事しか出来なかった。

「それで勲章は?」

「後で受け取った」

「だから授与式に出席してなくても勲章だけはあったわけだ」

ヨミはアップルティーを片手にまた本を読み始めた。

「それで・・・」

「失礼します!」

ヨミが何かを言おうとした時、誰かが大きな音を立てて扉を叩く。

「どうぞ」

「あと、1時間程て目的地に到着致します。では後ほど」

「わかりました」

あと1時間か。
1日前の夕方に戦場にを離れ、搬送機で軍の管理する駅まで。
今日の朝方から、半日程列車に揺られていた。
今の時間は、と首にかけた懐中時計を見る。

18時丁度。

重い首を鳴らし、まだ口を付けていないお菓子を食べるのだった。



それから1時間後、列車は速度を落とし始める。

「もう着くぞ」

俺は立ち上がり、前の席に置いてあった荷物と武器を取りながら言う。

「いこうヨミ」

「うん」
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