16 / 29
第16話 王子様とデート
しおりを挟む部屋に帰って、天蓋のついたベッドに横になった。ゴロゴロしても落ちないしフカフカだ。
このベッドいいなあ。
さっきのことについて考える。
王妃さまは、前のご主人が好きだけれど、今の旦那様のことも好きなのかな?
きっと、そうなのだろう。
時間を積み重ねた大人の恋愛は難しい。
すると、またドアがノックされる。
「はーい!」
ドアを開けると、中年の男性がいた。
なんだか、この後の展開が想像つく。
正直なことをいうと、今すぐこの扉を閉めたい……。
男性は名乗る。
「夜分にすまんね。わたしの名は、ハルベルト・フォン・ラインライトという」
ほら。やっぱり。
絶対に王様だ。
会食の前に全員と会っちゃったよ。
……わたし、このまま帰っていいですか?
男性は、足から頭の先まで、品定めをするようにわたしを見る。
「なるほど。セドルのやつ面食いだな。どうりで、お見合いを拒むわけだ。ところで、お願いがあるのだが……」
なんだか、さっきも聞いた気がするよ。
この会話。
部屋から追い出したいけれど。
相手は王様だ。やっぱり、まずいよね?
お部屋に招き入れると良くなさそうなので、申し訳ないけれど、その場でお話を聞くことにした。
すると、王様はトーンを落として話し出した。
「実は、わが妃のマリアーヌが、大切なものを失くして困っているようなのだ……」
ほらきた。
わたしは即答する。
「それ、解決しました。さっき、マリアーヌ様と見つけましたよ」
すると、王様は少し驚いた顔をした。
「そうか、さすがだな。では、もう一つお願いが……」
ロクなことではないと思うが、無碍にもできない。
「なんですか?」
「私は、子供が息子しかいないから、娘に憧れててな。お義父さんと呼んではくれぬか?」
予想どおりロクなことじゃない……。
相手は王様だ。仕方ない。
がんばれ! わたし。
「おとうさま……」
王様はたいそう嬉しそうにしている。
「じゃあ、次は、パパと呼んではくれぬか……」
キリがない。
わたしは、「無理でーす!!」というと、扉を閉めた。
セドルさんのご両親は気取った感じがない。きっと、だからセドルさんもあんな感じなんだろうなぁ。
次の日になって、朝食を終えてお腹が落ち着いた頃、セドルさんが迎えにきた。
「さぁ、予定のデートのトレーニングに行きましょう」
いまさら、トレーニングなんていらない気はするけれど、約束だもんね。
セドルさんについて市街地に向かう。
まず、商店街にいって、色々みてまわった。わたしが気になるものがあると、すぐにセドルさんは買おうとしてしまう。制止するのが大変だ。
セドルさんは、後ろ歩きをしがら話しかけてくる。
「そんなに遠慮しなくていいんだよ? じゃあ、せめてこれくらいは受け取ってよ」
あ、これは、わたしがさっき手に取っていた葉っぱデザインの指輪だ。
もう買っちゃったみたいだし、受けとらないと失礼だよね。わたしは手を伸ばして受け取る。
さっそくつけてみる。
やっぱり可愛い。
……嬉しいかも。
「ありがとうございます」
すると、セドルさんはおもむろに同じものをもう一つ出し、自分の指にはめた。
え。
これって、ペアリングなのかな。
耳がカーッと熱くなってるのが自分でも分かる。
わたしがモジモジしていると、手を取って引っ張られた。ふわっとわたしの身体は持ち上がる。
凝り固まりかけた気持ちが少しだけ身軽になるようだった。
そして、また並んで歩き出す。
川縁でランチをする。
セドルさんは、シートを敷くと、2人分のお弁当を広げた。
お弁当箱を開けると、お肉を焼いたような芳ばしい匂いがした。お弁当はどこまでも普通で、いかにも手作りといった感じがする。美味しそう。
これは、マリアーヌさんが作ってくれたらしい。さっそくお願いを聞いてくれたようで良かった。
マリアーヌさんはケリーさんと各地を旅したことがあるから、料理をする機会も多かったのだろう。
玉子焼きを食べてみる。
うん。美味しい。
気持ちがホカホカになるお母さんの味だ。
セドルさんはどうかな……?
よかった。美味しそうにバクバク食べている。
喜んでくれているみたいだ。
マリアーヌさんは実のお母さんじゃないから、本当は複雑な部分もあるかも知れない。
けれど、やはりセドルさんの気持ちは大きい。
わたしはきっとそうじゃないから、そういうのカッコいいと思う。
そのあとは、川で水面に足をつけて並んで座った。足をブラブラして、水面にパシャパシャと波を立てる。
セドルさんはこちらを見た。
「今日は付き合ってくれてありがとう。楽しかったよ。明日は、気楽にな。うちの両親はあんな感じだし」
わたしは、なんとなくセドルさんの顔が見れなかった。
「わたしも楽しかったです」
わたしは、友達とおしゃべりしながら歩いたことなんてほとんどない。相手が男の子ならなおさらだ。
ほんと、楽しかったな。
すると、セドルさんは両手で私の肩を掴んだ。
セドルさんの力で、わたしの両肩はすくむように持ち上がる。
セドルさんは、正面からわたしの目を見つめる。
どうしてだろう。
自然にわたしの目は閉じた。
すると。
少しの間をおいて。
チュッ。
おでこにキスをされた。
わたしはびっくりして額を押さえた。
すると、セドルさんは口を綻ばせる。
「それはトレーニング修了の証。びっくりした?」
すごくびっくりした。
頬が熱くなりすぎて、すこしクラクラする。
セドルさんは畳み掛けてくる。
「あ、少しは期待した? なら、本当に口にしようか?」
「しなくていいですよーだ!」
頬がプーッてなっているのが自分でも分かる。
わたしは、立ち上がるとスタスタと歩き出した。
すると、セドルさんが追いかけてくる。
「まってよー」
どうせ帰る方向は同じなのだ。
待ってなんてあげない!!
歩きながら考えてしまう。
あの時、口にキスをされていたら、わたしは拒んだのかな。
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!
黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ、平凡な人生を終えたはずのサラリーマン、ユウキ。彼が次に目覚めたのは、剣と魔法の異世界だった。
「あれ?なんか身体が軽いな」
その程度の認識で放った小石が岩を砕き、ただのジャンプが木々を越える。本人は自分の異常さに全く気づかないまま、ゴブリンを避けようとして一撃でなぎ倒し、怪我人を見つけて「血、止まらないかな」と願えば傷が癒える。
これは、自分の持つ規格外の力に一切気づかない男が、善意と天然で周囲の度肝を抜き、勘違いされながら意図せず英雄へと成り上がっていく、無自覚無双ファンタジー!
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる